■私が先進国の国債を買わないわけ
みなさんこんにちは。
私は基本的には米国債や欧州国債など、
先進国の債券を組み入れることは致しません。
理由はいくつかあります。
まずはリスクとリターンのバランスです。
例えば米国債を米国在住者が購入する場合、
為替の変動リスクを考慮する必要はありませんので、
仮に3%なかばのリターンでも、ミドルリスク・ミドルリターンの
金融商品として十分に意味はあるでしょう。
ところが私たち日本人が米国債を購入する場合は
どうでしょうか・・・
米国債が本来持っている価格変動リスクを建物の一階部分
に例えれば、その建物の二階部分には、為替の変動リスクが
乗かっているわけです。
そしてその二階部分のリスクは、むしろ一階部分の債券がもっている
リスクより数倍変動が激しく、建物としていわば頭でっかち
のいびつな構造になっているともいえるわけです。
価格変動しにくく手堅いと思って買った米国債ファンド
や米国債ETFが、円ベースで異様な値下がりをみせる、
このような経験をされた方も多いと思いますが、これは上記のような
理由からです。
つまり『円建てでみるとリスクを正当化できるリターンを
得られない点』これが私が外債を使わない理由の一つです。
少なくとも米国債で3%なかば、ドイツ国債で3%強という
現在の金利水準では、私はどうしても買う気になりません。
二つ目は現在先進国でとられている金融政策に対し、もう少し
見極めが必要ではないかという点です。
ご承知のように現在は先進諸国で金融緩和策が採られていますが、
言い換えれば政策によって、債券にマネーが流入しやすい状態を
人為的に作り出してきた、あるいは強制的にマネーを債券に
流しこんできたとも言えるわけですね。
今後このような状態が正常化に向かう過程で、
債券からマネーが流出する可能性があるでしょう、
この場合債券が売られ金利は上昇です。
このように純粋相場観的な点からも、先進国の国債を購入する
理由は見当たりません。
三つ目はライフプランという観点でみた、先進国債の妥当性
です。
『いかにして資産を景気の変動から切り離すか』
個人の資産運用のテーマの一つは、間違いなくこの
点にあるといってよいでしょう。
ヘッジファンドをはじめとした、そもそも景気の変動サイクルの
影響を受けない金融商品を組み入れない限り、皆さんは資産を
株やコモディティ、不動産、債券といった、いわば景気サイクルに
よって大きく価格変動する資産(注1)で運用することになります。
注1) このような金融商品のことを、私は『サイクル性資産』とよんで
おります、これに対しヘッジファンドなど『非サイクル性資産』
を一定量くみいれることにより、皆さんの資産は景気変動の影響
を受けにくくすることができ、これが私の資産運用の基本的な
考え方の一つです。
これら『サイクル性資産』のうち、株・コモディティ・不動産は
基本的に景気変動に対して順相関(注2)、これに対し債券は
逆相関です。
注2) 同じ方向に動くということ、即ち景気回復期には上昇し、
後退期には下降することになります、もちろん時間的な
ディレィはありますが・・・
景気に対する「順相関資産」と「逆相関資産」を適性に配分すれば、
仮にヘッジファンドのような『非サイクル性資産』に頼らなくても、
皆さんの資産は、景気変動による上下動から解放されることに
なるわけです。
ところが問題は前者と後者をどの程度の比率で持てば、
資産全体の価格変動リスクを消去できるかという点です。
一般に株やコモディティ、不動産など「順相関資産」は価格変動は大きく、
これに対し債券など「逆相関資産」は価格変動が小さいという
特徴をもっております。
従ってこれらの混合によって価格変動を消去するためには、
後者(即ち債券)の比率を極端に大きくする必要がというあるわけです。
一方で債券のリターンは小さく、よほど大きな資産をお持ちの方以外、
このようなポートフォリオによって、ライフプラン上の目的を
達成することは困難といえるでしょう。
以上のような理由で私は、(少なくとも今の環境で)先進国の債券を
組み入れるつもりはありません、今後組み込むことがあるとすれば、
それは例えば米国の長期債利回りが5%を越えたあたりでしょう。
そのころ個別の長期債銘柄を直接組み入れる可能性はありますが、
少なくとも年内いっぱいはそのような時期が訪れるとは
考えておりません。
では、今回はこのへんで。
(2011年2月8日)
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