■新興国は追いつくか
みなさんこんにちは。
思い起こせばいまから30年ほどまえ、
私が初めて行った海外は中国でした。
当時の中国は貧しく、みな人民服に人民帽でした。
そういえば車の数は少なく、街灯もなく道路はまっくら、
にも関わらず自動車はめったなことではヘッドライトを
点けず、危なくてしかたがない。
真昼間だというのにいいおじさんたちが町中でたむろし、
仕事をしている様子もなし。
外国人向けの友誼店に並ぶ商品はまばら。
それなのに人の頭数はやたら多く、日本人が珍しいとみえ、
僕らが町をあるくと、しらないうちに行列ができ、
大勢であとをゾロゾロついてくる。
旅行中よく「こんな国、これから発展するだろか」
などと考えたものでした。
・・・あれからはや30年。
その国の経済が日本を追い越し、
その国の人たちが大挙して日本におしよせ、不動産や会社、
温泉旅館などを無造作に買ってゆく。
どうしてこんなことが起きてしまうのか、
これが歴史の必然だとしたら、中国に続くインドネシア、
マレーシア、タイ、フィリピン・・・へたをすればモンゴルあたりに
まで追いつかれてしまうのか。
最近ときどきこんなことを考えます。
この新興国によるキャッチアップ現象の本質はいったい
何なのでしょうか。
いろいろな枝葉を取り除いてゆきますと、
私は情報の伝達速度に行き着くのではないかと思います。
例えば人類最古の文明のひとつであるメソポタミア文明。
メソポタミア、すなわち現在のイラク近辺では、すでに紀元前2000年前後に
広域国家が成立し、高い文明社会を築いていました。
一方で同時代のヨーロッパ社会はといいますと、いまだ
村落共同社会程度にすぎませんでした。
その後メソポタミアからギリシャ・ローマ経由で文明が伝播してゆきますが、
ヨーロッパ、特に同地域の中部から北部にメソポタミア発の文明が到達し、
その結果広域の文明社会が成立するのは西暦400年代の後半です。
つまり当時の先進地帯である中東から、ヨーロッパまで文明が
伝播するのに、およそ2000年から3000年程度の年月を要したといえる
のではないでしょうか。
一方でこの3000年の間に中東は、すでに相当先に進んでしまう・・・
このようにして当時の新興国が先進国に追いつくのは容易なことではなかった
のでなないでしょうか。現に中世のヨーロッパはイスラムやトルコ、
あるいはモンゴルなど他地域の支配下にたびたび置かれています。
では次に、この2000年あるいは3000年という時間について少し考えて
みたいと思います。
メソポタミアからヨーロッパ中心部までの距離はおよそ
3000キロほどあります、この間を3000年かけて文明が伝わったと
しますと、まあ大雑把に申し上げて1年でやっと1キロほどということに
なるでしょうか。
このような遅々とした速度で、ごくゆっくりと文明は
伝わっていったということになるわけです。
情報の伝達が人の物理的な移動のみによって行われた当時、
どう頑張っても文明の伝播は人間の移動速度を越えることは
なかったはずです。
ただし一人の人間が単に移動するだけで文明が伝わるなら、
上記のように1年で1キロということはないはずです。
当時は社会がいまのように広域化していませんでしたので、
例えば言語や習慣など、コミュニケーションの手段も地域ごとことなって
いたでしょう、その結果情報の伝達にはさらに時間を要した
はずです。
また文明というのは一人の人間が伝えて回るという類のものではなく、
それを受け入れ、かつその利益を享受したものから隣接した社会に
伝えられるといった具合に、各地でその都度技術の効用が証明され
なければなりません。
場合によっては農耕技術の伝授や武具の制作のように、着手から効用の確認
に至るまで、数世代を要する技術もあったでしょう。
このようなわけで、先ほどの3000年という長い時の経過を要したのでは
ないでしょうか。
ひるがえって現在をみるとどうでしょうか。
先ほど中国経済が我が国にキャッチアップするまで30年と
申し上げました。
現在の文明の伝播は人間の物理的移動を要しません。
メソポタミアの時代に人間が移動によって伝えた情報は、
そのあと馬になり、自動車になり、飛行機になり、いまでは
世界中をたった一秒で七周半する電気信号によって伝えられます。
また既に世界は英語と数字という共通のコミュニケーション手段を
持ち、瞬時に双方で理解が可能です。
かくしてある先進地域の成功体験は、瞬時に発展途上地域の住人に
伝えられ、利用され、そして模倣される・・・
私たち先進国の住人は、ながらく当然のように世界には先進国と発展途上国があり、
おのずと生活水準に差があると信じてきましたが、上記のような考えに
立てば、いずれ世界の発展途上国と先進国の経済格差はなくなることに
なるはずです。
この考えは私達日本人にあまり愉快ではないかもしれません、でも
このキャッチアップが先進国の経済逆進によってもたらされるのではなく、
発展途上国の経済発展によってもたらされるのであればどうでしょうか。
そこに先行者にしか得られないチャンスを見出すことが、
できるはずです。
では、今回はこのへんで。
(2012年5月22日)
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