価格変動リスクを小さくすることの本当の意味について

みなさんこんにちは。

信用リスク、
流動性のリスク、
為替の変動リスク、
カントリー・リスク・・・

資産運用に関するリスクはイロイロありますが、
今回は価格の変動リスクについて考えてみたいと思います。

価格の変動リスクとは一体なんでしょうか?

例えば今日10,000円だった金融商品が、
明日8,000円になる・・・

これが価格の変動リスクです。

このように一日で20%も変動する金融商品をもって
いるとどうでしょうか、値段が上がった日はうれしいですが、
下がった日は憂うつになりますよね。

価格変動の大きな金融商品は、その所有者の心の振幅を
大きくし、これが投資家にストレスを与えることに
なるわけです。

ですから一般的に投資家は、価格変動リスクの小さな
金融商品を選ぶとされているわけです。

では統計的に、あるいは数学的にみた場合、この
「価格変動リスクの抑制」は、いったいどのような意味が
あるのでしょうか。

それとも単にストレスという心理的な範疇のみの問題であって、
数学的に、あるいは統計的にみて運用成果に差はない
のでしょうか・・・

今回はそこに焦点をあててみたいと思います。

まずいつものように以下のようなサイコロ・ゲームで考えて
みたいと思います。

□事例1

・勝負は6回
・最初の持ち高は10,000円

・サイコロを振り、偶数の目が出ればあなたの勝ちで、
手持ちのお金は30%増え、奇数の目が出ればあなたの負け、
手持ちのお金は30%減る。

勝てば+30%で、負けたら-30%ですから、このゲームの
期待収益率はゼロになります。

では実際に、お金はどのように増減するか
ちょっと見ておきましょう。

・6勝0敗(確率1/64)⇒48,268円
・5勝1敗(確率6/64)⇒25,991円
・4勝2敗(確率15/64)⇒13,995円
・3勝3敗(確率20/64)⇒7,536円
・2勝4敗(確率15/64)⇒4,058円
・1勝5敗(確率6/64)⇒2,185円
・0勝6敗(確率1/64)⇒1,176円

一番注意してみて頂きたいのは、3勝3敗のところです、
ゲームの期待収益率はゼロ、しかも勝率は50%であるにもかかわらず、
なぜか3勝3敗でお金が7,536円に減ってしまっていますよね。

なぜこのような不思議なことが起きてしまうのでしょうか・・

この疑問を解くカギは分布にあります、
上記の結果をよく見て頂ければ、6勝0敗や5勝1敗の場合の
持ち高が異常に増えていることが解ります。

つまりほんの一部の大勝ちした人によって、平均が持ち上げられて
いるといってよいでしょう。

また別な言い方をすれば、一部の大勝ちした人にお金が集まって
しまい、勝率50%を維持しても、お金が減ってしまう状態
になっているともいえるでしょう。

では同じゲームで「価格変動リスク」を、さらに上げると
どうなるでしょうか。

□事例2

・勝負は6回
・最初の持ち高は10,000円

・サイコロを振り、偶数の目が出ればあなたの勝ちで、
手持ちのお金は50%増え、奇数の目が出ればあなたの負け、
手持ちのお金は50%減る。

今度の事例も期待収益率はゼロです。

では再び、お金がどのように増減するかみてみましょう。

・6勝0敗(確率1/64)⇒113,906円
・5勝1敗(確率6/64)⇒37,969円
・4勝2敗(確率15/64)⇒12,656円
・3勝3敗(確率20/64)⇒4,219円
・2勝4敗(確率15/64)⇒1,406円
・1勝5敗(確率6/64)⇒469円
・0勝6敗(確率1/64)⇒156円

注意してみて頂きたいのは今回も3勝3敗のところです、
ご覧のように事例1の7,536円よりさらに少なくなり、
わずかに4,219円です。3勝3敗で手持ちお金が半分以下・・
ちょっと不思議な気もしますが、これは事実です。

つまり価格変動リスクが高くなればなるほど、
一部の大勝ちする人にお金が集まる傾向が高まり、
結果的に負ける人が増えてくる。

上記は簡単にご説明するため、期待収益率をゼロで
試算致しましたが、期待収益率がプラス・・すなわち現実の
資産運用の現場でも、上記のようなことは起きています。

そのような観点からも、資産運用における価格変動リスクの
抑制は、重要な意味をもっているといえるでしょう。

さて冒頭で私はこのようなお話しを致しました。

『価格変動の大きな金融商品は、その所有者の心の振幅を
大きくし、これが投資家にストレスを与えることに
なるわけです。

ですから一般的に投資家は、価格変動リスクの小さな
金融商品を選ぶとされているわけです。』

このように私は精神的な要因から価格変動リスクを下げることが
好ましいと思うのですが、それにもまして上記のように統計学的に、
あるいは数学的にみて、価格変動リスクを抑制する意味合いは
大きいと言えるでしょう。

いまのように日本株が急騰しますと、ついつい日本株の
比率を高めたくなるのが人情というものですが、そのことによって
価格変動リスクが高まってゆくという点も、忘れないで頂きたいと
思います。

あくまで大きなフレーム・ワークは維持しながら、
一定のアロケーションの枠内でリスクを追及する。

このような姿勢は常に求められてるのでは
ないでしょうか。

 

では、今回はこのへんで。

(2013年5月21日)

 




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