これ以上の円安はマイナスか

みなさんこんにちは。

昨年末以来の円安が続いていますね。
ただここ数日は、市場の雰囲気が少し変わって
きたように思います。

甘利さんや石破さんの「これ以上の円安は
日本経済にとってマイナス」的な発言が効いている
のでしょう。

日本政府はこれ以上の円安を望んでいないのでは
ないか・・市場はこのように疑い始めているのかも
しれません。

本当にこれ以上の円安は、日本経済にとって
マイナスなのでしょうか。

上記の立場をとる人たちのロジックは、
一般に以下のようなものではないでしょうか。


現在の日本は既に貿易赤字状態、即ち輸出額を輸入額が
上回った状態にある。



このような状態で円安がさらに進めばどうなるか・・
まず円ベースでみた輸入品のコストが上がる。



企業単位でみると(海外から調達する)原材料価格や、
(輸入依存度が高い)燃料費など製造コストが上昇し、
かえって業績に悪影響がでる。



従ってこれ以上の円安は、日本国全体でみた場合でも、
マイナス効果となる。

・・・はたしてそうでしょうか?

私は上記のロジックには、明らかに抜け落ちている
ところがあると思います。

円安によって海外から輸入する原材料や、
エネルギーの価格が高くなるのは確かでしょう。

ただし一方で円安によって、輸出型産業の輸出数量は
どうなるでしょうか。

韓国や台湾など海外の競争相手に比べ、価格競争力が
高まりますので、輸出数量は増えることになるでしょう。

ここで問題になるのはその効果の多寡です。

例えばドルベースで単価が5%下がることによって、
どの程度の輸出数量の増加が見込めるのでしょうか。

もし5%の価格下落によって、5%の輸出数量の増加に
とどまるのであれば、企業の売上に対して円安は中立要因で
すね。

この場合企業の売り上げは増えず、結果的に上記ロジックのように、
原材料価格の上昇要因だけがマイナス効果として
残ることになるでしょう。

つまり日本企業全体を集計してみればマイナス・・・
従ってこれ以上の円安は日本経済全体でみてマイナス
ということになるはずです。

問題は5%の円安効果が、5%の売り上げ増に
とどまるか否か・・・

この点ではないかと思います。

国境をまたいだ他社との価格競争という場面で、
はたして5%の価格アドバンテージによって、5%の売り上げ数量
の増加にとどまるでしょうか。

既にネットへのアクセス容易性により、
世界の消費者の持っている情報は均一化しています。

大半の消費者は同じ機能の商品であれば、一円でも安い購入ルートを
既に確保しているといってよいでしょうし、今後もこの傾向は
さらに強まるとみておくべきでしょう。

このような社会では、例えば5%の価格のアドバンテージは
絶大な効果を持っており、場合によっては市場の総取り
だって不可能ではありません。

つまり5%の円安は、企業の販売数量を10%も20%も増やす
可能性があるといってよいでしょう。

注)もちろん商品開発に対する努力が前提ではありますが、
  それはまた別な次元のお話し、簡略化のためここでは触れないで
  おきます。

このように考えてまいりますと、上記ロジックには
大きな考え違いがあることがわかります。

即ち

企業単位でみると(海外から調達する)原材料価格や
(輸入依存度が高い)燃料費など製造コストが上昇し、
かえって業績にはマイナスに作用する。

ではなく、

企業単位でみると(海外から調達する)原材料価格や
(輸入依存度が高い)燃料費など製造コストが上昇するが、
そのマイナス効果を上回る輸出数量の増加効果によって、
さらに企業業績は拡大する。

ということになるのではないでしょうか。

仮にこの考えが正しいとすれば、
これ以上の円安も、やはり日本経済全体でみて
プラスということになるはずです。



では、今回はこのへんで。

(2013年1月17日)



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