欧州危機とスパイラル現象

みなさんこんにちは。

いま欧州で起きている債務不安は、
かつてPIIGSとも呼ばれた重債務国の、
債務残高の大きさが原因の一つであることは
疑いようのない事実でしょう。

でも私などは、本当にそれだけなのか・・・
などと考え込んでしまいます。

確かにギリシャやアイルランド、ポルトガルあたりまでは、
純粋に維持不可能な財政状態にあった(もしくは、ある)
ことは間違いないでしょう。

一方でスペインとイタリアはどうでしょう。

スペインの2010年の財政収支は確かに悪く、
対GDP比で−9.6%ですが、過去からの赤字の積み上がり
でもある債務残高をみると、対GDP比で67.5%とそれほど
大きくはありません。

続いてイタリアですが、こちらは債務残高はGDP比で127.0%と
高めですが、逆に単年度の財政赤字は4.9%と大変小さく、
ドイツと比べそん色ありません。

イタリアの場合は、過去の一時期に積み上がった財政赤字が大きく、
いまだにそのツケを払い続けている一方、単年度の赤字は意外に
うまくコントロールされているといえるでしょう。

いずれにしてもこの2国は、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル
に比べ、少なくとも重症度合いは小さいといえるのではない
でしょうか。

特にイタリアは製造業の比率が高く、現在のユーロ安は、
今後の同国の経済にとって明るい話題です。

にも関わらず、両国の国債が売られ続けるのは
なぜなのでしょう・・・

たとえば政治に対する不信から、今後の財政赤字がさらに膨張する
のではないか。このような懸念もあるでしょう。

あるいはギリシャの債務カットによって、
両国の銀行が受ける悪影響を懸念している面もあるかも
しれません。

ただ私はこのような合理的な判断より、むしろ心理的な要因
のほうが、大きいのではないかと思ったります。

つまり

市場参加者の心理の悪化

国債の売り

国債価格の下落

市場参加者の心理の悪化

このようなスパイラルが起きているのでは
ないかと思うわけです。

いってみれば自らの心理の揺れにおびえ、
自らを窮地に追い込むスパイラルで、人間が集団的に
いったんこのサイクルに入りしますと、なかなか途中で正気に戻る
ということはないようです。

バブルがついにはじけ、相場が急速に縮小するのと逆で、
実体経済を無視し、負のスパイラルが永遠に続くことはありません。

いずれ相場は、本来のイタリアやスペインの実態を反映した
レンジに戻ってゆくのではないでしょうか。

ただしこの負のスパイラルを断つためには、なんらかの
ショックが必要かもしれません。

その役割をECBが演じるのか、
あるいはIMFか、
それともドイツが欧州共同債に賛同することになるのか・・・

いずれにしてもいま市場は、負のスパイラルを止める
イベントをまっているのかもしれませんね。




では、今回はこのへんで。

(2012年1月24日)




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