2013年型ポートフォリオを考える

あけましておめでとうございます。
今年もご愛読どうぞよろしくお願いいたします。

さて今回は、恒例の今年の相場と推奨ポートフォリオに
ついてお話ししたいと思います。

ただ誠に申し訳ないのですが、書いていますと昨年のように
長くなってしまいまして、お時間のない方にはご迷惑の
ような気がいたしました。お忙しい方は前半を読み飛ばして
頂き、★★★★部分以降だけをお読み頂いても問題ございません。

ではまず今年の世界経済に関するお話しから
始めさせていただきます。


□2013年の世界経済の予想


ヒトの感覚というものは不思議なものですね・・・

短期間で起きる変化には敏感に反応しますが、
時間をかけて起きる変化に対しては鈍感なよう。

例えば昨年の今頃の世界を振り返るとどうでしょうか。
年明けには大量のギリシャ国債の償還が迫っており、
ユーロ危機が強く意識されていました。

米国の住宅価格も下げ止まらず、家計のバランスシートの
改善も緩やかでした。さらには雇用環境もイマイチで、
ひいき目に見ても緩やかな改善が精いっぱいといったところでした。

新興国に目を転じますと、中国の経済は急速に失速し、
なかには2012年中にハードランディングするという
悲観的な見方すらあったものです。

そういえば近々1ドル=50円になるなどという、
我々日本人からみると有難くない予想もよく目に
したっけ・・・

つまり一言でいえば昨年の今頃は不安だらけ、
厳しい一年を予想させる年初だったといってよいでしょう。

それに比べて、今年のスタートはどうでしょうか。

確かにユーロ問題も解消というわけではありませんが、
少なくとも欧州は昨年一年かけ、いくつかの安全網の
構築(もしくはその準備)を行ってきました。

ECBによる無制限な国債購入、ESMの創立、銀行監督の
一元化準備・・・その動きは決して迅速とは言えませんが、
欧州のこの一年の努力を過小評価すべきではないでしょう。

欧州問題は収束したとは言えませんが、少なくとも昨年の
今頃に比べ、あきらかに危機の振幅は小さくなってきていると
思います。今年一年というスパンでみても同様で、ユーロ問題は
徐々に収束の方向といってよいでしょう。

世界経済を見渡して、ほかに大きな問題として米国の
財政問題を挙げることができるでしょう。

かろうじて昨年末から今年の年初にかけ、例の「財政の崖」
問題は先送りに成功しました。が、その「先」が早くもまじかに
迫っており、来月末には再び緊迫化するとの見方が大勢です。

私はこの問題を決して楽観しているわけではありませんが、
この問題の本質が『政治的な駆け引き』である限り、その
決着もまた政治的にできるはずです。従って私はこの問題が、
今年の実体経済に大きな影響を与えるとは考えておりません。

このように欧州の債務問題と米国の財政問題は、
確かに世界経済にとって不安材料ではありますが、
先ほど申しましたように、昨年の今頃とくらべると
どうでしょうか。

私は明らかに世界経済は明るさを増している
ように思うわけです。

ただし今年の世界経済を見渡した場合、その明るさが
かえって(特に年の後半の)波乱要因となるかもしれません。

米国をはじめ先進国では、中央銀行によって極端な
金融緩和政策がとられているのはご存知の通りですが、
その究極の目的(注)は経済の安定にあります。

注)国によって中銀の政策目標は異なりますが、
  広い意味での目標という意味です。

仮に経済が安定し、目標達成が視野に入ってくると
どうでしょうか・・・例えば米国にあてはめますと
失業率が6.5%を切り、インフレ率が2%を超えてくる、
このようなイメージです。

FRBはリーマン・ショック以降長らく続けてきた
金融緩和策の出口を探すことになるでしょう。

このような世界で株はどう動くのか、
コモディティはどう動くのか、
債券や不動産はどう動くのか・・・

今年一年の相場を考えた場合、米国QE後を見据えた
運用戦略を立てておくべきだ思いますし、それが今年の
最大のテーマになるのではないでしょうか。


詳細はこのメルマガの
後半でお話ししたいと思います。


□地域別にみた経済は・・・

続いて世界経済を少し地域別に予想してみたいと思います。

まず米国からです。

先ほど申しましたように、『財政の崖』問題は
先送りされたにすぎませんが、それでも最終的には、
『坂』程度で折り合うとみております。

『坂』といえども増税であり、それ自体は決して経済に
プラスではありません。が、昨年春以来続く住宅価格の
上昇や、緩やかながらも続く雇用の改善は、個人消費に
とって追い風です。企業業績も拡大持続が見込め、米国経済は
今年も緩やかな回復とみております。

