■天秤はどちらに振れるのか
みなさんこんにちは。
成長することによって維持できた体制は、
成長が止まるとどうなるのか・・・
最近私は時々考えます。
本来人は、それが公の場であっても、
また日常の生活のなかであっても、
自由に発言し、かつ自由にふるまうことが自然の姿では
ないでしょうか。
ただしそこには自ずと道徳心や倫理観といった、
自分自身の内面からくる抑制の心があるはずです。
あるいは法律や社会的規範といった、外部から受ける
抑止力もあるでしょう。
このように自身の内外からの制御を受け、
決して完全に自由というわけにはゆきません。
つまりこのような葛藤のなかで、人は日常を送っていると
いってよいのではないでしょうか。
その点で私たちのような自由主義の国に生きる人間も、
全くストレスがないとは言えません。
このストレスは人が文明化された社会で生きてゆくなかで、
やむを得ない精神的負担の一つといえるのではないでしょうか。
ただしお隣の中国の場合、少々事情が異なります。
例えば公の場で、ある種のテーマについて自由な発言ができない
という極端な状況。
あるいは最近ではネットの登場により日々の生活は格段に便利になる反面、
公私の境目が不明瞭になり、ネット経由の私的な発言や会話すら、
ストレスなしでは行えないという皮肉な状況も生まれて
いるようです。
そもそも自由な発言や行動における自由は、
人間が生まれながらにして持っている、いわば天性であるがゆえ、
この種の制限が一般の市民にとって、相当大きな負担になって
いることは想像に難くありません。おそらくかの国の一般市民が
日常的に受ける精神的圧迫感は、私たちが想像するよりよほど
大きなものなのではないでしょうか。
端的な例として「一人っ子政策」を挙げることができると
思います。
人間にとって子をなすという行為は、
そもそも他の誰かによって制限を加えられる類(たぐい)の
行為なのでしょうか。
はたして人間は、国家がそこまで個人の生活に立ち入ることを
受け入れられるものなのでしょうか・・・
少なくとも私は現代社会において、国民が子をなす行為にまで
立ち入る国家をほかに知りません。
裏を返せばそれほど大きな統治力を持って、中国という国家は、
国民と向き合っているといってよいでしょう。
では彼らはなぜこれほどまで大きな政府を受け入れ、
そして60年以上の長期にわたり支持し続けているのでしょうか。
私はひとえに経済的な発展にあると思います。
国民一人一人が経済的な繁栄と、自由の制限を天秤にかけ、
その軽重を量って生きているのではないでしょうか。
そして今のところ経済的繁栄によって受ける便益が、
不利益を上回っている・・・このように判断しているのだと思います。
さてその隣国の経済成長です。
最近ではやや陰りが見えはじめ、
直近の経済成長率は7.4%までスローダウンしました。
今後急減速することはないとみられていますが、
それでもかつてのような成長はもうないでしょう。
その時彼らの心の天秤はどちらに振れるのか・・・
この帰結の影響は隣国に住む私たちにとって計り知れません。
そろそろいくつかのシナリオについて想定しておくべきかも
知れませんね。
では、今回はこのへんで。
(2012年10月23日)
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