二つの無制限

みなさんこんにちは。

9月6日ECB(欧州中央銀行)は、南欧諸国が発行する
国債を無制限に購入すると発表しました。

さらに翌週の13日、FRB(米国の中央銀行に相当)は、
無制限にMBS(住宅担保証券)を購入することを決めました。
FRBの購入は月間400億ドルという上限を設けていますが、
雇用の先行きに十分な改善がみられるまで続けるという意味で、
事実上無制限といえるわけです。

世界に巨大な影響力を持つ2つの中央銀行の無制限な量的緩和は、
今後の世界経済にどのような影響を与えるのでしょうか。

まずは心理的な影響について考えてみましょう。

欧州の無制限な国債購入には、いくつかの条件が付いており、
決してこれで欧州問題が収束するとは言えませんが、
ESM(欧州安定化メカニズム)の発足と合わせ、今回の
無制限国債購入は、今後の欧州問題の明るい出口を
期待させるに十分なインパクトを持っているといって
よいでしょう。

米国でも同様、雇用状況に改善がみられるまで
延々と・・・確かに流動性供給と雇用の改善の因果関係は
必ずしも明確ではなく、いわば『風が吹けばおけ屋が儲かる』観も
ありますが、それでも期間に制限を設けない流動性の供給は、
市場参加者の心理を改善する高い効果をもつはずです。

さらにこのような心理的な好影響は、やがて時間をおいて、
実体経済にも好影響を与える可能性が高いのではないでしょうか。

その結果欧州や米国の経済は、来年にかけ徐々に改善し、
減速顕著な新興諸国の経済にも好影響をもたらす可能性が
高いと思います。

一方でこの世界二大中銀による無制限な流動性供給は、
近い将来の世界経済にとって、大きなリスク要因となる
可能性も意識しておくべきでしょう。

異常に膨張したマネーは、実体経済のなか行き場を探して
アチコチ流れ込み、あるいは流れだし・・・そしてその都度起きる
局所的なバブルとその崩壊・・・小さなものは単純な相場の乱高下で終わるが、
そのうちの規模の大きなものは、相場の乱高下という範疇を超え、
金融システムそのものに損傷を加えるに至る。

1990年代後半の我が国、2008年の米国、2009年以来の欧州・・

これら地域で起きた金融不安の根っこにあるものは共通であり、
いずれも実体経済に対するマネーの際限ない増殖という、
危ういアンバランスの帰結ではなかったでしょうか。

危機からの脱出のため、
さらに危機が起きやすい状況を招く・・・
このように物事が循環的に起きるとき、
私たちは注意しなくてはなりません。

今回の欧米当局による無制限な流動性供給が、
そのまま危機に結びつくとは申しませんが、
徐々に世界の危機の振幅は、大きくなってゆかざるを
得ないのではないでしょうか。

ペーパマネーに対して一定の現物資産を保有し続けること、
なおかつ決してバブル化の過程では手を出さないこと、
さらに地理的な分散を常に意識しておくこと・・・


個人投資家にできることは、
たくさんあると僕は思います。



では、今回はこのへんで。


(2012年9月18日)



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