円高阻止と放漫財政のはざ間で・・

みなさんこんにちは。

10月31日に開かれた日銀の金融政策決定会合は、
大変意義のある内容だったと思います。

以下内容について少しみておきましょう。

まず11兆円の追加緩和が決まりました。

9月に続き2回連続の緩和は異例ではありますが、
今回の追加緩和に関しては、すでに市場は織り込み済み、
この点に関しては想定通りだったといえるでしょう。

二つ目の決定は「貸出支援基金」の創設。

簡単にいえば「民間の銀行が行う融資を、丸抱えかつ
青天井で日銀が面倒みる」ということでしょう。

ただし日本国内には、既に十二分に低利のマネーが供給されており、
効果は限定的だとみてよいでしょう。

したがって日銀の本来の狙いは、「国内銀行を経由した
海外への円の放出」で、そのこころは「円安誘導」ではない
でしょうか。

そして三つ目にして最も重要なポイントは、
『政府・日銀の共同文書』の発表です。

1998年の日銀法改正以来、政府と日銀が共同で
文書を発表するということはありませんでした。

また世界的にみて中央銀行と政府が、
このような形で共同歩調をとるのも異例だと思います。

政治には常に財政を膨らませたいという欲求があり、
彼らは常に日銀を財布代わりに使いたい誘惑に駆られている
といえるでしょう。なにしろ日銀は通貨を発行できる唯一の
主体ですので。

逆にいえば日銀にとって、政府による関与からの解放は、
その政策遂行上極めて重要な意味合いを持っているわけです。

にもかかわらず、上記の共同文書には以下のように書かれています。

『政府と日銀が一体となって(デフレからの脱却という)課題の
達成に最大限の努力』を行う。

この文言通り「政府と日銀が一体」になるなら、日銀の独立性は
損なわれ、例えばデフレ阻止を目的に、日銀は無制限な国債の
購入を迫られることになりはしないでしょうか。

日銀の白川さんも、今回の文書の発表に際して
随分悩まれたに違いありません。

「確かにデフレは止めなくてはならない・・でも
こんなことで政府からの独立性を維持できるのだろうか・・」

「一歩の譲歩は、将来の百歩の譲歩につながる、
そこはしっかりと世論に伝えなくてはならない・・」

白川さんの心の声が聞こえてくるような気がいたします。

日銀による国債購入は、以前から金融緩和の手段として
行われていますし、円の価値の希薄化を通じ、デフレ退治や
円安誘導の効果も期待できます。

ただし「政府と日銀が一体」は未踏の領域で、一歩間違えば
日銀の独立性が危うくする際どい選択肢でもあります。その点で
日銀の勇気は大いに評価されるべきではないでしょうか。

市場から見ても意外感があり、少なくとも前回の決定会合以来、
特に海外勢にとって、円をこれ以上買いにくい状況を
作っていると思います。もちろん日銀がこれからどのような施策
を打つかを、彼らは見極めようとするでしょうが・・・

一方で、日銀の政策決定に政府が強く関与し、
その結果たとえばかつて戦時中のように、
日銀に国債を引き受けさせるようなことがあれば、
これはまたいつか来た道です。その行き着く先は超円安と

ハイパーインフレということになるでしょう。


そもそも政治が自ら財政を緊縮させようとする意志は
希薄ですので、この点は注意してみておく必要があるのでは
ないでしょうか。


では、今回はこのへんで。

(2012年11月6日)



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