銀の売り場を探す
みなさんこんにちは。

本日銀のスポット価格は1オンス=30ドルを超えました・・
これは実に30年ぶりのことです。

今回は銀の市場で何が起きているのか、
これからの銀の相場はどう動くのか、
このようなことについて少し考えてみようと思います。

「銀の価格が上がるのは、銀の需給バランスが
崩れているからではないか」

多くの方はこのようにお考えだと思いますが、
実はこの考えは間違っています。

まず2000年以降の銀の需給をみてみましょう。

需要をみますと、2000年の892(百万オンス)をピークに徐々に減少し、
2008年には831(百万オンス)となっています(注)。

注)GFMS社World Silver Survey2009 より、2009年データは
  現在集計中。

これに対し鉱山からの採掘量をみますと、2000年の591(百万オンス)
を起点に徐々に増加し、2008年は681(百万オンス)に達しています。

つまり簡単に申し上げますと、『鉱山からの採掘は順調に増加する
一方で、需要は減り続けた』ということです。

2009年及び2010年のデータはまだ集計中ですが、これが2000年以降
現在に至るまでの、大雑把な銀の需給推移といってよいでしょう。

一方でこの間、銀の相場はどのように動いたでしょうか。

以下サイトをご覧頂いてお解りのように、銀価格はこの10年で
およそ6倍にも上昇しています。


(以下 Kitcoサイト銀相場チャート)

http://www.kitco.com/charts/techcharts_silver.html


需要が減り、なおかつ供給が増えるなか、
どうして銀の価格はこのように上昇しているのでしょうか。

理由は二つあるといってよいでしょう。

一つ目は政府が保有する銀の売却量が減少しているからです。

各国の政府は過去、金同様に銀も購入してきました、
過去において購入し続けてきた銀を、彼らが市場で売却し、
それが銀相場の下押し要因として働き続けてきたわけですが、
ここ数年は政府による銀の売却量が減少し、そのことが銀の
相場の上昇要因になっているといえるでしょう。

二つ目は銀への投機(あるいは投資)の活発化で、
こちらはさらに顕著です。

なかでも最大の銀の購入者はETFで、2009年時点の銀ETFの
残高は既に350(百万オンス)に達しており、これは同年単年の
鉱山採掘量の50%を越えております。

銀ETFは現物の裏付けを伴いますので、これは単にマネーの
世界の出来ごとではなく、銀の現物の需給に影響を与えている
わけですね。

以上のことを総合いたしますと、現在の銀価格の上昇は
『需給のみからみれば銀は売られる方向だが、銀ETFによる
膨大な需要によって銀価格は上昇し続けている状態』、
このように申し上げてよいのではないでしょうか。

さてこの銀相場・・これからもしばらく続くのでしょうか、
あるいは近い将来のどこかで変調をきたすのでしょうか。

もちろん十年あるいは二十年といった長期のスパンでみますと、
新興国経済の成長や、鉱山からの採掘の限界が近づいてくる
ことが予想されますので、やがて需給はタイト化に向かうと
考えておくべきでしょう、がそれはあくまで長期のお話しです。

これに対し例えば来年、さ来年といった短期でみますと
どうでしょうか。

おそらく需給の実態そのものは、ここ数年でさほど
大きな変化はみせないのではないでしょうか、即ち需要の
微減傾向と供給の増加傾向の継続です。

仮にこのような考えに立つなら、実体的側面での銀価格は
常に下げ圧力にさらされ続けると考えておくべきだと思いますが、
私は銀の相場に関して、このような実体的側面はさほど重要だと
考えておりません。

むしろ重要なのはETF経由のマネーの動きではないでしょうか。

仮に先週のこのメルマガでお話ししたように「新興国経済の
高成長と先進国の低成長」というデカップリング状態が
続くとすれば、ETFマネーは今後も順調に銀へ流れ込んでくる
のではないでしょうか。

また仮に米国はじめ先進国経済がいよいよ離陸し「先進国と
新興国のカップリング」が起きても、ETFマネーの流れに変化
はないでしょう、いやむしろリスク許容度が高まりますので、
マネー流入の勢いは強くなる可能性すらあります。

このように考えますと、来年の銀相場は上昇を続ける可能性が
高いと思われますが、一方で2つほど急落のシナリオも想定
しておいたほうがよいでしょう、

一つは先進国経済が離陸せず、逆に新興国経済が失速する
かたちでカップリング状態に戻る可能性です。

先週申し上げたように、私はこの可能性は極めて低いと
思いますが、一応こころの片隅に留め置いてくださいね、
なにしろ銀の市場は小さく、一旦マネーが流出し始めますと
相場に与える影響は甚大です。

もう一つのリスクは当局の規制によって「マネーの蛇口」が
締められる可能性です。

2008年の夏、小麦を始め穀物価格が急騰した際、米国の
CFTC(注)はファンドに対し、穀物への投資制限を設け、
これを受け穀物相場が一時急落したことがありました。

注)CFTC:米国の商品先物取引委員会、商品市場の監視当局

現在の相場(1オンス=30ドル)で、即CFTCが持ち高制限を
導入する可能性は極めて低いとは思いますが、この調子で
相場が継続的に上昇するようなことがあれば、持ち高制限の
導入を視野に入れて動いた方がよいのではないでしょうか。



銀は市場が小さく、上昇期の波にのれば大きなリターンを
得ることができます、一方で後手を踏んだり、波に乗り損ね
ますと大きな損害を受けることにもなります。


私自身は、いまの時点で銀への新規投資を行うべきではないと
思いますし、お手持ちの銀に関しては深追いせず、そろそろ
売り場を探す時期にきているのではないかと思っています。



なにごともほどほどに・・・



では、今回はこのへんで。

(2010年12月7日)





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