ワンルーム、本当の意味での収益率は

みなさんこんにちは。

相続税の増税の影響もあるのでしょうか、
僕の事務所でもワンルーム・マンション(以下「ワンルーム」)
購入に関して、アドバイスをお求めになる方が増えてきたように思います。

ワンルーム購入に関して、皆さんからよく受ける質問は

・ご検討中の物件への意見や評価
・物件評価の基準やポイント
・融資利用の可否
・融資を利用する場合固定金利ローンを使うか、それとも変動金利型か
・賃貸管理会社の選択基準
・相続税の節税効果や生前贈与を行う際の注意点

など多岐にわたりますが、それ以前の問題として
「ワンルームの本当の意味での収益率」について、
皆さんにご理解頂くべきではないかと思います。

収益性に関して、(僕は参加したことがないのですが、おそらく)
不動産会社主催のセミナーで話題になるのは

・グロスの収益率
・ネットの収益率

ではないかと思います、「グロスの収益率」というのは

・賃貸料÷(ワンルームの購入額+登記費用を含む諸費用)

で求められ、いわばこれは表面的な収益率です。

例えば皆さんが月当たり90,000円の賃料をもらったとしても、
すべて皆さんのお財布に入るわけではありません、実際には
管理費や修繕積立金、あるいは賃貸管理会社に支払う管理費、
さらには固定資産税や火災保険など・・・

このような諸費用を控除した後のお金が、皆さんの取り分です。

このように諸費用を控除した後の取り分、
これが即ちネットの収益であり、これを物件の購入費用
で割った値が「ネットの収益率」というわけです。

都内の築浅ワンルームの場合、「グロスの収益率」は大雑把に
いえば5%台の前半です。

これに対して「ネットの収益率」はと言いますと、
概ねそこから1%ほど下がり、ざっといえば4.2%±0.3%程度(注)
といったところでしょう。

注)築の深い物件ほど、逆に収益率は高まる傾向にあります。

ここまでは不動産屋さんのセミナーと同じですが、
問題はここからです。

ワンルームは土地と建物から構成されているのですが、
残念ながら建物は時間の経過とともに、老朽化してゆくことに
なります。

つまりワンルームを買った瞬間から、目に見えない
お金が皆さんのお財布から出てゆくわけです。

従って「ワンルームの本当の意味での収益率」を求める場合、
上記でいう「ネットの収益率」から、老朽化による価値の
減少分を差し引いて考える必要があるでしょう。

ではこの価値の減少分は、いったいどのようにして
計算すればよいのでしょうか。

先ほど申しましたように、ワンルームは土地と建物から
出来ています。築年数や立地などによって、両者のバランスは
異なりますが、都内の築浅物件というくくりで考えると、
大雑把にいって両者の比率は50対50程度と考えてよいでしょう。

例えばJR渋谷駅徒歩10分、都心の超一等地に立つ
築15年の築浅、価格が2300万円の物件ですと、
建物部分1150万円、土地部分1150万円といったイメージです。

当然ながら土地部分は償却しません、従って残る建物部分が
毎年老朽化し、時間の経過とともに価値が下がってゆくわけです。

仮にワンルームの耐用年数が60年としますと、上記築15年の物件は
向こう45年にわたって稼働するわけで、毎年定額で償却すると
考えるなら、建物部分の毎年の減価額は、約25.5万円(注1)と
計算できます。

注1)1150万円÷45年≒25.6万円

建物の購入価格は2300万円でしたので、毎年約1.1%(注2)の
割合で、このワンルームの価値は減少してゆくことに
なるわけです。

注2)25.5万円÷2300万円≒1.1%

従って「ワンルームの本当の意味での収益率」は
上記1.1%分だけ、この物件の「ネットの収益率」から下がると
見ておかなければなりません。

仮に上記物件のネットの収益率が4.2%だったとしますと、
この物件の本当の「意味での収益率」は3.1%(注3)
ということになるわけです。

注3)4.2%-1.1%=3.1%

ワンルームには資産運用効果以外にも、相続制の節税効果や
贈与税の節税効果、それに資産の分散効果もあるわけで、
この3.1%という数字のみによって、投資すべきか否かを判断する
わけではありません。

それでも不動産屋さんがよく使う「ネットの収益率」は、
投資家の最終的な収益率ではないという点。

「本当の意味での収益率」は、そこから建物部分の償却を控除して
計算する必要があるという点を、しっかりとご理解いただく必要は
あると思います。

さてその前提で先ほどの3.1%です。

上記のようにこの3.1%は、すでに物件の老朽化という
マイナスの要素を控除済みの数字です、ここまで分解してあげれば、
例えば日本国債や企業が発行する社債などの債券と、
比較可能になるのではないでしょうか。

あとは売買の際の手間や費用、
地震や津波など天災のリスク、

ワンルーム特有のこれらのリスクや機会損失の可能性を、
どの程度に見積もって、上記3.1%から控除すべきなのか・・・
おそらくこんなところが購入可否の焦点になるでしょう。

日本の10年物国債の利回りは、現在僅かに0.4%程度に
過ぎずません、これと上記3.1%を比較したうえでワンルームを
買うべきか否か。

このような判断が求められるのではないでしょうか。

 

では今回はこのへんで。

(2015年5月26日)




 




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