ホーム > T's資産運用コラム > 中国の最盛期、その終わりの始まり
中国の最盛期、その終わりの始まり

みなさんこんにちは。

中国の長い歴史を振り返りますと、歴代の王朝の
栄枯盛衰には一定のリズムがあり、それらの最盛期は、
いずれも成立から130年程度の、比較的早期に訪れていた
ことがわかります。

これに対して現在の中国をみますと、中華人民共和国の
成立は1949年、従って今年で建国64年目ということに
なるわけです。

この64年は上記の130年という数字に比べ、いかにも若く、
中国史に照らし合わせた場合、現在の中華人民共和国の最盛期は、
まだまだこれからも続くという見方はあってよいでしょう。

ただし時間の流れは、特に通信手段の高度化や情報化の進展により、
過去の歴史時代と比べ明らかに早くなっているように思います。

時の流れの高速化は、一国の栄枯盛衰のサイクルを早める
可能性があるのではないでしょうか。

従ってもし同国が、建国64年目にターニング・ポイントを迎えた
としても、それは必ずしも不自然ではないように思います。

例えば以下はその予兆の一つかもしれません・・・

4月の上旬、フィッチが中国の国債格付けを1段階
引き下げ、A+としました。

その直後ムーディーズが同国の国債格付けはAa3で
据え置いたものの、今後の見通しは「ポジティブ」から
「安定的」に引き下げました。

両社は上記判断の理由として、中国の地方政府の債務残高の
積みあがりをあげています。

IMFによると中国の公的債務の対GDP比は22%です、この数字は
新興国の健全財政の目安とされる60%を大幅に下回っており、
危険水域からほど遠いようにみえますが、ここには地方政府が
保有している、いわゆる「隠れ借金」は含まれておりません。

中国の地方政府は、債券の発行も銀行からの融資も規制されて
いますので、市場から直接資金を調達しにくい環境にあります。

その結果、地方政府が行うインフラ投資は、もっぱら投資会社
という器(うつわ)を経由して借り入れた資金で
行われることになり、
これが「隠れ借金」というわけです。

中国の場合リーマン・ショック直後に行った、
4兆元にのぼる大規模な財政出動が、地方政府主導で
行われたという事情もあり、この「隠れ借金」は巨額です。

「隠れ」ですので、もちろん正式な統計はありませんが、
一説にはこれらを含めた公的債務は、対GDP比で50〜60%に
達するとの見方もあります。

中国の財政悪化を示す数字はこれだけではありません、
旧鉄道省が長大な鉄道を敷設した際に受けた借入、
さらには年金債務などの公的な借り入れなど、広義の公的債務の
総計は、すでに対GDP比で90%を超えるという見方すらあります。

このような公的債務の増殖懸念に加え、最近注目されはじめたのは、
いわゆる「シャドー・バンキング」問題です、

シャドー・バンキングといいますのは正規のマネーの流れではなく、
高収益をうたった金融商品を組成することによってマネーを集め、
それを融資に回すといった、いわば法の網をかいくぐった
お金の流れを指します。

中国の場合、預金や融資を中央政府が厳しく管理しているため、
このようなお金の流れができてしまうようですね。

シャドー・バンキングの実体はなかなか掴めないのですが、
4大国有銀行だけで、取扱高は3兆元(約50兆円)を超えるとの
見方もあります。

それにしても国有銀行がシャドー・バンキングというのも凄いお話しですね・・・

金額にもビックリしますが。一体中国全体で、どれほどの規模の
影の経済があるのでしょうか。ちょっと怖い気もします。

怖いだけではありません、このようなルートで集められたお金は、
融資という形で地方政府に流れ込み、先ほどお話ししたように、
すでにインフラ投資などに使われてしまっているわけです。

高い利回りを約束して集めたお金が、地方政府のインフラ投資に使われる・・・
怖い構図だと思います。

この場合地方政府の利払いは高くならざるをえず、その財政赤字は
雪だるま式に膨れ上がってゆく・・・前段で地方政府の隠れ借金の
お話しをしましたが、このようにして地方政府の赤字は膨らんできたと
いえるのではないでしょうか。

もはや公的債務の拡大とシャドーバンクのあいだには、
密接な関係ができあがってしまっているといってよいでしょう。

その行き着く先はどこでしょうか・・・

数年前までの高度成長期の中国であれば、税収の伸びが闇の部分を
隠してくれたかもしれません。が、既に同国の高度成長期は終わり、
これからおそらく4%〜6%程度の低成長期に入ってゆくでしょう。

その行き着く先は地方政府の破たん、融資元銀行の破たん、
金融システムの混乱、中央政府の財政悪化・・・そして
世界の金融システムの動揺。どこかでみた光景ですね。

このような事態に陥る可能性は、いまのところそれほど
高いとは思いません・・・それでももしこのような事態を
迎えるとすれば、それは中国最盛期の終わりの始まりを
意味するのかもしれません。

 

では、今回はこのへんで。

(2013年5月14日)

 





このコラムが一週間早くお手元に届きます
当社代表の田中が週に一回お届けする無料メルマガ「一緒に歩もう! 小富豪への道」
は下記からご登録いただけます。

「T's資産運用コラム」と同じ内容を一週間早くご覧いただけます、是非ご登録ください。

【購読登録】 メールアドレスご入力ください :
『まぐまぐ!』から発行していますので、ご安心ください。
totop