■収益不動産を法人で持つ意味
みなさんこんにちは。
私が相談者のためにお作りするポートフォリオのなかで、
不動産は以下の点で重要な意味持っています。
まず第一に質的な意味での資産分散効果です。
不動産はETFやヘッジファンドなど、いわばペーパーマネーと
対極にある現物の資産であり、質的な分散効果を得ることが
できます。
また同じ現物資産であっても、貴金属からは得られない、
賃貸料収入というインカムゲインを得ることもできます。
あるいは現金や株をいくら持っていても相続上の利得を
えることはできませんが、現物の不動産、特に賃貸用の
不動産には相続上の大きな優遇があるといってよいでしょう。
このように不動産にはポートフォリオ上の質的分散効果に
とどまらず、相続プランやライフプランという観点からも、
独特な使い勝手のよさがあるわけです。
一方でいつくかの問題点もあります。
その最大のものは、保有中に発生する税の負担です。
ご存知のように個人が支払う所得税には累進性があり、
税引き後の手取りは収入は、不動産オーナーの本業収入が多くなれば
なるほど逆に少なくなってしまいます。
富裕層に属する方にとってこれは頭の痛い問題では
ないでしょうか。
この問題に対する一つの有効な対処法は、
法人の設立にあるといってよいでしょう。
法人には広範な経費が認められておりますので、
設立した法人に対し、個人が所有する収益不動産を譲渡しますと、
さまざまな節税効果を得ることができます。
まず業務で必要とされるさまざまな物品の購入や、それらの
維持に関する諸費用・・・たとえば自動車やパソコン、書籍など
の購入代金や維持費の経費算入が認められます。
あるいは家族に支払うべき人件費があれば、経費に計上する
ことも可能ですし、ご自宅を会社に譲渡し、社宅にするという
方法もあります。
さらに生命保険の活用も検討対象になるでしょう。
例えば社長を被保険者、会社を保険金の受取人とした逓増型定期保険
に加入するという方法が有効ではないでしょうか。
まず契約期間中は保険料の(一般的には)半額を経費で落とせます。
ただし一方で残りの半分は資産計上となり、解約時点で受け取る
保険返戻金と、貸借対照表に計上された保険資産との差額は
解約時点で収益となり、逆に法人の課税対象になってしまいます。
したがって何も対策をとらなければ、当該期に多額の税が課され
ますので、保険を使う意味はありません。
逆に言えば同じ期に大きな費用を発生させることができれば、
その期の納税額を圧縮することができ、保険を使った意味が
でてくるわけです。
この場合一般的には社長の退職金を使うことになります。
保険の解約と社長の勇退(退職)を同期させ、
言い換えれば退職金という経費を保険の解約益にぶつけることに
より、当該決算期の納税額を圧縮することができるわけです。
一方で社長が受け取る退職金は、ほかの所得とは分離され
納税額が計算されます。退職金には一定の算出基準があり、
好き勝手に決めることはできません。が、一方で勤続年数に
応じた非課税枠や1/2課税などの優遇もあり、社長個人の
納税額は大幅に圧縮することができます。
こうして法人の納税額と社長個人の納税額を、
同時に圧縮することができるわけです。
少し専門的で長くなってしまいましたが、要するに
法人経由で不動産を所有した場合、大幅な節税効果を
得ることができ、言い換えれば高い運用効果を得ることが
できます。
もちろん法人を設立し、かつ維持すること自体にも
一定の経費がかかります。が、資産規模が一定以上になりますと、
規模の効果が働き、法人経由で不動産を所有したほうが、
有利な場合があるわけです。
少々面倒ではありますが、特に富裕層に属するかた
にとって、一つの選択肢であることは間違いないでしょう。
では、今回はこのへんで。
(2012年7月24日)
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