■今年の穀物投資について
みなさんこんにちは。
国際商品相場は、私たちが手持ちの資産を分散運用するに際し、
大変意味のある場を提供してくれることになります。
例えば少し株の世界と比べてみましょう。
株式市場と一口に言っても、まず例えば先進国の市場と、
新興国の市場があります。また新興国の株式市場と
言っても、さらに上海株もあれば、インド株もある、あるいは
ドバイやエジプトなど中東の株式市場もある・・・
このようにさまざまな市場の中から、好きな市場を
選んでご自分のお金を運用することができるわけです。
ただし資産の分散効果という点ではどうでしょうか。
確かに特に新興諸国では、政治的な動揺、動乱や災害など、
それぞれの国固有のイベント・リスクがあり、それらから
受けるショックを和らげる点で、地域間の分散は一定の
意味合いがあるといってもよいでしょう。
ただそのようなことはむしろ一時的なこと、一般に
程度の差こそあれ、例えば数年程度の期間でみますと、
どの市場も同じように上がったり、下がったりするわけです。
つまり『多くの国に分散投資しても、実質的な分散効果は、
さほど高くない』ということではなかと思います。
一方で国際商品相場について考えた場合、
株式市場における地域分散効果と比べ、明確な分散効果
があるように私は思います。
例えば原油と金の組み合わせです。
原油は世界の景気変動に敏感で、いまのように世界経済に対する
明るい見通しが増えてまいりますと、上昇する傾向にあります。
一方で金はどうでしょうか。
金は貨幣に対する代替機能がありますので、
世界経済が安定にむかい、市場に供給されるマネーの量が減る
見通しがたてば、逆に売らやすくなるわけです。
このように国際商品相場における分散投資は、
株式投資のそれとは明らかに違い、高い分散効果を得られると
言ってよいでしょう。
一方で逆にどのセクターに投資するかという判断は、
例えば特に一年から二年程度を一区切りとする、
いわば中期投資志向の方にとって、なかなか難しいテーマ
でもあります。
なかでも農産物、特に穀物相場への投資では、独特の判断と
見通しが求められることになります。
さきほど原油は景気に、金はマネーの供給量との相関性が
高いと申し上げましたが、穀物の場合は天候が重要です。
昨年は特に北半球で天候不順が見られましたが、
今年はどうなのでしょうか。
昨年少しだけ見られたエルニーニョ現象は早々に収束し、
いまのところ世界の気象環境に、とくに目先の大きな変動を予測
させる兆候は見られないようです。
一方で世界の気象は所詮お天気任せ・・・
特に近年は世界の温暖化傾向からでしょうか、
どうも気象変動の振幅は徐々に激しくなってきている
ように私は感じます。
では今年の穀物度相場に対し、私たちはどのように臨むべきなの
でしょうか・・・
昨年に続き二年連続北半球の穀倉地帯が異常気象に見舞われた場合、
小麦やトウモロコシ、大豆などは昨年と同様、夏場に急騰という
ことになるでしょう。
一方で逆の目が出て豊作観測が出た場合どうでしょうか・・・
一見五分五分のようにみえるこの勝負ですが、
よくよく考えてみますと、決して五分五分の勝負では
ないことが解ります。
まずお天気についてです。
いくら世界の気象の変動が激しいといっても、
穀倉地帯が異常気象に見舞われる確率が50%ということは
ないと私は思います。
さらに重要なのは、仮に異常気象に賭けた場合に上げられる収益と、
賭けに負けた場合に受ける損失の比較です。
現在の穀物相場をみますと、以下のようになっています。
・トウモロコシ 1ブッシェル≒7.3ドル
・大豆 1ブッシェル≒14.9ドル
・小麦 1ブッシェル≒7.6ドル
問題はこの相場が平時の相場水準と比べ、どの程度の水準に
あるかという点だと思います。
昨年の米国の干ばつは、なんでも50年ぶりだったそうですが、
現在の相場はまだ昨年高騰の余韻が残っているように思います。
以下は相場が高騰する前、即ち昨年の今頃の価格です。
・トウモロコシ 1ブッシェル≒6.3ドル前後
・大豆 1ブッシェル≒12.3ドル前後
・小麦 1ブッシェル≒6.7ドル前後
私には上記の水準が、昨年北半球の天候不順を織り込まない、
いわば現時点での平時における相場水準ではないかと思うわけです。
つまり現在の相場は既にゲタをはいた状態にあるというわけで、
おそらくそのゲタは心理的な要因・・昨年の異常気象への警戒心
に由来するものではないでしょうか。
いずれにしても上記の「天候不順への賭け」に勝った場合でも、
現在の発射台が高い分、それだけ「勝ちの配当」は小さくなって
しまうというわけです。
逆に反対の目が出た場合、負けの損失はそれだけ
大きくでることになるでしょう。
このように考えてまいりますと、私は今の時点での
穀物投資が、リスクに比べ十分なリターンが得られるとは
思えません。
穀物への投資を実行されるなら、北半球の受粉時期、
すなわち6月から7月上旬を待ち、今年の豊作予想から
相場が大きく崩れたとき・・・この場合の逆バリに限定すべきで
はないでしょうか。
逆にこの時期の天候不順から相場が高騰するようなことが
あっても決して動揺せず、「それも想定の範囲内」と
平然と相場を見送る・・・
このような余裕があってよいのではないでしょうか。
では、今回はこのへんで。
(2013年2月5日)
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