悪夢のシナリオ
みなさんこんにちは。

私は今でも覚えています・・・

15年前、為替レートが1ドル=80円を切ったときのことを。

当時私はある電機メーカーで、マーケティングの仕事を
していたのですが、毎日のように過去最高値を更新する円相場に、
いいようのない不安を覚えたものでした・・・この為替レートで、
本当にこの会社はやってゆけるのかと。

当時日本の電機メーカーは、全盛時に比べ勢いに
陰りがみえてきたものの、まだ国際競争力は十分でした。

ビデオやオーディオ、テレビゲームなどの規格作成にも自信満々で、
これからも自分たちの会社が創るものが世界標準になると、
信じて疑いませんでした。

今をときめく韓国メーカーも、当時の私たちに比べると
幕下力士程度、中国のメーカーに至ってはコンペティターとして
意識したことすらありませんでした。

それでも当時、急速に進行する円高にいいようのない不安を
感じたものでした。


これに対し、いまの円高はどうでしょうか。


当時と比べ、我が国の製造業の競争力は明らかに衰え、
いまでは韓国メーカーは、私たちが仰ぎ見る存在になって
しまいました。

あの中国メーカーですら、いまや立派なコンペティター、
世界的にみれば徐々に我が国メーカーと、競合する商品が
増えてきています。

製造業個々の、圧倒的な競争力を背景にした円高が1995年当時
だとすれば、いま進行しつつある円高の原動力は一体なに
なのでしょうか。

1995年当時と違い、現在の円高を正当化する経済上の理由は見つけづらく、
つまるところその理由は、『政治要因』に尽きると言い切ってよいのでは
ないでしょうか。

米国はここ5年で輸出を倍増するという国家戦略を立て、
中国は大々的な為替介入を続けながら、したたかに自国の製造業を育成し、
欧州はギリシャ不安を幸いに輸出競争力を高め、

このように各国とも自国の産業を育成するため、国家間の駆け引き
を続けるなか、我が日本だけはなぜその場に参加しようとも
せず、傍観を続けるのでしょうか。

果たして彼らは自国の産業育成に興味を持っているのでしょうか・・

この点ひとつとっても、我が国の政治システムや政治を司る
人材そのものに著しい欠陥があるとしか思えず、そのことを
考えますと何だか気が重くなってしまいます。

私は既に製造業の現場の人間ではありませんが、
いま第一線に立って頑張っている人たちの不安は、15年前の
経験者としてよくわかります。

産業の発展なくして一国の発展はありえず、
彼らの不安は、政策の支援によって取り除く必要があるはずです。

いずれ市場が政治に代わって、暴力的な勢いで『それ』を
行ってしまう・・・そんな悪夢のシナリオを迎えないためにも。




では、今回はこのへんで。

(2010年8月17日)




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