一方で先ほども申しましたが、年の後半に入ってまいりますと、
いよいよQE停止が視野に入ってくるかもしれません。米国の
失業率が年内に6.5%を安定して下回ることはないとは
思いますが、相場は常に先を嗅ぎわけるもの・・・
年の半ばには市場はQE停止を織り込み始めるかもしれません。

続いて欧州です。

欧州経済は信用不安による振動は小さくなりますが、
それでも収束には至らないでしょう。実体経済をみても、
財政的な緊縮が強いられる南欧諸国はマイナス成長が
続き、欧州全体でみれば相変わらずゼロ近傍の成長に
とどまるのではないでしょうか。ただし危機のレベルが
下がる分、ユーロはやや買われる方向でしょう。

中国はどうでしょうか。

春に発足する新政権は、それなりに経済成長へ
配慮するはずです。

ただし不動産価格が既に再上昇の傾向にあり、金融緩和や
マーケットへの流動性の供給は選択肢にならないでしょう。

一方で農村部と都市部の所得格差は深刻な社内問題となって
おり、当局の経済政策は、経済の浮揚効果と所得格差問題を
同時に実現する方向で策定されるとみております。

つまり例えば都市部のインフラ整備や環境対策、
あるいは低所得者に対する家電や自動車購入に対する
補助金などです。

中国の場合財政的にはまだ余裕がありますし、
企業業績改善による税収増も見込めます。

新政権では積極的な財政出動によって、
経済は比較的高い成長を維持できるのではないかと
思います、少なくとも今年いっぱいは・・・

年率で8%台前半の成長とみております。

今年は日本も見ておきましょう。

我が国の経済は昨年末から久々にいい感じに
なってきましたね。経済的にはまだ何の政策も実施に移して
いるわけではないのに、株は上がり円は下がり・・・

ここ数ヶ月のうちに個人の資産は増え、それが早くも
消費に回り始めた・・・

まずはそんなところではないでしょうか。
「景気は気からと」と申しますが、いままさに
その典型を目にしているような気がいたします。

これを経済学的に表現しますと「市場の期待に働きかける
政策」ということになります。

なかには金融政策だけで実体経済は好転しないと
おっしゃる方もおいでですが、私は「景気は気から」派です。

ただしそれはあくまで一年やそこいらの短期の
お話しで、長期的には規制改革や社会保険改革などの
制度改革を併せて実施しないと、単なるミニバブル的お祭りに
終わり、あとは借金のヤマということになりかねません。

でも今年一年というスパンで見るなら、それは別の
次元の問題。

2014年3月期の企業業績は20%程度の増益と
みられていましたが、さらに昨年末以来の円安効果が加わり、
増益率はさらに上積みされる可能性が高いでしょう。

仮に円安効果が10%だとすれば30%程度の増益、
PERが15倍程度だとすれば日経平均12,000円があっても
不思議ではありません。

最後にその他地域です。

他の地域では昨年に続きASEANに注目しております。
輸出依存度が高い中国経済がマズマズ、ほかに日米経済も
緩やかな回復継続ということであれば、ASEANは今年も
比較的高い経済成長を維持できるのではないでしょうか。

ベトナム、インドネシア、タイ、フィリピンなど、既に株価は
過去最高値近辺で推移していますが、それでも私はまだ
伸びシロが高いと思っています。



★★★★



□相場予想

まず株式から予想してみたいと思います。

冒頭申し上げましたが、私は米国のQE停止が今年の相場の大きな
テーマになると思います。

では市場が米国QE停止を織り込み始めると、
株価はどう動くのでしょうか。

QE停止は米国の経済が安定軌道に入ったことを市場に
印象づけますので、市場の動きはリスク追及のほうに
傾くでしょう。

債券は売られ(金利は上がり)、株は買われる。
コモディティはマチマチ・・・金のように産業用途の
小さなものは売られ、非鉄金属やエネルギーなど
産業用のセクターは買われることになるでしょう。

