今回の相場下落をどうとらえるか

みなさんこんにちは。

週明けから世界の株式市場は乱高下していますね、
これに対し金や銀などは急騰しています。

私たちはこのような相場に対し、どう対処してゆけばよいのでしょうか、
今回は少しそのあたりについて考えてみたいと思います。

まず今回の相場下落の原因について考えてみましょう。

直接のきっかけは、米国債の格下げと欧州、特に
イタリアの債務問題の2点に集約することができる
のではないでしょうか。

ただこの2点はあくまで表面的な現象であって、
私たちは今その背景にあるものを、しっかりと見ておく
必要があると思います。

私は米国や欧州の債務問題の本質は、先進国経済の
成長率鈍化あると思っています。

思い起こせば日米欧の先進国がまだ元気だった20世紀末・・・

先進国は景気後退に陥るたび財政出動を行い、
深刻な事態に至ることを回避してきました、当時は潜在的な成長力も高く、
財政出動によって一時的に政府の債務残高が増えることはありましたが、
それ以上の速度で増えるGDP比でみると、概ね一定の範囲のなかに
収まってきたわけです。

振り返れば先進国の古き良き時代でした。

この状態に変化の兆しが現れたのは我が国で、
1997年に起きた金融不安時ではなかったでしょうか。

住宅バブル破綻の影響で金融機関の財務内容が痛み、
大手の金融機関のうちいくつかが経営破たんに追い込まれました。


この現象はしばらく日本病とも呼ばれ、日本に特異な現象だと
考えられてきましたが、決してそうではなく、先進国共通の
病状であると認識されたのが、2008年米国で起きた金融不安
の時でした。

1997年の日本にしろ、2008年の米国にしろ、
景気後退期のさなかに起きた金融ショックを回避するため、
未曾有の財政出動が行われましたが、その後に残ったのは国の
借金だけ・・・

成長力の衰えた国に、かつてのような経済成長の勢いは
みられず、GDPに占める財政赤字は拡大の一途をたどって
きたわけです。

経済的に成長が鈍化したにもかかわらず、
20世紀型高成長下の経済政策を踏襲し続ける日米欧・・・
いまだに低成長時代にふさわしい経済政策を見出すことが
できずもがき苦しむ姿・・・

これが今起きている先進国の財政危機の本質では
ないでしょうか。

果たして先進国の政策当事者は、この深刻な問題に対して
処方箋をもっているのでしょうか。

日米欧が古き良き時代の成長性を取り戻すのか、
それが無理なら低成長時代に適した経済政策を創造できるか、
この問題を根本的に解決する方法は、このいずれかしか
ないのではないでしょうか。

ただいずれも決して簡単なこととは思えません。

例えば我が国の経済が突然加速し中国を追いかけ始める、
果たしてこのようなことが起こりうるでしょうか。

もちろん可能性としてはアリなのでしょうが、そのため
には相当ドラスティックな改革を断行する必要があるでしょうし、
そのことは多大な犠牲を伴うことになるでしょう。

いま私たち日本人にその準備ができているとはとうてい
思えません。

あるいは低成長時代の新たな経済政策といっても、
大衆迎合的民主主義国家において、はたしてそのような痛みを
伴う政策を世に問うことができるものでしょうか。

いまの先進国の政治、特に日本の政治をみていますと、
そのような期待を持てそうな雰囲気はありません。

などなどつらつら考えますに、先進国は自らの低成長化に
対する適切な処方箋をもっているとはいいがたく、結果的に
今後しばらく世界経済は、先進国で起きる財政赤字問題と、
それに端を発した金融危機に長いお付き合いをしてゆかざるを
得ないのではないかと私には思えます。

つまり一言でいえば『先進国の相対的地位が下がり、新興国の
相対的地位が上がる過程で迎えた混沌の時代』これが21世紀前半の
世界経済の構図ではないでしょうか。

やがて世界が新しい秩序のなかで安定を取り戻すまで、
私たちはこれからも繰り返し、今起きているような金融不安
を経験してゆくことになるでしょう。

ではこのような混沌(こんとん)の時代のなか、私たち個人は
どのような考え方をもって資産の防衛に取り組んでゆけばよいのでしょうか。

一つには金融不安のさなかでも価値がぶれない資産を
もち続けること。言い換えればこれはペーパーマネーでは
ない現物の資産の保有です。

そしてもう一つは資産を決して一か所に置かないこと、
混沌の時代にはどこでシステムが壊れるか、あからじめ
予想することは困難です、予想を捨て一つの塊(かたまり)が毀損
しても、残余の資産で生き残れるよう、平時において備える必要が
あるのではないでしょうか。

これがこの混沌の時代に必要な心構えでは
ないかと私は思います。



では、今回はこのへんで。
(2011年8月10日)




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