止めろ円高ーその4

みなさんこんにちは。

ここのところ我が国の製造業は元気がないですね。
特にエレクトロニクス産業がいけません。

松下、ソニー、シャープ、富士通、NEC・・・

かつて世界を技術で席巻した彼らも見る影はなく、
直近の上期業績はまったくひどいものでした。

松下400円、ソニー800円、シャープ150円、
株価をみてもさんざんですね。まるで何十年かまえに
タイムスリップしたかのようです。

思い出話しをいたしますと、ちょうど2000年あたり
だったでしょうか・・・米国発のITバブルさなかの
お話しです。

私が当時勤務していたソニーの株価は20,000円を超え、
マスコミにコメントを求められた当時の社長の出井さんは、
ひとこと「不愉快だ!」、とはき捨てるように応えました。

きっと実力以上に評価された自社の株価に対し、
自らを戒める気持ちもあったのでしょう。

今となっては古き良き時代の思い出です・・・

一方でいまをときめく韓国や中国の同業者はといいますと、
サムスンはスマホでアップルと張り合い、かつての日本の
同業者は既に眼中にないかのよう。

中国ではハイアールが元気で、そのむかし技術協力をうけた
我がサンヨーの家電ブランドを、買収してしまいました。
ビックカメラの店頭で、Aquaブランドのハイアール洗濯機を
みるにつけ、僕は複雑な気持ちになってしまいます。

一方で僕などは、やや負け惜しみながらも
こんなふうに考えてしまいます。

CDを創り、MDを創り、ハンディカムを創り、
そしてそのハンディカムに液晶ディスプレイをつけ、
青色LEDを創り、そのLEDを使った白色蛍光灯を創り・・・

特に1980年代以降の我が国製造業の技術開発力は
すさまじく、世界中の人々の生活を随分便利なものに
してきました。

これに対して韓国メーカーにしろ、中国メーカーにしろ、
世界の技術の進歩に対して、いったいどのような
貢献をしてきたのか・・確かに安いものを大量に作ることは
いいことですが、それは彼らがやらなくても、いずれ誰かが
やるでしょう。

彼らは安い人件費や人為的に有利に設定された為替レートを
利用し、我が国のメーカーが築いた技術基盤のうえで、
その果実を享受しているだけなのではないか・・・

人件費の問題は人為的とは言えまず、我々がとやかく
いう筋合いの問題ではありませんが、適正な為替レートについては、
我が国はもっと主張してよいのではないでしょうか。

もちろん私も日本の製造業衰退の理由が、すべて為替レートの
ハンデにあるとは思っていません。

例えば行政による規制、法人税の高さ、電気料金の問題など
よく言われる六重苦に加え、長年の成功による慢心や、
社内のチャレンジ精神の欠如、経営判断の遅さなど、
メンタルな面での劣化も、衰退の原因として挙げておく
べきでしょう。

ただ仮にそれらの要素がすべて取りのぞかれたとしても、
為替上の不公正な競争条件をカバーすることは、
決してできないと私は思います。

現在の円高、特に対ウォン、対人民元での円高は、
それほど深刻な影響を、我が国の製造業に及ぼしていると
私は思っています。

ご参考までに1970年を100とした場合、現在の円の
名目実効為替レートは450、これに対し韓国ウォンの
それは15にすぎません(注)。

注)国際決済銀行による

つまり当時と比較するとウォンに対し、名目で円は30倍も
高くなっているわけで、いくら40年という時の経過を
加味しても、これはもう一企業による努力の
範囲を超えているといってよいでしょう。

あるいは中国の人民元に関しても同様で、
IMFによれば現在の人民元は、購買力平価に対し3割がた安く、
これに対し日本円は3割がた高く評価されているとされています。

つまりここでも競争力において、おおざっまに約2倍のハンデを
背負わされているといってよいでしょう。

ウォンにしろ人民元にしろ、いまは為替介入を思うがままに
実行していますが、それはいわば新興国であるがゆえ、
大目にみられてきたからでしょう。

ただし既に彼らは経済大国を自称するまでに成長し、
国際舞台でもそれに見合った振る舞いを見せています。

このような環境において、果たして人為的に設定された
レートによって、我が国の基幹産業が、産業ごと衰退に追い込まれる
ような状況を放置してよいものでしょうか。

しかも彼らは長きにわたり、その高い技術力によって
世界に利便性を供給し続けてきましたし、おそらく
不利な為替レートのハンデがなければ、今後も同様の
貢献を続けるはずです。

このように考えますと、現在の不公正な為替レートの
ありようは、単に我が国経済の問題にとどまらず、大げさに
申し上げれば、彼らの製品を利用する側にとっても、
大きな機会損失になるのではないでしょうか。

そのような観点からも、私たちはもっと公正な
為替レートの設定を、世界に訴えるべきではないかと
思います。



では、今回はこのへんで。

(2012年11月20日)



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