株だけをみれば、米国のQE停止はカイの材料
とみておくべきでしょう。

加えて前段のように世界の実体経済をみても、
私は欧州以外は比較的堅調と予想しており、
そのような観点からも株式に対しては強気でみております。

エリアとしては中国A株、ASEAN、米国、日本株、ブラジル
あたりに注目しております。

続いてコモディティです。

今年の国際商品相場の二大テーマは

・米国のQE停止
・世界の実体経済の好転

ではないかと思います、それに北半球の天候を加えて
もいいかもしれません。

先ほど申しましたように、米国のQE停止による影響は、
国際商品相場にとって決して一様ではありません。

例えば米ドルに対する信認低下によって買われている
金(Gold)はどうでしょうか。QE停止は米ドルの信認回復と
同義であり、その観点から金は売られやすい環境になるでしょう。

ただ金の価格決定要因は複雑です。例えば現物の大量消費地
であるインドと中国の経済がマズマズなら、それは金にとって良い
材料です。彼らは安くなったところを買う、つまり逆バリの行動
をとる傾向が強く、例えば1オンス=1600ドル割れは彼らにとって
よい買い場に見えるでしょう。

ですから経済の回復過程における金の下値余地は、
それほど大きいとは思いません。

あえて数字を挙げさせて頂くとすれば、下は1500ドル
から上は1800ドルまで、上のほうの1800ドルがあるとすれば、
QE停止を市場が織り込む前、即ち第一四半期ではないでしょうか。

ただし長期投資志向の方にとって、1500ドル割れは
絶好の機会になると思います。世界はこの先も危機を
繰り返し経験することになるでしょうから・・・

欧州の次は米国か、日本か・・・それとも今度は中国か。

同じ貴金属でもプラチナは面白いでしょう。
ここしばらく欧州不安によって敬遠されてきましたが、欧州経済に
回復感が漂って参りますと、マネーのプラチナ回帰があっても
よいでしょう。年の後半に近づくにしたがって相場は上昇する
とみております。悲願のプラチナ>金(Gold)復帰も、ことしは
いよいよ視野に入ってくると思います。いずれにしても
プラチナの復活を我慢強く持ちたいと思います。

銀もいいと思いますよ。多少金に引っ張られて不安定な
値動きをするという点では覚悟が要りますが、金と違って
産業用途が多く、少なくとも金よりはいいと思っています。

貴金属で注目したいのはパラジウムです。
昨年は供給が需要を下回る状態になりましたが、
ロシアの国家備蓄枯渇の憶測や、需要面でも世界的な
ガソリン車生産増加といったプラス材料が豊富です。

昨年の11月以来、すでにパラジウムは動意づいている
ようにみえますが、今年は大いに期待したいところです。
あえて具体的な相場圏については申しません。

貴金属以外では非鉄金属に注目しております。
米国の住宅建設が回復、世界の自動車販売が拡大、
中国のインフラ投資が活況ということになれば、銅や
アルミニウム、亜鉛など非鉄金属の需要は増えます。

昨年は中国の消費減少などから、さえない動きが
続きましたが、今年は非鉄金属にとって良い年になる
でしょう。

エネルギーもいいと思います。長期的にみれば
米国のシェール・ガスやシェール・オイル開発への
期待から原油は徐々に下げ安い環境に入ってゆくと思いますが、
今年一年の限定ということであれば、むしろ世界の経済成長拡大
期待を織り込みつつ、今年はしり上がりに上昇といった
ところでしょう。

一方で農産物、特に穀物に対しては強気になれません。
昨年は米国で起きた大干ばつなど、世界的に天候不順が
めだった一年となりましたが、今年はどうでしょうか・・・

まさにお天気まかせ・・軽々に予想を立て相場を張るのは
私は危険だと思います。しかも昨年夏以来の相場上昇の余韻が
市場には残っており、特にトウモロコシや大豆などは、
歴史的に見てまだ高値圏にあります。

仮にこのセクターに投資されるのでしたら、北半球の穀物の
受粉時期が終わり、収穫予想が確定する夏以降、それも
豊作予想から相場が急落した場面に限り、出動をお勧め
いたします。

最後に不動産。

米国の不動産は昨年春に底をうち、すでに明確な上昇過程に
入っております。が、2006年の高値水準からみると、相場に
過熱感は見られません。同国経済の緩やかな上昇を
想定するなら、相場はまだこれからではないでしょうか。

日本の不動産は都市部と郊外・地方のかい離がますます
明瞭になり、地方都市での不動産投資はお勧めできません。

一方で大都市圏での不動産投資、特に東京都内での投資は、
アジアの諸都市(香港、シンガポール、上海など)と比べ、
収益率という観点から割安感が漂っており、長期的にみて
良い投資になるのではないでしょうか。

