■プラチナと中国人
みなさんこんにちは。
もともと私はプラチナという金属があまり好きでは
ありません。
もちろんこれは好みのうえでの好き嫌いの問題ではなく、
投資対象としての”好き嫌い”のお話しです。
私はプラチナのことを”偏りの金属”と呼んできましたが、
これは私がプラチナを好まない理由でもあります。
プラチナの偏りとは、採掘場所と用途の偏りのことで、
これがプラチナ価格を予想しづらいものにしてきたといえるでしょう。
まず採掘場所をみてみましょう、プラチナは全採掘量の80%近くを
南アフリカに一国に依存しています。
南アフリカは電力供給が安定せず、それによってプラチナの
産出量は大きくブレる傾向にあり、このことは市場の小さな
プラチナ相場の大きな変動要因であり続けてきました。
次に需要面での偏りをみますと、需要の5割近くを自動車の
触媒用途が占めています。
従って今後ガソリン車から電気自動車への移行が起きれば、
逆にプラチナにとって致命的なマイナス要因となるわけです。
ただしガソリン車から電気自動車への移行期に登場した
ハイブリッド車に関しては、一台あたりのプラチナの使用量は
ガソリン車とほぼ同等だそうで、ここしばらくハイブリッド車の
時代が続くなら、プラチナへの影響は先延ばしされるかも
しれません。
いずれにせよ、このようにプラチナは二つの意味で偏った金属なのですが、
最近の動きをみますと、少なくとも需要の点において、
この偏りはいくぶん緩和されつつあるといえそうです。
ここで少しデータをみておきましょう。
以下は2008年と2009年のプラチナ用途比較です。
□2008年
・自動車触媒 48.3%
・その他産業用途 23.8%
・宝飾用途 21.9%
・投資 6.0%
□2009年(注)
・自動車触媒 40.5%
・その他産業用途 19.5%
・宝飾用途 35.2%
・投資 4.8%
(GFMSによるPlatinum & Palladium Survey 2010より)
注)2010年の統計はまだ集計中ですので、これが最新データ
ということになります
上記をご覧頂のように、自動車の触媒用途が
リーマン・ショックの影響で急減する一方、宝飾用途が
急増しています。
これは2009年にプラチナ価格の急落をみて、宝飾用途が
拡大したからでしょう。ちなみに2009年初頭にプラチナ価格は、
1オンス=900ドル台前半まで下落しました。
さらにこの宝飾用途の地域別をみますと、興味深い現象を
みることができます。
以下は2009年のプラチナ宝飾用途のみのデータで、( )内左側
数字は2009年の消費量、右側数字は対前年比です。
・中国(157万オンス/+73%)
・北米&欧州(39万オンス/-13%)
・日本(27万オンス/+9%)
・全世界(226万オンス/+38%)
目立つのは中国の宝飾需要の急拡大ですね、2009年の消費量は
前年比で+73%と急速に増加、中国だけで世界のプラチナ・ジュエリー
の何と7割以上を消費したことになります。
さらにこの157万オンスという数字は、同年の全世界の
自動車触媒に使用されたプラチナの総量(約260万オンス)の
6割に相当し、これもまた驚くべき数字といってよいでしょう。
”偏りの金属”の需要側に、従来の『自動車触媒』に加え、新たに
『中国人の宝飾』という二人目の巨人が登場したわけですね、
このことは今後のプラチナ相場をさらに読みにくく
しているともいえるでしょう。
ただし例えば2011年という短期でみるなら、
いくつかの予想が許されてよいのではないでしょうか。
まず自動車の生産台数が、堅調な米国経済や新興国経済にささえられ、
ことしは順調に増加するであろうという予測です。
ガソリン車はいずれ電気自動車に駆逐される運命かも
しれません、が少なくとも今年いっぱいは実需への悪影響は
無視してよいでしょう。
これに対し、もう一人の巨人、即ち『中国人の宝飾』は
どうでしょうか。上記のように2009年は急拡大しましたが、
これはリーマン・ショック後の安値をめがけた逆張りで、
確かにある意味出来過ぎだったといえるでしょう。
それでもここ一年のプラチナ価格は(他の貴金属の比べ)
安定しておりますので、すでにこの逆張りは終了していると
考えてよさそうです。今後はプラチナ好きな中国の経済成長
により、彼らによる息の長いジュエリー需要を期待してよい
のではないでしょうか。
このように考えますと、少なくとも向こう一年に関していえば、
この”偏りの金属”の二大偏り要因は、いずれも相場に対して
プラスに働くと考えておいてよいのではないかと思います。
以上の観点で私は今年のプラチナを強気でみて
おります。
ただ金(Gold)のあのなんとも言えない美しさに比べ、
プラチナは見劣りがし、投資以外の点で私は
この金属をあまり好きにはなれませんが・・・
では、今回はこのへんで。
(2011年1月18日)
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