■アルゼンチン問題をどう考えるか
みなさんこんにちは。
先週末から昨日にかけ、
世界の相場は大荒れでしたね。
特に震源地のアルゼンチンの通貨ペソは大きく売られ、
1/23だけでドルに対して12%以上の下落となりました。
アルゼンチン同様に経常赤字問題を抱える南アフリカ、
トルコなどの通貨も売られ、さらに動揺は先進国をふくむ
世界の株価へと連鎖しました。
株や新興国の債券などをお持ち皆さんだけではなく、
日本株や米国株など先進国株をお持ちの方のなかにも、
この問題がきっかけとなり、2008年のように大きな相場崩れが
あるのではと、ご心配の方もおいでかもしれません。
今回はこの問題について少し考えてみたいと思います。
まず今回の市場の動揺の本質についてです。
そもそも新興諸国の経済は未成熟でかつぜい弱ではありますが、
これに加えアルゼンチンやトルコなどは、政治的な問題も
抱えています。
さらに今月からFRBによるQE縮小が始まることもあり、
このタイミングで市場参加者の心理が、リスク回避方向に
動いたという点は確かにあったでしょう。
この機会をとらえた一儲け組によって、これら諸国の通貨が
投機の対象になったということも想像できます。
確かに物事の表面だけをみれば、
よく言われるこのような解説は的を射たもの
のように思います。
ただ私はこの問題の本質が、
もっと深いところにあるような気がしています。
一言でいえば、リーマン・ショック後に顕著になった
「マネーの過剰状態」です。
このメルマガで何度も申し上げていますが、
特に2008年以降、世界の金融システムが変質しつつある
といってよいのではないでしょうか。
先進国はどこも既にゼロ金利状態にあり、これ以上の
低金利政策をとることはできません。
また同様に先進国は膨大な財政赤字を抱えておりますので、
財政出動に依存した形で、景気浮揚策をとることも
難しくなっているといえるでしょう。
従って一時的な危機や景気後退を回避するために、
先進国の金融政策は大量の流動性供給を続けざるを得ない
状況にあるわけです。
これはどういうことかといいますと、景気後退期や
金融危機に陥るたび、世界に供給されるマネーの総量は
増え続ける構造になっているということです。
たとえば米国の中央銀行であるFRBの総資産は、
2008年時点で1兆ドル程度でしたが、3度におよぶQEの結果、
直近では既に4兆ドルを超えています。
この間FRBは市場から米国債などを購入する一方、
その対価として市場にドル紙幣を供給し続けたわけです。
このように景気後退や危機のたび供給される紙幣に対し、
その紙幣の交換相手・・・すなわち実物経済のほうは、
そうそう急に増えるわけではありません。
こうして現物資産に対する相対的なペーパーマネーの量は、
増え続けてきたわけですが、おそらく先を見渡しても、
この状況に変化があるとは思えません。
このことは世界経済や世界の将来に、いったいどのような影響を
及ぼすことになるのでしょうか。
増殖したぺーパーマネーは人間の欲望をますます掻き立て、
さまざまな市場でバブルを作り、かつそれを崩壊させる
ことになるでしょう。
バブルの発生と崩壊の頻度は増え、そしてそのサイクルは
ますます短くなるはずです、規模は小さいものの
大きな視野に立てば、今回のアルゼンチン問題も
その一つにすぎません。
人間が自らの欲望と恐怖を克服できるようになるまで、
おそらくこの傾向に終止符を打つことなどできないのでは
ないでしょうか・・・あるいはそのまえに何らかの規制を創り上げ、
その効果によって自らの欲望を、檻に閉じ込めることができるの
でしょうか。
いずれにしても、少なくとも何世代にもわたり、
人間は自らの欲望と、さらにその裏側にある自らの恐怖心と、
戦わざるを得ないはずです。
であれば当面私たちがとりうる手段は、
ただ一つだけ。
すなわちペーパーマネーの対極にある現物資産を
一定額保有することにより、自らのなかで両者の
バランスを取ること。
これに尽きるのではないでしょうか。
私自身は今回のアルゼンチン問題を同国固有の問題として
楽観的に見ています。が、だからといって上記のような
本質的な問題が解消したわけではありません。
むしろ私たちにとってますます質的分散の重要性は
高まっているように思います。
では今回はこのへんで。
(2014年1月28日)
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