一方でアジアの諸都市では、一般にやや過熱感がみられ、
流行にのっかった不動産投資は、しばらく見送られた
ほうが賢明でしょう。

以上少し長くなりましたが私の相場見通しでした。
最後に今年の推奨ポートフォリオについて、
以下まとめさせて頂きます。

毎年申し上げていますように、これは一つのサンプルで、
実際にはお一人お一人の経済状況やライフプランに
よって異なります。あくまで一つの考え方として
ご理解ください

□2013年型ポートフォリオ

・先進国株(10%)

1.米国株ETF
2.日本株ETF
3.非鉄金属等鉱山株ファンド

・新興国株(30%)

1.ASEAN株ファンド
2.中国A株ETF
3.インドネシア株ETF
4.ブラジル株ETF

・コモディティ関連資産(20%)

1.非鉄金属ETF
2.プラチナETF
3.パラジウムETF

・債券(0%)


・不動産系資産(20%)

1.日本不動産現物
2.米国不動産現物
3.日本REIT


・オルタナティブ(20%)

1.マネージド・フューチャーズ
2.収集用コイン(ベトナム、ブラジル、メキシコ)

全体的に今年は株やコモディティなど、サイクル性資産
のウエイトを10%高め60%といたしました。

内訳は株式が40%、コモディティが20%です。
株は例年以上に新興国のウエイトを上げ、全体の30%です。

新興国の株では昨年に引き続きASEAN株を筆頭にあげ
させて頂きました、あと逆張りの中国A株、出遅れ感がある
ブラジルとインドネシアです。これにベトナム株を加えても
いいでしょう。

先進国の株はQE停止狙いで米国株、安倍さんのお腹が
悪くならないという前提で円安期待の日本株です。
他に非鉄金属等の鉱山株も面白いと思います。

コモディティでは筆頭に非鉄金属のETF、続いてプラチナと
パラジウムのETFをあげさせて頂きました。これらは年初から
しり上がりの上昇と考えており、第一四半期で購入完了を
目指したいと思います。

債券は昨年に続いてゼロ。特に先進国の債券相場には
危うさを感じております。

不動産は日本と米国の現物不動産です。
日本のREITも悪くはないと思いますが、価格変動の激しさは
考えものですね・・・そもそも私たちの不動産への期待は
安定した家賃収入です。その対価として激しい価格変動を
受け入れるべきか否か・・・その点はお一人お一人の
ご判断にゆだねられるべきでしょう。

最後にオルタナティブです。2009年末以降繰り返し顕在化する
欧州不安・・・相場は都度リスクに対してオンとオフが反転し、
2009年以降、特にマネージド・フューチャーズにとって
厳しい日々が続きました。

さて今年もこの状態が続くのでしょうか。それとも欧州不安は
収束に向かい、相場の短期振動は小さくなってゆくのでしょうか。

私の考えは冒頭お話ししたように後者です。この場合、
トレンド・フォロー型運用のマネージド・フューチャーズに
とって、やや明るい見通しを立てることができるのでは
ないかと思っています。

他に注目しているのは収集用のコインです。
コインには国際相場があり、基本的にそれらはユーロで
あったり、スイスフランであったり、米ドルであったり
するわけで、決して円で値決めされているわけではありません。

昨年のコイン相場は、コインの本体価格の上昇もさることながら、
年末に起きた円安転換の影響をも同時に受け、我々日本人から
みた円建てのコイン価格は急騰の傾向にあります。

私は現時点の円ドル相場の実力値は1ドル=105円とみて
おります。今後時間をかけてその方向に移動と考えれば、
日本人にとって、この二重の収益機会はまだまだ健在では
ないかと思います。

もちろんコインは短期で儲けるといった性格の資産では
ありません。が、新規のマネーの投資先として、長期的にみて
有効な投資先ではないでしょうか。

5年前のロシアのコイン、一昨年の中国コイン・・既に
随分高くなってしまった銘柄もありますが、ベトナムや
ブラジル、あと今後は経済発展が見込めるメキシコあたり、
まだまだ面白いと思いますよ。



以上随分長くなってしまいました。

最後までお付き合いいただいた方は、さぞかし大変では
なかったでしょうか・・・ただ内容はなかなか濃いと思いますので、
近々投資される方は参考になさってみてください。


ご参考までに昨年の年初に配信させていただいた
メルマガは以下です、昨年も(手前みそながら)高い精度で
予想できたと思います。

2012年型ポートフォリオを考える(2012年1月12日配信)

最後になりましたが、今年一年の皆様の投資の成功を心より
お祈りしております。


では今年もご愛読よろしくお願いいたします。

(2013年1月10日)



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