■自由闊達にして愉快なる理想の工場
みなさんこんにちは。
ここのところ我が国経済は元気がなく、
あまりよいお話しを聞きません。
聞こえてくるのは寂しいお話ばかり・・・
松下が7000億円の赤字、
ソニーが四年連続の赤字、
エルピーダの破綻、
リチウム電池、国別シェア首位陥落、
僅か30年ほど前は日の出の勢い、
世界最強の製造業と呼ばれていたのに・・
たかだか30年ほどの間で、なぜこのような
寂しい感じになってしまったのでしょうか。
原因の一つは円高にあることは間違いないでしょう。
あるいはよくいわれるように、一つの業種に多くの企業が集まり
すぎているのかもしれません。
また国内人件費の高騰によって、他国との競争が厳しく
なったということもあるでしょう。
客観的な理由を探しますと、それらしい理由は
いくつも見つかるのですが、私はこのような環境の変化より
もっと深刻なこと・・・日本人の内面に巣食う病が災いしている
ような気がしてなりません。
私が長年勤めていた電気メーカーの設立趣意書には、
以下のような一文がありました。
『真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき
自由闊達にして愉快なる理想工場の建設 』
その会社の設立目的の第一条として書かれていた
ものです。
決してひいき目でなく、私は日本の製造業の躍進の原点は、
上記一文に代表されると思い続けてきました。
ひるがえって今の我が国の製造業はどうでしょうか。
唯一「真面目」という点では先人のめがねにかなう可能性は
ありますが、果たして「技術者がその技能を、最大限に発揮できる
環境」が整っているでしょうか。
あるいは社内で技術者が自由闊達に議論し技能を高めあう、
社内にそのような空気はあるでしょうか、
理想の工場は日本のどこかにまだあるのでしょうか。
社内で出世する人間はといえば、管理と数字に長けた人達ばかり、
派閥争いは絶えず、ひたすら他人を凌駕することのみに
明け暮れる日々・・・
全ての会社がこのような病に犯されているとはいいませんが、
少なくとも大企業全般に見られる傾向の一つであることは
まちがいないでしょう。
モノを作る単純作業を機械が行うようになって、
労働者の質による差別化が難しくなり。
続くPCやネットコミニケーションの発展によって、
事務系職員の質も既に差別化の決めてではなくなって
しまいました。
つまり製造ラインにおいても、また間接部門に
おいても新興国企業との差別化は、構造的に難しくなって
しまったのではないでしょうか。
製造業の近未来において、もはや先進国と新興国の
境界はなく、あるのは技能や創造性といった、いわば
従業員一人一人の地力の差だけ・・
ここのところあらためて『真面目なる技術者の技能を、最高度に
発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設 』
の意味を考えています。
もともと日本人には技能的な素養に恵まれていると
私は思います。
明治以降やさきの高度成長期以降をみても顕著な事例が沢山ありますが、
それ以前たとえば江戸時代、あるいはもっとさかのぼっても、
多くの事例をみつけることができます。
蒸気船を日本で初めて試作した人たちのお話し、
近代日本地図の作成に関するお話し、
からくり時計やからくり人形の技術の高さ、
堂島の米先物取引所創設のお話し、
鉄砲伝来以降の大普及のお話し、
いずれも素養として日本人が豊かな創造性を
もっていたことをうかがわせる事例です。
残念ながらこのような能力がいまは埋もれているだけ・・・
そんな気もするわけです。
日本人がかつての輝きを取り戻すためには、いっそここいらで大きく沈み、
いろんな意味で一度社会をリセットしたほうがよいのかもしれませんね。
では、今回はこのへんで。
(2012年3月6日)
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