■気になる長期金利と住宅ローン
みなさんこんにちは。
ここのところ日本の経済は、
どうやら良い方向に向かっているようですね。
徐々にではありますが、賃金は上昇していますし、
企業の業績や設備投資にも拡大傾向がみえます。
原油価格の大幅下落もあって、インフレ率はゼロ近辺まで
落ち込んでいましたが、それもどうやら今が底のようです。
我が国の経済にとって、誠に結構なことではありますが、
一般に景気の拡大は金利の上昇を伴います。
貸す側にとっては好ましいことではありますが、
例えば長期の住宅ローンを変動金利で借りている人にとって、
金利の上昇は少し注意してみておいたほうがよいでしょう。
何しろリーマン・ショック直前の2006年以降、
我が国の長期金利は下げ続けていますので、金利の
上昇がいったいどのようなもので、私たちがどんな影響を
受けるのか、すっかり忘れてしまった人も多いのでは
ないでしょうか。
変動金利で住宅ローンをお組の方は、
「金利が上がり始めたら固定ローンに組み替えます」
とよくおっしゃいますが、実際にはなかなか難しいと
思います。
例えば今まで年利0.6%などといった低い変動金利で
お金を借りていた人が、年利1.7%の固定金利型ローンに
借り換えた場合、どのようなことが起きるのでしょうか。
以下のケースを想定してみましょう。
・借入額4000万円
・30年ローン、元利均等返済
・年利0.6%の変動金利
この場合、この方の毎月の返済額は約12.1万円で、
総返済額は約4370万円となります。
ではこの方が年利1.7%の固定金利ローンに組み替えた
場合はどうなるでしょうか、この場合毎月の返済額
は約14.2万円にあがり、総返済額は約5100万円に増えます。
つまり毎月の返済額が約2.1万円高くなり、
なおかつ総返済額が730万円ほど上がるという選択を、
この方は迫られることになるわけです。
住宅ローンをお組みになる場合、皆さん結構メいっぱい
ローンを組まれる方が多く、このように途中で
返済額を増やすのは、容易なことではありません。
結果的に固定金利ローンへの組み替えは行われず、
そのまま変動金利で返済を続けるケースが多いのではないで
しょうか。
冒頭のように我が国の経済も数年ぶりに良い方向に
動きはじめていますが、やはり気になるのは金利の上昇です。
長期金利の代表選手である「10年物日本国債の利回り」が、
今年1月に史上最低の0.2%割れを記録しましたが、今から
振り返れば、そこがどうやら底だったようですね。
その後上昇に転じ、本日(7/2)は0.5%を上回る
水準で推移しております。
日銀が大量に日本国債を買っていますので、ここからさらに上昇し、
年内に例えば0.7%、あるいは0.9%といった水準まで騰がるとは
思えません、ただし日銀も未来永劫QEを続けるわけでは
ありません。
いずれ市場からの国債購入は停止しなくてはならない
わけです。
日銀という巨大な買い手がいなくなったとき、
国債の利回りはどう動くのでしょうか。
買い手が少なくなった国債の価格は下がり、
一方で国債の利回りは上昇いたします。
注)債券の価格と利回りは反対方向に動くのです
10年国債の利回りの上昇は、おおざっぱにいってしまえば
長期金利の上昇と同義です、つまりいずれ日銀がQEを停止する
ことを見越し、金利はさらに上昇し続ける可能性が
高いといってよいでしょう。
ではこの日本の長期金利。いったいどこまで上がる
のでしょうか?
よく「金利は、その国の経済の体温を表す」などと
いいますが、うまい言い方だと思います。
新興国のように成長途上にある国の金利は高く、
日本や欧州のような成熟した国や地域の金利は低いのが通例です、
おそらく資金を必要とするエネルギーが違うからだと僕は思います。
そのような観点で言えば、我が国の長期金利が、
リーマン・ショック直前の米国のように5%をつけるかといえば、
それはちょっと考えられないような気がいたします。
我が国のリーマン・ショック前の値、いいかえれば
2%前後がせいぜいではないでしょうか。
では仮に10年国債の利回りが2%程度まで上昇したと
すれば、ローンの金利はどの程度まで騰がるのでしょうか。
例えば長期固定ローンの代表である「フラット35」の金利は
3.2%程度(今は1.6%ほど)になるのではないかと思いますし、
変動金利なら2.5%(今は低いところで0.7%ほど)あっても
不思議はありません。
ではこれをさきほどのケース
・借入額4000万円
・30年ローン、元利均等返済
にあてはめてみるとどうでしょう。
金利が0.7%から2.5%まで上昇した場合の、
月々の支払額は12.3万円から3.5万円増えて、15.8万円
になります。総支払額は4440万円から5690万円に
アップです。
すでに変動金利で住宅ローンをお組みの方や、
これから変動金利ローンを活用して住宅の取得をお考えの
方は、このような金利の上昇を見越したうえ、月々の
支払額を多めに見積もって生活設計をお立てになる
ことをお勧めいたします。
住宅ローンをお組みの個人の方だけではなく、医院を経営されて
おいでの医師や歯科医師の方も、同様の考え方が
必要ではないでしょうか。
では今回はこのへんで。
(2015年7月2日)
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