金利が消滅しつつある世界で

みなさんこんにちは。

まったく我々先進国の住人にとって、
生きにくい時代がきたものです。

ほんの一昔まえ・・

もっと正確に申しあげるならつい5年ほど前まで、
ミドルリスク・ミドルリターンの資産といえば、
先進国の国債が定番でした。

当時の米国10年債の利回りは5%前後、
フランスやドイツの長期債でも4%台なかばは
とれたものです。

日本国債ですら当時1.5%ほどありました。

それが今はどうでしょうか。

米国債も、ドイツ国債も、フランス国債も・・
みるみる利回りが下がり、いまでは(安全な!)先進国の
国債で、2%の利回りを得るのは至難の業というありさまです。

そもそも金利はお金を借りるためのコストです。
成長が止まった先進国で、お金を借りて事業活動を行おう
という活力は失われ、お金に対するニーズは以前より小さく
なってしまいました。

お金を借りたい人が減った結果、
お金を借りるためのコスト、即ち金利が下がる。
これはおそらくすべての先進国にとっての必然であり、
今後もこの傾向は続くのではないでしょうか。

さらに申し上げれば、先進国に共通してみられる金融不安。

実体経済に対して圧倒的に巨大化した金融は、世界経済の
振幅を拡大し、金融が自ら生んだ振幅により、金融自らを
混乱に陥れる・・・

金融の膨張は、実体経済と金融経済のバランスを危うくし、
向こう長期間にわたり世界経済の不安定要因であり続ける
でしょう。

その結果として頻繁に訪れる経済の混乱・・

そのとき先進国はどのような処方箋で対応するのでしょうか。

日本にしろ、
米国にしろ、
欧州にしろ、

先進国はどこも財政状態が悪く、
かつてのように財政を出動して、景気を強引に回復させる
力はありません。

かくして経済混乱に対する先進国の処方箋は、
中央銀行によるペーパーマネーの供給という片肺飛行、
マネーの量の膨張は、相対的なマネーの価値を薄め、
その結果マネーの調達コスト、即ち金利は低下する。

このような世界経済の構造要因からも、
(安全性の高い)先進国の金利は、消滅に向かわざるを
えないのではないでしょうか。

あるいは金利の消滅ではなく、それを通り越し、
国債が本当のペーパーになってしまうリスクをも、
先進国共通の怖いシナリオとして想定しておくべき
かもしれません。

いずれにしても、この金利の消滅は社会のいろいろな
局面で悪い影響を及ぼすでしょうし、すでにその予兆は
みられます。

例えば米国の年金基金。

一般に彼らは年率7%程度を目標リターンに
おいていますが、それはかつて高利回り時代の米国債を
前提にしています。

想定リターンを下げ、給付額を下げるのか、
それとも高いリスクを覚悟して、新興国株やコモディティの
組み入れ率を上げるのか。その場合もし運用に失敗したとき、
加入者に対してどのように責任をとるのか。あるいはとれるのか。

この問題は米国だけの問題ではありません、
日本も欧州も、いずれこの問題と正面から向き合うことを、
迫られるのではないでしょうか。

このように金利が消滅した世界では、
ミドルリスク・ミドルリターンの金融商品は、
極端に減少することになります。

一方で世界を見渡してみると、ほかにこのクラスの
金融商品がないわけではありません。

例えば不動産。

この古(いにしえ)の現物資産の代表選手は、
ペーパーの世界の混乱に対し、ある種の耐久性をもって
いるといえるでしょう。

ペーパーマネーが増えれば増えるほど、不動産の相対的な価値は
高まりますので、不動産はいわば価値のアンカーとしての性格を、
もっているといってよいのではないでしょうか。

さらに生身の人間が居住する空間として、経済の混乱期
においてもその利用価値は常に一定の水準を保ちますので、
収益においてもまた、一定の額を生み続けることになるでしょう。

特に新たな建築が難しい都市部において、
その供給量は限られますので、そのようなエリアの不動産は、
時間を超えて収益を維持するでしょう。

ただし不動産はバブル化しやすく、
相場の高騰期に購入すると大変なめにあって
しまいます。バブル化の判断基準は収益率で、世界的に
みて都市部の案件で利回り5%程度が一つの目安では
ないでしょうか。逆にそれを大幅に下回る市場は買われすぎ、
バブル化している可能性を疑うべきでしょう。

金額のロットが大きいだけ、物件選択は十分慎重な吟味が
求められますが、いずれにしても金利が消滅しつつある現在、
不動産がミドルリスク資産の選択肢の一つであることは、
間違いないと私は思っています。



では、今回はこのへんで。

(2012年8月1日)



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