■これ以上の円安はマイナスか
みなさんこんにちは。
昨年末以来の円安が続いていますね。
ただここ数日は、市場の雰囲気が少し変わって
きたように思います。
甘利さんや石破さんの「これ以上の円安は
日本経済にとってマイナス」的な発言が効いている
のでしょう。
日本政府はこれ以上の円安を望んでいないのでは
ないか・・市場はこのように疑い始めているのかも
しれません。
本当にこれ以上の円安は、日本経済にとって
マイナスなのでしょうか。
上記の立場をとる人たちのロジックは、
一般に以下のようなものではないでしょうか。
現在の日本は既に貿易赤字状態、即ち輸出額を輸入額が
上回った状態にある。
↓
このような状態で円安がさらに進めばどうなるか・・
まず円ベースでみた輸入品のコストが上がる。
↓
企業単位でみると(海外から調達する)原材料価格や、
(輸入依存度が高い)燃料費など製造コストが上昇し、
かえって業績に悪影響がでる。
↓
従ってこれ以上の円安は、日本国全体でみた場合でも、
マイナス効果となる。
・・・はたしてそうでしょうか?
私は上記のロジックには、明らかに抜け落ちている
ところがあると思います。
円安によって海外から輸入する原材料や、
エネルギーの価格が高くなるのは確かでしょう。
ただし一方で円安によって、輸出型産業の輸出数量は
どうなるでしょうか。
韓国や台湾など海外の競争相手に比べ、価格競争力が
高まりますので、輸出数量は増えることになるでしょう。
ここで問題になるのはその効果の多寡です。
例えばドルベースで単価が5%下がることによって、
どの程度の輸出数量の増加が見込めるのでしょうか。
もし5%の価格下落によって、5%の輸出数量の増加に
とどまるのであれば、企業の売上に対して円安は中立要因で
すね。
この場合企業の売り上げは増えず、結果的に上記ロジックのように、
原材料価格の上昇要因だけがマイナス効果として
残ることになるでしょう。
つまり日本企業全体を集計してみればマイナス・・・
従ってこれ以上の円安は日本経済全体でみてマイナス
ということになるはずです。
問題は5%の円安効果が、5%の売り上げ増に
とどまるか否か・・・
この点ではないかと思います。
国境をまたいだ他社との価格競争という場面で、
はたして5%の価格アドバンテージによって、5%の売り上げ数量
の増加にとどまるでしょうか。
既にネットへのアクセス容易性により、
世界の消費者の持っている情報は均一化しています。
大半の消費者は同じ機能の商品であれば、一円でも安い購入ルートを
既に確保しているといってよいでしょうし、今後もこの傾向は
さらに強まるとみておくべきでしょう。
このような社会では、例えば5%の価格のアドバンテージは
絶大な効果を持っており、場合によっては市場の総取り
だって不可能ではありません。
つまり5%の円安は、企業の販売数量を10%も20%も増やす
可能性があるといってよいでしょう。
注)もちろん商品開発に対する努力が前提ではありますが、
それはまた別な次元のお話し、簡略化のためここでは触れないで
おきます。
このように考えてまいりますと、上記ロジックには
大きな考え違いがあることがわかります。
即ち
企業単位でみると(海外から調達する)原材料価格や
(輸入依存度が高い)燃料費など製造コストが上昇し、
かえって業績にはマイナスに作用する。
ではなく、
企業単位でみると(海外から調達する)原材料価格や
(輸入依存度が高い)燃料費など製造コストが上昇するが、
そのマイナス効果を上回る輸出数量の増加効果によって、
さらに企業業績は拡大する。
ということになるのではないでしょうか。
仮にこの考えが正しいとすれば、
これ以上の円安も、やはり日本経済全体でみて
プラスということになるはずです。
では、今回はこのへんで。
(2013年1月17日)
■このコラムが一週間早くお手元に届きます
当社代表の田中が週に一回お届けする無料メルマガ「一緒に歩もう! 小富豪への道」
は下記からご登録いただけます。
「T's資産運用コラム」と同じ内容を一週間早くご覧いただけます、是非ご登録ください。
『まぐまぐ!』から発行していますので、ご安心ください。 |
|