距離の離れたリスクをとるということ

みなさんこんにちは。

私の事務所にお越しになる方の資産を拝見しますと、
大概の方は偏った構成になっています。

海外のヘッジファンドばかりをお持ちの方。

ブラジルレアルや南アフリカのランド建てなど、
高金利通貨建ての債券が大好きな方。

日本株の個別銘柄がお好きで、何十銘柄もお持ちの方・・・
あるいは不動産がお好きで、一棟もののアパートを
いくつもお持ちの方・・・

好みの傾向は十人十色なのですが、偏っているという点では
共通しています。

このような方の資産を拝見し、私はいつも不安になってしまいます。

世の中に安全な資産などありませんし、どのような資産も
それぞれに違ったリスクを持っています。

株を持っていれば、世界の景気変動の影響をモロに
受けてしまいますし、新興国通貨を持っていると、今のように
新興国経済に逆風が吹きますと、大きく値を下げることになります。

大量の円建て現預金をもっていますと、我が国財政のことが
気になって参りますし、不動産にお金を集中させますと、地震や
水災、あるいは金利の上昇が心配です。

つまり世の中に安全な資産があるという考えは幻想で、
どんな資産でも、それぞれに固有のリスクから逃れられない
ということではないでしょうか。

ですから資産を一か所に集めるという行為は、一つのリスクを積極的に
とる行為でもあるわけで、冷静に考えればかなり危険を伴う
ことではないかと思います。

資産運用といえば、大概の人は収益のほうに焦点を当てがちですが、
少なくともそれと同程度の労力で、リスクへの配慮を持つべきでは
ないでしょうか。

これを一歩進めれば、『リスクの傾向が異なった金融商品の
組み合わせ』という考えに行き着きます。

例えばリーマン・ショックや我が国で起きた金融危機のように、
金融システムに対して大きなストレスが加わればどうでしょうか。

これらのケースでは株やヘッジファンドなど、いわゆるペーパーマネーの
価値は大きく棄損しました。これに対して比較的値持ちがよかったのは、
金やクラシックコイン、ジュエリーなど現物の資産でした。

このことから私たちは、ペーパーマネーと現物資産のリスクが、
かなり乖離しているであろうことを推測できます。

あるいは今後想定される問題として、例えば日米欧など先進国による
流動性供給策の断続あるいは強化があります。簡単にいえば
紙幣の残高の増加です。

この場合一枚当たりの紙幣の価値は下落し、その対極にある現物資産、
例えば不動産や貴金属の価値は上がるでしょう。

このよう観点でも、現物資産とペーパーマネーの分散保有が、
リスク分散に役立つことがわかります。

一方で我が国の場合、今後も地震や水害など自然災害のリスクは
避けられそうにありません、そのような観点で特に不動産は、
株やヘッジファンド、債券などペーパーマネーにはない、
特異なリスクを持っているわけです。

では私たちはこのような不確実性に満ちた世界で、
いったいどうやって資産を維持管理してゆけばよいのでしょうか。

世の中に安全な資産などないとすれば、距離が離れた
リスク特性を持つ金融商品を、分散して保有しておくしか
手はないように思います。

その結果、予期せぬ(あるいは予想通りの)危機が発生し、たとえ
不幸にして資産の一部が棄損しても、残りの資産でなんとか生きて行ける
状態を作ること、これが重要ではないでしょうか。

そのような観点で、意識的に現物の資産と証券化商品
(いいかえればペーパーマネー)に分散しておくという考えは有益で、
特に一定以上の資産規模をお持ちの方にとって、この考えは
今後の資産運用の基本になるでしょう。

 

では今回はこのへんで。

(2015年11月28日)




 




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