■現物不動産と国債
みなさんこんにちは。
仮に私が築10年のワンルーム・マンションを、1500万円で
取得したとしましょうか。
一般にマンションの稼働年数は60年程度と言われていますが、
ここではやや厳しく50年とみておきましょう。
上記物件は築10年ですので、今後40年程度は家賃収入を
稼いでくれるはずです。なお私は向こう40年間にわたり、
手取りベースで毎年75万円の家賃収入(従って物件の取得価格
に対する利回りは5%)を得ることができると仮定します。
一年間で75万円の家賃収入が今後40年続くとしますと、
私が受け取る収入のトータルは3000万円(注1)となりますが、
一方で物件そのものの価値は、この間徐々に減価しますので、
その分は差し引いて勘定しなくてはなりません。
注1)75万円×40年=3000万円
ここで仮に上記物件の土地持ち分を400万円程度と考えた場合、
最終的にこの物件の価値は400万円程度になるはずです。
従って上記1500万円で購入した物件は、この40年の間に
1100万円ほど価値が減少することになります。
仮に賃貸料収入から3000万円を得ることができても、
出口まで含めた実質的な取り分は1900万円程度(注2)に減る
ことになるわけですね。
注2)税金は考慮せず
このように減価償却を考慮して計算しますと、この間の年間収益は
単利ベースで約3.2%(注3)まで下がることになるわけです。
注3) (1900万円÷40年)÷1500万円≒3.2%
さてこの3.2%・・・
みなさんはどのようにお考えになりますか。
私はこの3.2%について考える場合、材料としていくつかの
切り口があるように思います。
まず稼働期間が40年にもおよぶ資産に、そもそも出口を想定
する必要があるのかという点です。
上記3.2%は、物件そのものが年々償却してゆき、
いずれ(建物は)無価値になり、土地部分のみ売却する
ことを想定して計算しています。
一方でやや乱暴ではありますが、仮に私の命が物件より早く尽きた場合、
そもそも出口など必要ないという考えもあってよいのでは
ないでしょうか。
そして出口など想定する必要が無いなら、私は私の物件の
減価を考慮に入れる必要などなく、上記物件の収益率は3.2%
ではなく、減価以前の5%とする考え方もあるわけです。
もう一つの切り口は、仮に3.2%の収益率として想定した場合でも、
他に「円建てミドルリスクの資産」で、3%以上の長期的リターンを
期待できる金融商品はあるのかという点です。
3年から5年程度の中期でしたら、国内でも低格付けの社債のように、
まれに3%以上のリターンを期待できる銘柄もなくはありません、
が数十年にわたり、長期で3%のリターンを期待することは構造上
まず無理でしょう。
従って超長期で安定的なリターンを得るという点において、
現実的には不動産の対抗馬は、日本の長期国債に絞られると
いってよいのではないでしょうか。
では仮に現在の10年債利回り、即ち年利1.1%程度で、上記1500万円
を40年運用した場合の総収入はいくらになるのでしょうか。
1500万円×1.1%(注4)×40年=660万円
注4)税金は考慮せず
上記のように40年間の手取り収入は660万円となり、
上記不動産投資(1900万円)と、ずいぶん大きな開きが出ることに
なります。
毎年の収入を比べてみても
・国債保有の場合
1500万円×1.1%=16.5万円
・不動産保有の場合
1500万円×5%=75万円
とかなりの開きがあります。
この場合仮に私が毎年の収入以外に、75万円の生活費が必要だった
とすればどうでしょうか。
国債保有の場合、毎年(75万円−16.5万円=58.5万円)ずつ
保有する国債を売り続けなくてはなりません、その結果
私が保有する国債は徐々に減ってゆき、当然のことながら
得られる利息もまた徐々に減ってゆくことになります。
受け取り利息が減るから、国債の売却額は増え、その結果
また受け取り利息は減ってゆく・・・こうして加速度的に
保有する国債の残高は減少し続けることになるわけです。
私はこのような現象を「元本の加速度減少効果」と
呼んでいますが、これは実際の運用の場面で実によく
目にする現象です。
もちろんミドルリスクの不動産と、ノーリスク(日本が破綻しない
限り)の日本国債を横並びで比較するのは間違っているでしょう、
不動産には空室のリスクや地震、火災など独特なリスクも
ありますし、また国債と違って部分的に売却換金して生活費の
足しにするということもできません。つまり不動産を購入する際には、
長期に及ぶお金の出入りを、あらかじめ予想するという面倒な
作業が求められるわけです。
従ってもし皆さんが年利1.1%のリターンで問題なく生活できるなら、
なにも好んでこのようなリスクをとる必要はありません。
逆に申し上げればそれ以上のリターンが必要な方にとって、
国内の現物不動産は有効だと私は考えています。
では、今回はこのへんで。
(2010年12月14日)
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