購買力平価のわな

みなさんこんにちは。

申し訳ございません、
今回は少し難解なお話しになると思います、
苦手なかたは読み飛ばしてください。

では改めまして・・


インフレ国であるA国の通貨は安くなり、
デフレ国であるB国の通貨は高くなる。

これはAB両国の物価変動率の差が、為替を決定するという考え方、
つまり『購買力平価説』に基づいた考え方です。

この考え方は金融の世界ではごく一般的なもので、
経済の教科書などでは必ず説明されています。

いつも申し上げていますが、私はこのような『購買力平価説』
の使い方には違和感を覚えていますし、同時に大きな欠陥が
あると考えております。

まず、

「デフレ国の通貨は高くなる」

というロジックをよくよく分解して考えますと、
この現象のなかに、ひっそりと(あるいはこっそりと)仕組まれた
共鳴現象を見つけることができます。

例えばB国で通貨高になりますと、輸入物価は下がり、
必然的に国内の物価水準も下がります、つまりデフレに
なるということです。

従ってまず、

通貨高→デフレ

となるわけですね。

次に購買力平価説に基づいてデフレ国の通貨が高くなるなら、
ここからB国はさらに通貨高となり、

通貨高→デフレ→通貨高

となります、さらにその通貨高によって輸入物価が
下がり、国内の物価水準が下がる・・

従って

通貨高→デフレ→通貨高→デフレ・・・

となるわけです。

要するにこれは通貨高とデフレが共鳴し合い、
無限のループをつくるということです。

その結果延々とB国ではデフレが進行することに
なり、通貨も無限に高くなります。

2つの要素が共鳴し合い、ループを形成しながら
進行するとき、そこに必ずバブル(行きすぎ)が起きる
ことに留意しておく必要があります。

いまの日本に当てはめてみると、現在の1ドル=80円から
どんどん、それこそ延々と円高が進み、理論的には
1ドル=50円もありうるでしょうし、30円になっても
不思議ではないということになるわけです。

そもそもこの「両国の物価変動の差が、為替を決定する」
という考え方の中に、上記のようなループ現象が組み入れ
られていますので、結果的に円は無限に上昇を続けることに
なるはずです。

でも私たちは体感的にそのようにならないことを
知っています。

では明らかに矛盾をはらんだこの考え方の欠陥は何なの
でしょうか・・・

購買力平価説(両国の物価変動率の差が、為替を
決定するという考え)は、過去に起きた現象や現状を説明して
いるに過ぎないのであって、決して今後の為替水準を
予見するものではない。相場予想にとって大切なのは、
むしろファンダメンタルズで、突き詰めればそれは
両国の国力の差だ。

このように考えておくべきなのではないかと
私は思います。

購買力平価説は、将来を予想する際には使えず、
従って例えば、

「日本は今後もデフレが続くから円高だ、
だから円高に備えよう」

というような使い方は、なじまないのではないでしょうか。

購買力平価の正しい使い方は、

「今後円安に転じた時はインフレだ、
だからインフレに備えよう」

ではないでしょうか。

逆に市場参加者が、前者のように購買力平価説を相場
の予見ツールに使用するのであれば、今後危険な罠に
陥る可能性があるわけです。

それはファンダメンタルズからみて
妥当な為替水準から大きくかい離した時、急速な逆の
ループが始まるということで、こんどは無限の
円安・インフレのループです。

市場参加者の多くが、購買力平価説のわなにはまっている
現状を踏まえますと、一応そのような可能性も念頭に
おいておくべきではないかとも思います。






では、今回はこのへんで。

(2012年4月17日)




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