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金はどこまで上がるか

みなさんこんにちは。


金の上昇相場はまだまだ続き、
数年後に1オンス=8000ドルになる。

このような強気の人達もいれば、その逆に

すでにピークを越えており遠からず下げに転じる。

このような考えの人達もいます。

果たしていまの金の価格はまだ上昇し続けるので
しょうか、それとも既にバブル状態なのでしょうか・・

この答えを得るために、一見遠回りにもみえますが、
私はまず金という商品の性格について考える必要があると
思います。

例えば金という金属と、原油や非鉄金属など私たちが
生きてゆくために不可欠な資源を比べてみましょう。

原油は現在1バレル=100ドル後半(WTIもの)ですが、
仮にこれが120ドル越えが定着するとどうでしょうか。

まず日本と比べガソリンへの依存度が高い米国で、
庶民は自動車による移動を控え、その結果消費活動全体が
抑制される可能性があるでしょう。

逆にもし自動車による移動を抑制しないなら、他の消費を
抑制してしまう可能性もあるでしょう。

原油高は結果的に米国の景気に悪影響を与え、
その結果こんどは原油の消費が減って原油価格が下がる・・・

つまり原油価格と景気はお互いに影響しあいながら、
妥当な水準を探しつつ推移するというわけです。

原油を例えば銅などの非鉄金属に置き換えても同じで、
まあ大雑把にいってしまえば産業用商品の相場は、
押しなべてその時々の景気と共鳴しながらも、
妥当な水準のなかで決まってゆくといってよいのでは
ないでしょうか。

ですから決して天井知らずの相場など、
ありえないわけです。

これに対しては金はどうでしょうか。

金の相場を考える場合、唯一金という金属が
もっている特殊性について理解しておく必要があると
私は思います。

上記でふれた原油にしろ銅にしろ、私たちがそれらを
買い求める理由は、それらが私たちが生きてゆくうえで、
必要不可欠だからのはずです。

例えば原油はエネルギーとして使用したり、加工して自動車を
走らせたりできます。また銅は電線として使ったり、変形
させて自動車の部品に加工したりといった具合にです。

よく考えてみるとあらゆる資源は、(一時的な投機行動を除き)
このような産業の原料としてのみ使用され、その希少性と有用性に
よって価格が形成されるといってよいのではないでしょうか。

金の特殊性はここにあると思います。

すなわち金のみが唯一産業に供されることなく、
利用され続ける(注)という点です。

注)金は産業用途でも約10%を消費されますが、
お話しを簡単にするためここではそれについてはふれません。
あるいは銀も貨幣として、宝石は観賞用として使用されることが
ありますが、上記同様ここではふれません。

金がもつこの特殊性は、また金の相場形成にも特殊性を
もたらずはずです。

例えば冒頭の原油の例で、原油価格の高騰によって
米国の個人消費が減少し、その結果景気に対して悪い影響を
与えると申し上げましたが、金の場合はどうでしょうか。

基本的に金は産業利用されることはありませんので、
金の相場は景気に対しては中立(注2)といってよいでしょう。

注2)金を保有している人のなかには、消費を増やす人もいる
かもしれませんが、金は株や不動産に比べ市場が小さく、
そのような資産効果も低いとしてここでは無視します。

簡単にいってしまえば金は原油や銅と違って、相場が上がって困る人は
それほどいないわけです。

さきほど原油や銅の場合、「景気との共鳴の結果、妥当な水準に
おちつく」と申し上げましたが、金の場合このような共鳴は起きず、
したがって妥当な相場水準などハナから無いといってよいのでは
ないでしょうか。

つまり本質的に、金の相場の上限を見つけることは難しい
作業なのでしょう。

ですから例えば「金は○○○ドルまで上がる」的な予測は、
その予測自体がさほどの意味をなさないと私は思っています。

ではいったい金の相場はどこまで上がるのでしょうか。

私自身はこの質問に対し、「今の金価格の上昇をもたらしている
経済の構図が崩れるまで」とお答えするようにしています。

ではその「世界経済の構図」とは、
いったいどのようなものなのか・・

私は端的に申し上げて『先進国経済の低成長化と
新興国経済の台頭の組み合わせ状態』だと考えております。

我が国では1990年代の後半、
米国では2008年のリーマン・ショック以降、
欧州では2009年のソブリン危機以降、

特20世紀の末あたりから、先進国では低成長化の弊害が
顕著に表れ始め、財政出動と金融緩和政策が繰り返えされてきました。

かつての高成長期と違い、景気後退期に起きる社会的ダメージが
大きすぎ、その都度未曾有の対策が要求される・・・

先進国でこのような構図が定着してしまったかのようですね。

結果としてとられる先進国側の金融緩和政策は、地球の裏側で
高成長が続く新興国の深刻なインフレを招きます。

このような悪影響への配慮から、先進国では景気が十分に
回復する前に、金融引き締めに転じざるをえないわけです。

その結果、先進国経済は慢性的な低成長状態から抜けだせず、
いずれどこかでまた金融危機が起きる・・・

そしてその対症療法として、

大量に発行される国債、
大量に印刷されるマネー、
政府の信任は衰え、
紙幣の相対的価値は薄まる、

結果として起きる相対的な金の価値の上昇・・

これが私が考える金価格を上昇させる「世界経済の構図」です。


現在の金相場の上昇は1999年ごろ、1オンス=300ドルの
少し手前あたりからはじまっていますが、この間世界で
概ねこのような現象が繰り返されてきたといえるのでは
ないでしょうか。

ではいつになれば世界は、この不安定な状態から
抜け出せるのでしょうか。

私は新興国経済が先進国に追いつき、
世界の南北間格差が縮小するまでと考えております。

なかでも人口の大半を擁するアジア、とくに
中国とインドが安定成長期に入るまでは、このように
世界的に不安定な状態は続くのではないでしょうか。

ただそのさき仮に世界経済が新しい秩序のもとで、
安定を取り戻すとしたらどうでしょうか。

世界は一体的な経済政策をとりやすくなりますし、
新しい基軸通貨体制の構築も、少なくとも今よりは
現実味を帯びていることでしょう。

逆に申し上げればそのような状態になるまで、
金の価格は上昇しつづける可能性があると私は考えています。






では、今回はこのへんで。

(2012年3月22日)




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