コイン収集の勧め

みなさんこんにちは。

昨年末に出した本に書いたせいか、
ここのところコイン収集のアドバイスを
希望される方が増えてきました。

たいへん喜ばしいことだと思います。

コイン収集は僕の個人的な趣味だということも
あるのですが、それにも増して個人が運用の対象として、
あるいはリスク回避のための分散対象として、
コインをお求めになるのはとてもよいことだと思います。

確かに昔から日本にはコイン収集の文化はありましたが、
収集の対象は日本の古銭が中心で、これは世界的にみて
やや特殊な傾向ではなかったでしょうか。

そもそもコインを収集するという文化は、
主にヨーロッパで発祥し、人の移動とともにそれが新大陸、
すなわち南北アメリカ大陸に伝播したといえるでしょう。

南北アメリカといっても、近代急速に富裕化が進んだ米国が
中心で、つまりコイン収集の文化は主にヨーロッパと米国において
盛んになり、その傾向が現在まで続いているといってよいでしょう。

ですから我が日本の古銭収集の文化は、上記のような
世界的系譜からみれば、やや異質であり、
少なくともその収集対象が日本の古銭に限定されてきたという点で、
極めてローカル色の強いものではなかったかと思います。

上記のように我が国のコイン収集の特殊性として、
ローカル色の強さ、簡単にいえば国内コインへの偏りという
点を挙げることができると思うのですが、もう一つ世界的基準
でみた、日本の特殊性を挙げることができます。

それは収集の動機の違いです。

ヨーロッパにしろアメリカにしろ、コイン収集を単に
趣味とか教養といった、いわば金銭とは無関係な動機で行う
ケースもありますが、多くの場合は資産の保全や分散といった、
投資としての性格を伴います。

ではヨーロッパにおけるこのような傾向は、なぜ定着し、
一方で日本では定着しなかったのでしょうか。

この点について僕は、特に20世紀以降の両地域の
歴史に起因すると思います。

ヨーロッパの国土は近代二つの大きな戦争の戦場と
なりました、そしていずれも一時的ではありますが、
ドイツという強国によって国土を蹂躙され、その
統治下におかれた経験を持ちます。

少量でしかも、それそのものに価値のあるコインは、
持ち運びの容易さ、価値の保全という観点で、
例えば紙幣や金(Gold)に比べ、使い勝手がよかった
はずです。

例えばドイツ軍の占領を避けるため、ユダヤの富裕層がコインを
リュックに背負って一族で国境を越え、イギリスやアメリカ
に移住する・・・このようなシーンもあったかもしれません。

これに対しわが国の近代はどうでしょうか。

近代以降、我が国でも日清、日露という戦争の体験はありますが、
いずれも海戦が中心で、外国軍によって国土が蹂躙された
経験はもちません。

太平洋戦争では確かに敗けましたが、本土が地上軍の
攻撃にあうという経験はしていません。

このあたり国土が外国の地上軍の攻撃にさらされ、
占領された経験を持つヨーロッパ諸国との違いでは
ないかと思います。

つまり日本人にとってコイン収集は、単なる趣味の対象であり、
資産の保全手段としてみる文化が育たなかったのではないでしょうか。

ただしこれからは違います。

現在では外国から国土を物理的に脅かされる恐れはまずありませんが、
一方で、それに匹敵する事態が現実のものになる可能性は
徐々に高まっているように思います。

世界の経済や金融はつながっていますので、リーマン・ショックを
引き合いに出すまでもなく、他国で起きた危機は、瞬時に世界に
伝染することになります。

金融の世界から隔離されたコインは、
これからますます資産保全の対象として、その輝きを
増すのではないでしょうか。

僕は現代でもコイン収集の意義は薄れていないと思いますし、
日本人もそろそろ伝統的な趣味の古銭収集から卒業し、
世界基準のコイン収集に、もっと目を向けるように
なればいいと思います。

 

では今回はこのへんで。

(2014年2月18日)




 




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