■制御可能なリスク、制御不能なリスク
みなさんこんにちは。
ここのところ俄かに消費税に対する
注目が高まってきましたね。
消費税は予定通り引き上げるべきだと考える人たちがいる
一方で、延期を訴える人たちもいます。
私たちはどちらを支持すべきなのでしょうか・・・
賛成派、反対派、それぞれにさまざまな理屈が
ありますが、その核心部分を抽出しますと、
おそらく以下のようになるのではないでしょうか。
□増税反対派の意見
昨年日銀が行ったQE以降、消費税増税もあって物価は
少しずつ上昇しつつある、一方で賃金の上昇は緩慢で、
国民の実質的な所得は減少気味だ、夏場の天候不順も
あり7-9月期の成長率も期待に達しないだろう、この
ような時期に消費税の増税を決めると、国民の消費意欲が
委縮し、本当に景気後退に陥ってしまう可能性がある。
消費税増税そのものには反対しないが、予定通り上げる
のはマズイだろう、増税は延期すべきだ。
□増税賛成派の意見
日本は2015年度に、プライマリーバランスを(対2010年度比)
GDPに対して半減させると公約した格好になっている。
この状態で消費税増税を先送りすれば、国際的な信認を
失い、日本国債は急落、金利は急騰し制御不能な状態に陥る。
一方で予定通り増税を決めた場合、確かに景気は落ち込み
デフレ状態にもどる可能性はある、ただこのようなリスクは
政府や日銀の政策対応により制御することはできる。
つまり増税によるリスクは制御可能であり、
増税先送りによるリスクは制御不能である。
いまは制御不能なリスクをとるべきではなく、
従って予定通り増税だ。
ではどちらの考え方が正しいのでしょうか。
結論から申し上げれば僕は前者、ずなわち増税先送り派に
分があるように思います。
黒田さんがよくおっしゃるように、確かに増税先送りのリスクは
制御不能ではありますが、そのリスクが現実のものとなる可能性、
言い換えれば生起確率も冷静に見ておく必要があるの
ではないでしょうか。
増税を先送りした結果、例えば国債の価格が暴落し財政が危機的
状態になったり、さらには円が暴落しハイパーインフレが
起きるなど、文字通り制御不能な状態に陥る可能性は、
一体どの程度あるのでしょうか。
上記のようなシナリオがあるとすれば、日本国債の
うち8%程度を保有する外国人投資家による、日本国債ウリ
が起点になるはずです。
果たして彼らは我が国の増税先送りをみて、
日本国債を売るでしょうか。
それはないと僕は思います、むしろ外国人投資家の目は、
いまのような微妙な時期にあえて増税を決め、日本が
再びデフレに逆戻りするリスクのほうに、向けられて
いるように思います。
そもそもここまで膨らんでしまった財政赤字を、
一年やそこいら増税を先送りにしたところで、
いかほどの影響があるでしょうか。
そのことによって日本国債の信認が損なわれるなら、
もうとっくに日本国債は暴落しているでしょう。
仮に増税を先送りしても、財政健全化の工程をしっかり
と示せば、市場の信認を得ることはできるはずです。
つまり冒頭挙げた後者のリスク、すなわち増税先送りによって、
市場が制御不能な状態になるリスクは、ごくわずかなものに
とどまるのではないかと思います。
対策はそのイベントの生起確率に応じて立てる
べきではないでしょうか。
であれば、可能性の低い極端な破滅シナリオのみに注目し
政策を立てるより、生起確率と影響度合いの双方に
バランスよく配慮したうえ、政策を決定すべきでは
ないかと思います。
このような観点で、僕は増税は一年から一年半程度
先送りすべきではないかと考えています。
さて安倍さんはどのように判断されるのでしょうか・・・
では今回はこのへんで。
(2014年11月12日)
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