おおむかしのこと、これからのこと

みなさんこんにちは。

中国の文化的、経済的な頂点の一つは、
おそらく紀元前700年ごろから同200年ごろにかけての、
いわゆる春秋戦国時代ではなかったでしょうか。

世界を見渡しても、おそらく当時の中国は、
ギリシャを中心とした地中海沿岸部と並び、
世界最高峰の文化水準、経済水準にあったことは
まちがいないでしょう。

その後の中国はといいますと、例えば前漢の時代や
唐の時代、あるいは清朝の中期まで、確かに世界の
超大国の一角であった時代もありますが、さきほどの
春秋戦国の時代と比べればどうでしょうか。

特に科学技術や文化の水準という点で、
かつての春秋戦国時代のような圧倒的な
存在感を、その後現在に至るまでの中国に、
私たちは見ることができません。

ではなぜ当時の中国は、そのような圧倒的な国力を
持ちえたのでしょうか。

その最大の理由は、国家間の競争にあったと
私は思います。

当時中国はいくつもの小国に分かれ、
ときに合従し、ときに連衡し、覇権を競りあっていました。

地域ごとに分立した小国が競りあうことにより、
文化的にも経済的にも、より高いところに到達できた
といえるのではないでしょうか。

一方でその後の中国の歴史をみるとどうでしょうか。

一時的にいくつかの地方政権が並立する時代はありましたが、
それは長い歴史のなかのごく一時代のこと、基本的に
春秋戦国以降の中国は、全土を統一した政権によって統治されて
きたといえるでしょう。

中国は一つの国にまとまり続けたがゆえに、
国家間の競争がなくなり、かえって成長性が
阻害されてきたという見方もできるのではないでしょうか。

思えば皮肉なものです。

もしその見方が正しいとすれば、
そのことは果たして中国にとって良かったのかどうか・・

特に19世紀半ば以降、欧州の強国や我が国によって、
その国土を蹂躙された悲しい歴史をみるにつけ、
私は少し複雑な気持ちになってしまいます。

ではなぜ侵略した側のヨーロッパで分裂状態が続き、
一方の中国は国家の統一が維持されたのでしょうか。

もちろんいくつもの理由があると思いますが、
その最大のものは意外と地形の違いという、
ごくシンプルな理由にあるのではないかと私は思います。

中国大陸は起伏に乏しく、特に東側半分には、
国土を分断するような大きな障害物は見当たりません。

軍隊の移動を人力によっていた近代以前において、
このことは中国の全土統一を、容易なものにしたのでは
ないでしょうか。

これに対してヨーロッパはどうでしょうか。

スペインとフランスの間にはピレネー山脈が横たわり、
南方にある長靴の形をした半島は、アルプス山脈によって
根元が通せんぼされた格好になっています。

北のほうをみますと、大陸欧州から離れてイギリスが
海の中にあり、そのお隣はスカンジナビア半島で、
これまた見るからに制圧が難しそうな形状です。

近代以前はこのような複雑な地形が統一国家の
誕生を妨げたであろうことは想像に難くなく、
そのことがヨーロッパ域内の小国分立の一因となり、
結果的にこの地域の高度な文明形成の、要因の一つ
となってきたのではないでしょうか。

一方で国土の統一が容易だった中国は、
域内の競争が希薄で、その結果、徐々に国家としての
相対的な競争力が衰えた・・・

このような推測はあってよいのではないでしょうか。

そのような観点で、いまのヨーロッパを
みるとどうでしょうか。

古代や中世の遠いむかしと違って、近代以降の戦争は、
不幸なことに当事者双方および周辺国に、致命傷を
与えるほどの破壊力をもってしまいました。

現在欧州では統合に向け試行錯誤の最中ですが、
彼らは無意識のうちに(あるいは意識的に)競合による
成長を犠牲にして、平和を選択したのかもしれませんね。

だとすればその行き着く先は、
どこでしょうか・・

ヨーロッパ単独の地盤沈下なのか。

それともいずれ世界のあちこちが、ヨーロッパにならって
低成長と平和を融合させた、より競争の少ない広域の
共同体を作るのか・・

欧州の統合は、そのような意味で大いに注目すべき実験で、
その行方は私たちにとっても重要な
意味をもつのかもしれません。

いま進行しつつある欧州債務危機は、
そのような視点でも見ておく必要があると
私は思います。



では、今回はこのへんで。

(2012年11月27日)



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