米国発の金融危機は去ったのか

みなさんこんにちは。

リーマン・ショックから早や5年、
世界経済も徐々に安定を取り戻しつつあるようにも
みえます。

果たして米国発の金融危機は、
過去のものとなったのでしょうか。

もちろんいろんな見方があって当然だとは
思いますが、リーマン・ショックという点に絞って
考えた場合、世界はその後遺症から脱したと考えても
よいのではないでしょうか。

世界は米国や日本など、先進国経済が牽引する
かたちで、徐々に正常化しつつあるといって
よいでしょう。

ただその先のことを考えた場合、
心配性な私などは、あれこれ考えて不安になって
しまいます。

果たして、リーマン・ショックに至った
根本的な問題は解決されたのでしょうか・・・

そのまえにリーマン・ショックの本質について、
少し考えてみたいと思います。

リーマン・ショックとは、
そもそもなんだったのでしょうか。

私は先進国で起きた肥大しすぎたマネーと、
強欲な金融機関の共鳴の帰結だと考えております。

先進国はどこも財政的な余裕がなく、
その景気後退期に、以前のように安易に財政を
出動することはできません。

つまり当局の選択肢は、消去法的に金融政策に
絞られるわけですが、過去に実施した低金利政策の結果、
先進国はどこもすでにゼロ金利状態・・・

残された金融政策の選択肢は、流動性の供給、
すなわちQEというわけです。

特に今世紀にはいってから、この傾向が定着し、
日米欧の中央銀行が発行するマネーは増加の一途を
たどっているといえるでしょう。

急速に増殖するマネーに対し、
実体経済の拡大は遅く、マネーが実体経済を振り回すという
本末転倒の状態に陥る・・

一方で肥大化したマネーは、強欲な金融機関の
自己増殖本能を刺激し、実体経済とはかけ離れた
架空のペーパーマネー経済をでっちあげる。

いわばマネーと人間の欲望の共振現象と
いってよいでしょう。

これらは互いに共振しあいながら拡大し、
ついに臨界点に達し、そしてバブルは崩壊する・・・

これがリーマン・ショックの本質では
なかったでしょうか。

では冷静に考えて、現状においてこのような
構図は解消されたといえるでしょうか。

マネーに関しては、リーマン・ショック後もむしろ
増加の一途をたどっており、当時と比べ、さらに状況は
悪化しているといってよいでしょう。

一方でもう一つの当事者である、米国の金融機関
はどうでしょうか。

例えば私たちの先達が経験した、1930年代の
世界恐慌と比べてみましょう。

当時も恐慌の一因が金融機関の肥大化にあるとの
反省から、恐慌直後、いちはやく巨大銀行の解体が
行われています。いわゆる「グラス・スティーガル法(1933年成立)」
による、銀行業務と証券業務の分離です。

これに対して今回はどうだったでしょうか。

確かに米国では「ドッド・フランク法(2010年成立)」
によって、商業銀行と証券会社の兼業にたいし、一定の制約を
課す旨の決定が行われましたが、その具体的に手法については
いまだ検討中、現時点においてリーマン・ショックの一因でもあった
米国金融機関の巨大化は、ますます進んでいるようにさえみえます。

振り返ってみれば、1995年から1999年にかけ
米国の財務長官だったルービンは、ウォール街出身ですし、
リーマン・ショック当時の財務長官ポールソンもまた、
ルービンと同じくゴールドマン・サックス出身です。

つまりウォール街と米国政府は、極めて近い関係に
あると考えておくべきで、このような蜜月関係のなか、
金融機関の巨大化阻止は、今後も難しいと考えておくべき
ではないでしょうか。

少し長くなりましたが、上記のように考えを進めて
参りますと、リーマン・ショックの原因となった
『マネーと人間の欲望の共振現象』という構図そのものに、
現状において何ら変化は見られないばかりか、
今後ますますこの傾向が強くなるという、イヤな予想も
十分な説得力をもっているといえるでしょう。

5年前の記憶はまだ鮮明で、
近々かの危機の再現があるとは思いません。
が、一方で人間は不都合な過去を忘れることには長けています。

そう遠くない将来、
残念ながら私たちはまた、米国発の金融不安を経験する
ことになるかもしれません。

 

では今回はこのへんで。

(2013年10月16日)




 




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