■来年起きそうなこと-2
みなさんこんにちは。
今回は先週に引き続き、2015年に起きそうなことを
お話ししたいと思います。
前回
・米国のゼロ金利解除による相場の混乱
・ECBがQEを実施した場合の、世界経済に与える影響
についてお話ししました、
今回はわが日本のお話しをしたいと思います。
黒田さん就任以来、日銀は大規模な量的緩和を続けて
いるのは皆さんご存知の通りです。
日銀の最終目標は、「インフレ率2%達成」にあるわけですが、
私などは「この看板をいつまであげ続けることが
できるんだろ」などと時々考えてしまいます。
日本国内のインフレ率は、日本国内の政策で一定方向に
誘導できる部分もありますが、一方で国外の経済に
依存する部分もあるわけです。
その代表例は今話題の原油価格です。
昨日の米国市場でWTI原油の価格は、1バレル=60ドルに
接近致しましたが、仮にこの価格が続きますと、
日本の消費者物価を0.6%引き下げる(注)効果があると
いわれています。
注)クレディ・スイス社推計
一方で我が国のインフレ率をみておきますと、
直近10月時点で0.9%(注)にすぎません。
注)消費税増税の影響を除く
従ってこれから原油価格下落の効果(-0.6%)を跳ね返し、
なおかつ2.0%に引き上げなければならないわけです。
日銀が追加のQEをきめたのは10月末ですから、その効果はまだ
出ていないのですが、それでも来年(例えば半ばに)に
2.0%の達成が可能なのでしょうか・・・
賃金の上昇は遅れてやってきますし、
原油安によって他の消費が増えれば、全体でみて
物価への悪影響はさほどでもないかもしれません。
ただそれらを加味しても、現状0.9%のインフレ率が、
この逆風下において来年に2%に達するという見方に、
私は違和感を覚えてしまうわけです。
たとえば来年の夏あたり・・・インフレ率が1.0%以下程度に
とどまっているようなことがあればどうでしょうか。
おそらく黒田さんの視野に「2回目の追加QE」が、
入ってくるのではないでしょうか。
そして本当に追加QE2が実行されると、
一体どのようなことがおきえるのでしょうか。
ここからは少し怖くなってきます。
現地点で日銀が市場に供給している資金の量(注)は、
既に約270兆円に達しております。
注)マネタリーベース
先日発表した追加QEが完遂されますと、2015年末時点で
約355兆円となり、これは我が国の対GDP比で約70%の
水準です。
一方で米国をみてみますと、過去3度にわたり実施したQEの結果、
資金供給量はすでに約4兆ドルに達しております。
この4兆ドルを今のレートで換算しますと、およそ480兆円
となり、これは上記の日銀マネーを上回っていることに
なります。
ただしこれで安心するわけにはゆきません。
まず日本と米国では経済の規模が違います、
米国のGDPは現在約16.8兆ドルほどありますので、
対GDP比で見れば4兆ドルは24%程度にすぎません。
これに対し上記のように日本の場合は約70%ですから、
日銀が行った(あるいは今後行おうとしている)QEの
大きさが解ります。
さらに問題はこの先です、
上記で申しましたように、来年日銀は再度追加QEに
追い込まれる可能性があると思います。
仮に今回のように80兆円から年間20兆円ほど上積みされ、
年間の資金供給量を100兆円に引き上げたとすれば
どうでしょうか・・・
イヤ、仮にに追加されずとも、現在の年間80兆円の
供給ペースが維持されるだけで、市場は何事かを感じとる
可能性があるのではないかと思います。
少し怖いシナリオです・・・
ただし私はこのような悲観的な予想を来年の
メインのシナリオと考えてはおりません。
原油相場は多くの国で採算ラインを割っており、
このままの水準が一年続くとは思えません。
むしろQEによるインフレ期待によって、
我が国経済は好循環に入る可能性が高いと思います。
賃金の上昇の遅さは私たち生活者にとって大きな問題
ではありますが、賃金の上昇は経済に遅行する傾向があり、
その点でも来年は良い見通しがでてくるのではないでしょうか。
基本的にはこのような明るい来年を想定しつつ、
万一の場合に備えるというスタンスが必要ではないか・・・
来年の日本経済には、このような見方を
しています。
では今回はこのへんで。
(2014年12月11日)
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