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欧州問題の帰結は

みなさんこんにちは。

一昨年から世界経済を不安定にしている
欧州のソブリン問題・・

いったいこの問題の本質は何なのでしょうか、
そしてこの問題の帰結はどうなるのでしょうか、
かつてのリーマン・ショックのように大きな問題に
発展してゆくのでしょうか。

今回は少しこの点について考えてみたいと思います。

まず最初にこの問題の本質についてです。

私はこの問題を、大きく2つの問題に分解してとらえる
べきだと思っています。

まず一つ目は、欧州という地域ではなく、
世界の先進国全体に共通した問題としてとらえるという視点です。

すでに我が国でみられた1997年不安や、
米国で2008年に起きた金融ショックは、いずれも広い意味で
成長性の鈍化が最大の要因だったと私は考えております。

つまり債務はどの時代でも増加しており、それ自体は問題
ではない。経済の規模に対して、相対的な債務比率が増えたところに
問題がある。このような考え方です。

今世紀に入って、ますます先進国の低成長化は顕著で、いよいよ
日米に続き、欧州でもこの問題が顕在化したといえるのでは
ないでしょうか。

欧州の財政危機問題を考えうえで、もうひとつ大切な視点は
共通通貨ユーロという、欧州特有の問題ではないでしょうか。

そもそも通貨には、その交換比率をとおして経済の活性度合いを
平準化するという機能があるわけです。

例えばギリシャという国の信認の低下からその通貨が安く
なった場合、今度は通貨安から輸出環境が改善し、経済は
回復し財政赤字は縮小するという具合です。

このように異なった通貨をもつ国々は、その通貨の交換比率が
柔軟に変動することによって、それぞれの経済が、過度に
浮き沈みしにくい仕組みをもっているといえるでしょう。

これに対し、現在のユーロ圏はどうでしょうか。

ある意味ギリシャやスペイン、あるいはイタリアなど経済の弱い国は、
それに見合った弱い通貨をもっておくべきなのでしょう。

が、ユーロという共通の通貨をもってしまったばかりに、
通貨安による輸出増加は期待できず、従って税収は増えず、
財政赤字の縮小もなし・・・

その結果これらの国の財政赤字削減は、課税の強化や歳出の削減に
よってのみ実現せざるをえず、この場合かえって景気を後退させ、
税収は減り、意図に反しスパイラル的に財政赤字が拡大してゆく・・・
このようなリスクがあるのではないでしょうか。

この問題を根本的に解決するためには、欧州が通貨だけでは
なく、財政においても統合される必要があるはずです。

そこに至るための工程として、まずは欧州安定基金(EFSF)の
拡大は必須だと思います、現在当該基金は4400億ユーロですが、
懸念されているスペインとイタリアの経済規模をみる限り、
この程度の額でこと足りるとは考えられず、やはり最低でも
1兆ユーロ程度まで基金を拡大する必要があるのではないでしょうか。

薬の飲みやすさから推して、このEFSFの規模拡大は、
近々工程にのぼる可能性が高いと私は思います。

が問題は果たしてこれだけで、欧州問題は片づくのかという点です。

特に中途半端な規模拡大では、かえって市場の疑念をかきたてる
可能性がありますし、冷静に考えてそのシナリオは大いに
ありえるのではないでしょうか。

ことの本筋から考えて、私は最終的に欧州共同債の発行
を決断するべきだと思います。

『通貨を共通化するなら、借金も共同でもつべきだ』
市場が最後に要求するのは、この一点ではないでしょうか。

平ったく申し上げて、これはユーロ圏の弱い国の債務を
ドイツやフランスなどが肩代わりするということで、
最終的に欧州はこの決断を迫られることになるのでは
ないかと思います。

ただしそこに至るまでの道のりはまだまだ遠く、
この劇薬を欧州人が飲むのは、欧州南部の大国のうち
一つもしくはいくつかに、財政上の重要な問題が起きた
後ではないかという気もいたします・・・かつて米国が
リーマンを破綻させてしまったように。

仮に欧州でこのような混乱が起きた場合、
果たして我が国は対岸の火事として傍観できるでしょうか、
金融システムは既に世界的につながっており、
我が国の金融機関、我が国の財政が無傷のまま放置されるとは
思えません。

まずなによりも欧州の当局に、このような事態を招かないよう、
速やかな最善策の導入を検討してもらいたいものです。

同時にまた我が国の当局者は、欧州で起きうるこのような
事態を想定し、怠りなく備えてもらいたいものです。


もちろん私たち自身の荒天準備も必要だと思います。




では、今回はこのへんで。

(2011年9月6日)




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