■そろそろ金
みなさんこんにちは。
ここ数日で随分と金の国際価格が下落しましたね。
ちょうど一か月前の8/8、ロンドンの現物市場の金価格は、
1オンス=1310ドルでした。
これに対し昨日の同市場の終値は1オンス=1259ドルでした
ので、この一か月で約3.9%下落したことになります。
ではこの間いったい何があったのでしょうか、
金相場を動かす大きな変動が、世界のどこかで
起きたのでしょうか。
地政学的リスクや、中国やインドの現物の金需要など、
金相場を動かす要因はいくつかありますが、
この間の相場下落だけに注目しますと、やはり
ドルが強くなったという点を挙げてよいと思います。
世界的に金は米ドル建てで売買されており、ドルの価値が
高まれば、逆にドル建ての金価格は下落します。
ではここ一月のドルの価値はどのように動いたのでしょうか。
FXがお好きな方はご存じだと思いますが、ドルの強弱を
計るモノサシとして、ドル・インデックス(注)という指数
があります。ドル・インデックスを使いますと、円だけで
なく全般的なドルの強弱を知ることができます。
注)このドル・インデックスはユーロや円、ポンド、
スイスフランなど先進国の主要6通貨に対する米ドルの価値
を指数化したもので、この指数が大きくなるほど、
ドルが強いことを示します。
ドル・インデックスはここ一月で
・8月8日 81.389
・9月5日 83.739
ですから、この間ドルの価値は約2.9%高まったと
いってよいでしょう、一方で冒頭のように金価格は
・8月8日 1オンス=1310ドル
・9月8日 1オンス=1259ドル
でこの間、逆に約3.9%の下落です。
大雑把にいってしまえばドルの価値を示すドル・インデックス
の上昇分だけ、ほぼ金の価格が下落したといってよいでしょう。
つまりここで起きた現象は
ドル価値の上昇⇒金価格の下落(1)
です。
では私たち日本人が金へ投資する場合は、
どうなのでしょうか。例えば上記と同期間の円建ての
金価格をみてみましょう。
・8月8日 1グラム=4,302円
・9月8日 1グラム=4,254円
ご覧のようにこの間の下落は約1.1%にすぎません。
ドル価値の上昇は、半面で円価値の下落ですから、
ここでは
ドル価値の上昇⇒円価値の下落(2)
という(2)現象と、上記の(1)現象が相殺しあうことにより、
円建てでみた金の価格はさほど下落しなかったというわけです。
イメージで申し上げますと、円と金の間に挟まったドルの価値が、
伸びたり縮んだりしているだけで、これは金の本質的な価値と
は無関係なところで起きる。いわば『金価格の為替トリック』
といってもよいでしょう。
このことからたとえば上記のような一月や、二月といったスパンで、
私たち日本人が円建てで金を買っても、あまりもうからないし、
また損をすることもないということがわかります。
たとえばSPDR Gold(金の代表的なETFです)を、
短期で売ったり買ったりしても徒労に終わることが多いのは、
このせいです。
ただし例えば2年とか、5年といった長期でみると
上記の考えは当てはまりません、金がドルだけでなく、
円やユーロなど、いわばすべての通貨に対し、ゆるやかに
強くなったり、弱くなったりするからです。
このように長期で動く金価格は、上記のような、
いわば為替のトリックによって動いているのではなく、
金とペーパーマネー間の交換比率の変動という、
本質的な要因で動いているといえるでしょう。
そのような観点で向こう数年、あるいは数十年という
単位で先をみますと、どうやら先進国の『通貨の過剰発行グセ』
が治まるという雰囲気はなく、ドルだけではなく、
通貨全体に対する金の相対的な価値が高まる方向の
ように思います。
ここのところ金の相場は低迷しており、いよいよ
平均的な産出・精錬コストと言われる1オンス=1200ドルに
近づいて参りました、このようなときにこそ、リスク分散
のため金に対し長期資金を投入すべきではないでしょうか。
では今回はこのへんで。
(2014年9月9日)
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