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100年定期預金から学ぶこと

みなさんこんにちは。

大正時代の日本に、100年定期預金という預金があったことを、
先日僕は知りました。

昨年12月30日の日経朝刊に、以下のような見出しの
記事が出ていましたので、ご覧になった方もおいでではないでしょうか。

『旧新潟貯蓄銀行の超長期定期、100年満期到来、でも少額』

なんでもある方がお父様の遺品の整理をしていて、この預金の証書を
見つけたそうです。

この100年定期預金の募集条件は、

・募集開始は1915年(大正4年)
・満期は100年後の2015年
・利率は年利6%の複利

で、例えば1円を預けると2015年に339倍の339円に
なる計算でした。

年利6%の定期預金・・・預けたお金の339倍、
素晴らしい高金利だと思います。

その方が同行(現「第四銀行」)に問い合わせたところ、
「証書は有効だが、解約しても額面のお金しか支払われない」
との回答を得たそうです。

紙くずにならずによかったと思いますが、この預金、
いったいいくらをご遺族は受け取ることができるのでしょうか。

当たり前ですが、例えばこの方のお父様が当時100円の
お金を預けていたら、その339倍ですので33,900円という
ことになります。

確かに100円が33,900円にもなると、すごく増えたという
ことになると思いますが、問題は当時の100円の価値です。

この記事によれば当時の小学校の先生の初任給が10円から
20円程度とありますので、たぶん当時の1円は今の1万円程度
だったのではないでしょうか。

したがってもしこのお父様がお預けになったお金が
100円だったとしたら、その100円は今の感覚でいえば
100万円程度だったと思います。

そして100年後、その定期預金は33,900円になって
遺族に支払われることになったわけです。

思えばこの100年に間に、我が国ではいろんなことが
起きました。

敗戦もありましたし、高度成長期もありました、
バブルの崩壊も経験しましたし、大きな地震や台風も
何度かありました。

ただこれだけはいえるのではないでしょうか。

この100年を経て通貨の価値は大きく下がり、
超長期の高利回り預金ですらインフレに勝てなかった・・

ではこのお父様が、インフレに強いとされる金(Gold)を
この100円で買っておけばどうだったでしょうか。

大正4年当時の金の価格を調べると、グラムあたり1円30銭ほど
だったことが分かります。

したがってこの場合、購入できる金は77グラム(注)ほどに
なります。

注)100円÷1.3円≒77グラム

これに対して現在の金の価格は、1グラムあたり税込みで
4500円ほどになります、したがって77グラムの金価格は
約35万円と計算できました(注)。

注)4500円×77グラム≒346,500円

確かにさきほどの33,900円に比べると、大きな金額ではありますが、
それでも当時の100円は、今の感覚でいえば100万円に相当する
わけです。

したがってインフレに強いといわれる金で持っていたとしても、
この間の資産価値は減ってしまったといえるでしょう。

ではなぜ金の価値がインフレに負けてしまったのでしょうか。

おそらく金は地中から市場に供給され続け、その
希少性が少しずつ減ってきたからではないでしょうか。

では仮に新たに供給されない資産に投資していたら、
どうだったのでしょうか。

たとえば金貨です。金貨の素材は金ですが、
こちらは新たに製造されることはありません。

注)明治金貨は正確いえば金90%と銅10%でできています。

大正4年に発行された新二十円金貨を例に考えてみましょう。

当時の新二十円金貨は、当然ながら通貨ですので20円支払えば
購入することができます、購入というより両替といった方が
よいかもしれません、いずれにしても比較的簡単に購入できた
はずです。

この場合お父様がお持ちだった100円で、この20円金貨
5枚に両替することができたわけです。

ではこの20円金貨が、箪笥のなかからそのままの状態で
5枚見つかったとしたらどうでしょう。

現在の新二十円金貨は、未使用状態で概ね30万円程度に
なりますので、5枚で150万円となります、さきほどの33,900円と
比べると、ずいぶんと大きな金額になることが分かります。

これに対してお父様の100円の当時の価値は、今の
100万円程度だったと考えられますから、元本を50万円ほど
上回ることになるといえるでしょう。

ではなぜ金と違って金貨の方は、インフレに負けなかった
のでしょうか。

これはあくまで一つの可能性ではありますが、金と違って
金貨は新たな供給がなく、したがって金のように価値が薄まら
なかったからだと思います。

この100年定期預金の事例から、私たちは以下のような
ことを学ぶことができます。

紙幣や現預金は長期的に価値の保存が難しい場合があること。

金のような新たに供給され続ける資産は、たとえ現物資産でも、
インフレに勝てない場合があること。

これに対して新たな供給が見込めない現物資産は、インフレや
社会の構造変化への抵抗力があること・・

 

では今回はこのへんで。

(2016年2月26日)




 




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