パラジウムという金属

みなさんこんにちは。

パラジウムという金属は、プラチナ(白金)と同じく、
白金族の貴金属です。

ジュエリーとしてなじみが深いプラチナと違って、
パラジウムをよくご存じなのは、せいぜい歯医者さんぐらい
ではないでしょうか。

さてこのパラジウム、その性質は
親戚の白金とよく似たところがあります。

私は以前からプラチナのことを、勝手に『偏りの金属』と
呼んでいるのですが、パラジウムもプラチナと同じく、
かなり偏りの激しい金属です。

例えば2011年のパラジウムの需要をみてみますと

□自動車の触媒(約71.4%)
□電子機器の材料(約16.3%)
□歯科(約6.5%)
□化学製品の材料(約5.2%)
□宝飾用途(約6.0%)
□投資(△約6.7%)
□ほか(約1.3%)

注)ジョンソン・マッセー社 「Platinum 2012」より

となっております、ここで「投資」がマイナスになって
いますのは、主にETFからの流出によるものです。

ご覧いただいておわかりのように、自動車の触媒用途が
圧倒的に多く、用途全体の70%以上を占めています。

親戚すじのプラチナも、パラジウム同様に触媒用途が
40%近くありますが、その内訳をみると

・ディーゼル・エンジン車⇒プラチナ、
・ガソリン車⇒パラジウム、

というように明確に住み分けされており、
その点には注意が必要です。

さらに申し上げればディーゼル・エンジン車は主に
欧州で製造されており、ガソリン車はそれ以外の大半の地域で
生産されています。

従って需要面から見ますと、プラチナ相場は欧州の景気との
相関性が高く、パラジウムはそれ以外の地域、特に
北米や新興国などの景気と相関性が高いといえるわけです。

一方で供給をみておきます。

供給面においてもパラジウムは『偏りの金属』と
いってよいでしょう。

以下は2011年の地域別供給です。

□ロシア(47.2%)
□南アフリカ(34.8%)
□北米(12.2%)
□ジンバブエ(3.6%)
□ほか(2.2%)

注)同上

ここで注意が必要なのはロシアからの供給です。
ロシアは昔からパラジウムを国家が備蓄しており、
徐々に市場に放出して参りました。

例えば直近2011年をみますと、ロシアからの供給は
約108トンでしたが、そのうち約24トンは国家備蓄
からの放出分でした。

問題は今後もこの放出が続くか否かという点ですが、
その点に関して申し上げますと、かなり不透明な状況だと
いってよいでしょう。

同国の備蓄は既に枯渇気味といわれており、
今後徐々に放出を抑制してゆくとの見方もあります。

ご参考までに以下は同国の国家備蓄からの、
放出量の推移です。

・2007年 約46.3トン
・2008年 約29.9トン
・2009年 約29.9トン
・2010年 約31.1トン
・2011年 約24.1トン

注)同上

なお、ジョンソン・マッセーの見通しによりますと、
2012年(今年)のロシアの国家備蓄放出量は、2011年比で
1/3程度の8トン程度に落ち込むとのこと。

これを踏まえ、同社は2012年の世界全体の供給量を、
約204トンと予想していますが、これは2011年供給量229トン
に対して約10%の減少となります。

つまり世界の供給にとって、ロシアの国家備蓄放出が
大きな焦点になるといえるでしょう。

仮にロシアからの供給増が期待できない場合どうでしょうか、
一方の供給の雄である南アフリカでも、鉱山のストライキや
電力供給の問題から、劇的な生産回復は考えにくいと
思います。

2011年のようなETFからの流出がなければ、世界全体の
供給量は増えないとみておくべきではないでしょうか。

一方で需要のほうはどうでしょうか。

冒頭でパラジウムの需要の約70%は、ガソリン車の
触媒用途だと申しました。

そのガソリン車の生産見通しはどうでしょうか。

来年は北米や新興国中心に、ガソリン車の生産が
緩やかに増えると予想されています。

中国経済はやや減速気味ではありますが、どうやら7-9月期に
底を打ったように見えます。中国の自動車販売には
大きくは期待できませんが、それでも来年は年間で10%以上
増えるとの見通しが多いようです。

ご参考までに、ここ数年のパラジウムの自動車触媒需要
推移を紹介させていただきます。

・2007年 約141.3トン
・2008年 約138.9トン
・2009年 約126.0トン
・2010年 約173.5トン
・2011年 約187.5トン

リーマン・ショックの2008年、翌年の2009年は大きく
落ち込みましたが、その後急回復しております。

来年も緩やかながらも増加するのではないでしょうか。

このように見てまりますと、ロシアの国家備蓄放出
という不透明要因があり、さらにはそれ以外の供給増は期待できず、
一方で需要のほうは緩やかな増加・・・これが来年の
パラジウム需給の傾向のような気がいたします。

目先のパラジウム相場にとって、あえて不安な点を指摘すれば、
2011年のようなETFからの流出でしょうか・・・、確かに
パラジウム価格が高騰するようなことがあれば、短期資金による
利益確定の売りも想定しておく必要はあると思います。

ただし2011年ETFマネーがパラジウムを売った当時の
価格は1オンス=850ドルあたり、それに対し現在の相場は
1オンス=680ドル近辺です。

まだ多少の糊代はあるのではないでしょうか。

先日のジョンソン・マッセー社の見通し発表以来、
相場は既に上昇傾向にありますが、
パラジウムは来年も引き続き面白いと思いますよ・・・



では、今回はこのへんで。

(2012年12月4日)



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