■相続か、生前贈与か
みなさんこんにちは。
僕は昨年50歳になりました。
世代としてはいわゆる団塊の世代の一回り下で、
ちょうどお金持ちの高齢者層と、
ちょっと可哀そうな若者世代にはさまれて、
両方の立場が実感できる世代のような気がします。
1980年代までの日本の成長期に資産を形成しおえ、
ストック・ベースで潤沢なお金をもち、
さらに手厚い社会保障によって、フローのベース
でもお金に恵まれている高齢者層・・・
これに対して僕より下の若年者層は、ストックの面でも
フローの面でも大変気の毒だと思います。
その責任の一端がたとえ彼らにあるとしてもごく僅かで、
責任の大半は本来僕らやその上の世代が負うべきもの
のような気がします。
むかしは「子孫に美田を残さず」といい、
子や孫の代にお金を残すことは良くないことだという
考えもありましたが、わずか一世代の間にここまで
極端な経済格差が生じてしまうと、あながちそうとばかりは
言えないように思います。
できるだけ多くのお金を子供や孫に遺したいという気持ちは、
単に親としての心情にとどまらず、それ以上に
『世代間に生じた経済的格差の補正』といった合理性を
持っているのではないでしょうか。
一方で遠い将来の相続について考えますと、
多額のお金を残す可能性のある人ほど、また深い悩みを
抱えてしまうと言ってよいかもしれません。
たとえば相続にかかる税金の悩みです。
ご存知のように相続税は累進性が強く、
相続する財産が大きいほど、高い率の税金を支払わなければ
なりません。
しかも将来の我が国の財政事情や、
高齢者世帯に偏在する金融資産など考えますと、
相続税の基礎控除はますます小さくなり、一方で
相続税の税率はますます累進性が高くなるとみておくべきでしょう。
さらに高齢化の進展によって、必然的に相続の時期もうしろにずれ、
相続によって親の財産を譲りうけるのは、子供が老境にさしかかり、
お金の需要が小さくなってから・・このようなことも珍しくは
無くなってきました。
この2大問題に対する一つの解決策として生前贈与という選択肢が
注目されつつあるのは、ある意味で必然といってよいでしょう。
贈与は相続と違って親が自らの意志で時期を選ぶことができます、
従って子の世代が最もお金のニーズが高いときにむけ、
計画的に資産の移転を実行することができるわけです。
また親自身のライフプランをしっかりと立てることにより、
贈与する金額を合理的に計算することもできます。
さらに贈与は相続と違って、いくつかの税制上の優遇が
あります。
例えば生前贈与には毎年110万円の非課税枠があります。
多額の財産を贈与するには適していませんが、それでも
計画的に相続税を少なくすることはできます。
あるいは相続時精算課税制度を活用してもよいでしょう。
生前に2500万円までの資産なら非課税で贈与できますし、
それを超えた部分も一律20%の課税ですみます。
特に賃貸不動産など収益を生む資産を贈与した場合、
生前贈与以降に発生した収益は、子供の資産に移り、
相続財産から分離することもできます。
以上のような点まで考えて、生前贈与には
・いくら贈与するか
・暦年課税と相続時精算課税のどちらを選ぶか
・どのような形態で贈与するか
という計画的発想が求められるといってよいでしょう。
ただしここでいう『どのような形態で贈与するか』については、
少し説明がいるかもしれません。
贈与にせよ相続にせよ、次世代にどんな形で譲り渡すかに
よって、支払う税金が大きく異なります。
例えば現金はそのままの金額で、
株や債券、投信などはおおざっぱに申し上げれば時価での評価です。
従ってこれら資産には評価の圧縮効果はありません。
これに対し賃貸用不動産という形で贈与する場合、
財産の評価は(一般に三分の一から半分以下程度に)圧縮され、
現金や株式などで贈与する場合に比べ、圧倒的に有利だと言えます。
従ってあらかじめ「どのような形態で贈与するか」について
考えておくことは極めて大きな意味があるわけです。
逆に申し上げれば相続と違い贈与は計画的かつ戦略的な
発想が求められているといってよいのではないでしょうか。
いずれにしても次世代への資産の引き継ぎに贈与を使う場合、
上記のような”ひと工夫”が大切なわけです。
では、今回はこのへんで。
(2012年10月2日)
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