■とめよう!円高
みなさんこんにちは。
なぜ日本は、いつまでたってもデフレから脱出
できないのか・・・
過去においては、デフレの理由を需要と供給のギャップに求めようと
する考え方が主流でした。
つまり需要が供給より少ないから、
その結果モノが余って物価が下がるという考え方です。
データをみますと、確かに2011年度の需要は、
供給に比べ約15兆円少ない状態になっています。
この数字だけをみますと確かに『デフレ=需給ギャップ犯人説』は、
的を射ているようにみえますが・・本当にそうなのでしょうか。
1990年代後半から、この『デフレ=需給ギャップ犯人説』に基づいて、
公共投資がさかんに行われ続けたのは、皆さんご承知のとおりです。
典型的な事例は小渕総理の時代で、彼は自ら「平成の借金王」と称し、
積極的に公共投資を行い、財政赤字を膨張させ続けました。
当時の政府の考え方は、「需要がないのであれば、国が強制的に需要を
作ってしまおう」というものですね、野村証券エコノミストだった
リチャード・クーなどは、さかんに政府に自説を説き、事実この説に基づいて
巨額の公共投資が行われました。一時小渕総理は、彼を政府の顧問に
採用しようとしたほどです・・・ああ恐ろし。
その結果はみなさんご存じのとおり・・・
デフレは一向に解消せず、
残ったのは巨額の財政赤字だけです。
さらに『デフレ=需給ギャップ犯人説』の誤りを裏付ける
データがここにあります。米国の需給ギャップです。
現在の米国の需給ギャップは5.5%程度あり、2008年以降は
日本より大きな需要不足を抱えています。一方で米国の物価上昇率を
みてみますと、直近で2%程度で推移しています。
つまり需給ギャップがより大きな米国が、デフレに陥って
いないということですね。
これらの事実は、デフレが需給ギャップ以外によってもたらされている
可能性を、強く示唆していると言えるのではないでしょうか。
では我が国の20年にも及ぶデフレの真の犯人は
いったい何なのでしょう。
この点に関していまだに国民的コンセンサスはできていなように
思いますが、私は筆頭に円高を挙げるべきでは
ないかと考えております。
円高は我が国企業の収益構造を弱体化させ、
企業に人件費の抑制を強いてきました、賃金の低下は
消費を抑制しデフレ環境を作り上げます。
同時にあからさまな為替介入を続ける韓国製造業などとの
競争を不利に導き、その点からも我が国製造業の屋台骨を
ゆさぶり続けてきました。この競争に勝つため製造業は、
その拠点を海外に移さざるをえません。
つまり製造業ががんばって円高対策に励めば励むほど、
国内の消費は縮み、デフレが進行するというわけです。
我が国の”失われた20年”と呼ばれる長期デフレは、
円高によってもたらされた部分が大きいのではないでしょうか。
このように考えてまいりますと、1990年以降我が国でとられて
きた、大規模な財政出動はいったい何だったのか・・
私などは考え込んでしまいます。
もちろん大規模な財政出動は、その都度一時的にではありますが、
需給のギャップを縮めデフレを緩和する効果はあったかも
しれません。が、一方でかえってそのことが円高放置につながり、
その結果、政府や日銀が円高の悪影響を軽視し続けてきたと
言えるのではないでしょうか。
そう推測しますと、過去の誤った処方箋・・即ちデフレ対策
としての公共投資の拡大は、我が国経済にとってまさに
痛恨の極みだったといえるでしょう。
政治家は常に大衆迎合的ですね。
国民に受けのよい公共投資はやりやすい、しかも票につながる。
一方で海外からの非難を受ける為替介入はやりづらい。ましてや
欧米の当局に対して為替介入の説得など・・行う胆力も気概もない。
政府だけではありません、1990年代から2000年代初頭にかけ、
日銀が初動として思い切った流動性を市場に供給していたら、
円はここまで投機しやすい通貨と市場からみられることはなかったでしょう。
つまり現在の国力を反映しない円高は、政府と日銀の過去の
判断ミスによってもたらされたと言ってよいのではないでしょうか。
今からでも遅くはありません。
内に対して日銀は流動性を適切に供給し、
外に対して政府は為替介入を堂々と主張し渡り合い、
この国力を反映しない円高を一刻も早く止めるべきでは
ないでしょうか。
過去の誤った政策によって積みあがってしまった赤字を、
リセットすることはできません。が、今後の適切な政策により、
失われた20年に終止符を打つことはできるはずです。
では、今回はこのへんで。
(2012年6月6日)
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