■景気後退期にこそ求められる資産の分散
みなさんこんにちは。
ここのところ世界景気に対する懸念が、
再び台頭し始めているように思います。
米国では住宅価格の底打ちが明確になって
きましたが、雇用や消費、生産に関する指標は
改善を示しながらも緩やかなものにとどまり、
全体としては停滞気味といってよいでしょう。
欧州では4-6月期の経済成長がマイナスに沈み、
今後の見通しも決して明るくはありません。
たのみの新興国はといいますと、特にブラジルでは
4-6月期の経済成長率が僅か0.5%に落ち込み、スクランブルを
要す状態です。ほかインド、中国、ロシアなど大手どころも
思わしくなく、新興国サイドからも明るいニュースはとんと
聞かれなくなってしまいました。わずかに元気なのはインドネシア
やフィリピンあたりでしょうか・・・
こんな時期に株や新興国通貨にお金を集めておくと、
かなり厳しい状態になることは言うまでもありません。
リーマン・ショックでやられ・・・
苦節4年、ようやく少しずつ取り戻しつつあったのに・・・
また長い景気後退のトンネルに入ってしまうのか・・・
このような不安をお持ちの方も、多くいらっしゃるのでは
ないでしょうか。
このような状態になりますと、やはり資産分散の
大切さを再認識しないわけにはゆかず、私としては
皆さまには是非以下の3点を、押さえておいて頂きたいと
思います。
一つ目は、景気サイクルの影響を受けやすい金融商品でも、
せめて株のほか農産物や貴金属などのコモディティに
分散しておくこと。また新興国通貨への集中はさけること。
二つ目は、そもそも景気サイクルの影響を受けにくい金融商品、
たとえばマネージド・フューチャーズや金(Gold)に、普段から
資産を分散させておくこと。
三つ目は、ペーパーの世界から超越した現物資産として、
不動産やコインなどを常に一定額ポートフォリオに組み込んで
おくこと。
このようにお話ししてまいりますと、皆さんのなかには
『景気後退期に入ってから、資産のシフトを行ったほうが
いいじゃないか』とおっしゃる方もおいでかもしれませんね。
確かに理屈ではその通りなのですが、実際の資産運用の世界では
なかなかそううまくはゆきません。
まず株は景気を先取って動きます。ですから景気後退が認識
された時点では、もう手遅れになっている場合が多いのですよ。
さらにそもそも当局による景気後退の認定(注)は後追いで行われ、
景気が後退期に入ったと認定されるのは、随分あとになって
からです。
注)景気後退や回復の認定方法は国によって異なりますが、
認定されるまで一般に数ヶ月から十数ヶ月のタイムラグがあります。
つまり後から振り返ってみて、なぜあの時株を処分しなかったんだと、
必ず後悔することになるわけです。
このような後悔をしないための方法は二つだけ。
一つ目は景気の変動サイクルを予見し、前もって資産の
大胆な移動を試みる方法。
二つ目はいっそのこと予見をあきらめ、自分には先見性はないと
割り切り、常に景気中立型の分散ポートフォリオを
築いておくという方法で、これは冒頭にご案内したような
資産配分に通じます。
私の基本的な考え方は後者で、これすなわち『資産の地理的
かつ質的分散』となるわけです。
常に不動産や貴金属など現物資産を一定額組み込み、
世界中で突発的に発生する金融ショックへの資産耐性を
持たせておく。
ペーパーマネーの世界では景気変動サイクルの影響を
受けないマネージド・フューチャーズなどを一定額組み入れ、
景気後退期の資産収縮を防ぐ。
一方で高いリターンを追及する部分も常に維持し、
メリハリを利かせ、この部分は新興国株とコモディティに集中する、
ただし極力景気変動サイクルを「予見」する形で持ち高の調整は行う。
もちろん完全に「予見」できればよいのですが、残念ながら私自身も
自分の相場予想に100%の自信を持っているわけではありません。
ただしここで失敗しても、全体に占める「株・コモディティ部分」の
割合さえ合理的に計算されていれば、ある意味読み違えも織り込み済み
ともいえるわけです。
つまりここで大切なのは、この景気サイクル連動部分で
失敗しても『それを織り込み済み』と考えられるポートフォリオを
あらかじめ構築しておくことではないでしょうか。
以上のようなことを忘れ、無防備なまま景気後退期に
突入しますと、短期間のうちに資産の大半を失い、場合によっては
今後のライフプランに大きな影響を及ぼすといった事態に陥りかねません。
景気後退期にこそ、戦略的な資産分散が
求められるといってよいのではないでしょうか。
では、今回はこのへんで。
(2012年9月4日)
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