欧州危機後の貴金属相場-3

みなさんこんにちは。

今回は欧州危機後の貴金属、その3回目で銀(Silver)の
お話しをさせて頂きます。

もう飽きた方もいらっしゃるかもしれませんので、
このシリーズは今回で最後です。

はじめに金属としての銀の特徴を、少し整理させて
頂きます。

銀の最大の特徴は、その導電性の高さにあるのでは
ないでしょうか。導電性というのは電気の通しやすさのことで、
銀は導電性でみると金属界の王様です。

この導電性の高さは、銀のさまざまな産業用途を
生みだしました、とくに微細な加工が要求される携帯型の電子機器など
では、銀は必要不可欠な金属になっています。

先週のメルマガで、プラチナの用途が自動車の触媒利用に
偏っているというお話しをしましたが、さすがに銀の場合は
プラチナほどではありません。が、それでもその用途の
半分以上が産業用途である点には注目しておく必要があると
思います、ご参考までに以下は2010年の銀の用途および構成比です。

□産業用途(銀塩写真を含む) 53.0%
□宝飾用途 15.8%
□銀食器用途 4.8%
□コインおよびメダル 9.6%
□ETF等の純投資による退蔵 16.8%

(World Silver Survey 2011より)

先週お話ししたように、プラチナは欧州経済の影響を受けやすく、
現状ではなかなか積極的に買いづらい一方、銀は同じ産業用途でも、
携帯用の電子機器や自動車などその用途は幅広く、特に新興国の
経済成長によって、長期的な視点でも、その需要が引っ張られ
やすい傾向にあるといってよいでしょう。

銀を理解するうえで、次に重要な特徴は、
その市場規模の小ささだと思います。

2010年の銀の市場規模は、重量で申し上げますと約32,870トン、
これを同年の年間平均単価1グラム=約50円で計算しますと、
およそ1.6兆円になります。大雑把にいって、まあ日本の大企業一社
の時価総額程度のサイズといってよいでしょう。

この金額はプラチナ(約7000億円)に比べるとやや大きいですが、
金(約11兆円)に比べると随分小さいことがわかります。

このように銀は産業用途の比率の高さと、その市場規模の
小ささに特徴があり、その点において銀は金よりむしろ
プラチナとの共通点が多いといってよいのではないでしょうか。

これだけをみますと、銀はプラチナに似た値動きをしそうな
気もするのですが、なかなか一筋縄では行かないのが投資の世界・・

特にリーマン・ショック以降の銀相場をみますと、銀はプラチナ
よりむしろ金に似た動きをしているようにもみえます。もちろん
市場が小さい分、金より値動きの振幅は大きいですが。

これはここ数年は銀がもつ産業用途より、むしろ金の代替品と
しての側面に、市場が注目しているからではないでしょうか。

先進国通貨の代替品として金が買われ、
さらに金の代替品として、より高いリターンが狙える
銀へと投資(あるいは投機)の対象が広がった・・・

大雑把にいってしまえば、こういう構図ではないかと思います。

さらにいえば先ほど申し上げたように、欧州経済への依存度の高い
プラチナにくらべ、銀は新興国で長期的な需要の増加が期待できますので、
目先の欧州不安の影響を受けにくい状況にあるのかもしれません。

以上をふまえ、欧州危機後の銀相場について
少し考えてみたいと思います。

先週私はプラチナについて、危機後の欧州経済の
回復度合いに依存するというお話しを致しました。

対して銀の場合より幅広いエリア・・携帯用電子機器や汎用の自動車
という視点でみると、先進国よりむしろ新興国の経済成長の影響を、
より大きく受けるといってよいでしょう。

その点において銀はプラチナよりポジティブにみてよいと
思います、さらに先々週お話ししたように、今後も買われやすい環境
が続く金(Gold)価格に、引っ張られる要素ももっているわけです。

また繰り返しになりますが、銀は金に比べ市場は
小さく、金に投資マネーが流れ込む局面で、一時的に金以上に
買われる場面もあるでしょう。例えば今年3月から4月に
かけての暴騰のイメージです。

以上はもちろん欧州危機が早々に収束し、世界の景気は
再び緩やかな(あるいはやや速い)回復過程に入るという
前提でのお話しです、逆にこの問題が長引き、その結果世界の
景気が後退局面に入ってしまいますと、銀に対して上記とは
逆の圧力が加わることになり要注意です。

私は欧州危機によって世界の景気が後退することはないと
考えておりますが、銀はやはり『落ち着きのない金属』です、
常に最悪のシナリオを頭に入れたうえ、ご自分の許容範囲のなかで
投資されることをお勧めします。



では、今回はこのへんで。

(2011年10月25日)




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