日銀のQQEはどこに行き着くか-前編

みなさんこんにちは。

今回は日銀による量的質的緩和策(QQE)について
少し考えてみたいと思います。

僕は今の政策は日銀に頼りすぎだと思います。

確かにデフレは貨幣的な現象で、日銀が市場で流通する
マネーの量を増やせば、デフレが解消に向かう部分も
あるでしょう。

ただQQEのみでデフレを解消するのは無理があり、QQEと並行し
実体経済を刺激して需要を増やすことが、今の日本にとって
バランスの取れた処方箋ではないかと思います。

そのことは安倍さん自身がよくお分かりのはずで、
首相に就任した当初打ち出した「三本の矢」のうち一本は、
規制改革による経済成長でした。

それがいつの間にやらウヤムヤになり、
「一億総活躍社会」などという、成否の測定が困難な
スローガンに変わってしまいました。

日銀によるQQEは、確かに安倍さんの政策を後押しする
重要な手段ではありますが、それのみで我が国経済の
再生は無理でしょう、QQEはあくまで時間を買う政策であり、
その間に政府は改革を進めるはずでした。

ところがどうでしょう。

あれからはや3年が経とうとしていますが、
TPP以外に目だった改革は行われていないように
みえますし、そのTTPにしても即効性は期待できません。

農業、医療、税制、年金、金融、新産業の育成・・・
政府がやるべきことは多いはずですが、いずれも
停滞感が漂っています。

考えてみれば議会制民主主義というヤツは面倒ですね。

アチコチに既得権で守られた抵抗勢力があり、それぞれ
票をまとめて代表者を議会に送り込んでいます。

自民党の議席が圧倒的な今ですら、既得権の壁を
壊すのは一筋縄ではゆかず、それが規制改革を
停滞させているといってよいでしょう。

これに対して日銀の金融政策のほうはラクなものです。

僅か9名の審議委員の多数決によって、しかもたった2日の
非公開の場で政策を決めることができますので。

しかもその審議委員は、事実上政府が決める(注)こと
ができますから、政府は間接的に日銀の金融政策に
影響力を行使しているといってもよいでしょう。

注)正確にいえば政府が候補者を国会に提示し、
  国会の同意を得て任命されますが・・・

確かに「日銀の独立性」の名のもと、日銀は政府から独立して
金融政策を決めてはいるのですが、このような現状を踏まえれば、
事実上日銀の政策は、政府によって誘導されていると
みておくべきでしょう。

繰り返しになりますが日銀の政策決定は、わずか9名の
審議委員のうち5名が賛成すれば決まりますし、重要事項の決定も、
たった2日間でおしまいです。

つまり政府が行うべき規制改革などに比べ、日銀の金融政策は
極めて機動性に富んでいるといってよいでしょう。

安倍さんが当初打ち出した三本の矢のうちの「大胆な
金融政策」が突出し、「規制改革による成長」が
遅々として進まない理由はここにあるといってよいでしょう。

逆にいえば日銀は、身の丈に合わない荷物を背負わされ
ているといってよいのかもしれません。

その結果金融政策に負荷がかかりすぎ、苦肉の策として
導入されたのが今回の「マイナス金利付きQQE」という
わけです。

おそらくこの政策は、日銀にとってかなり勇気のいる
賭けではなかったでしょうか、事実今回の決定では
票が割れ、可決はわずか一票差でした。

長短の金利が大きく下がり、すでに住宅ローン金利が
下がり始めたのは成果といえるでしょう。

今後住宅投資はじめ不動産投資が活発化し、実体経済へ
よい影響を与える可能性があります。

一方で想定外の弊害も出てきました。

一つ目は国民が銀行預金を嫌い、現金を手元に置き始めたことです。

これは個人が手元に現金を退蔵し、市場に供給されにくい
構図です。マネーが経済成長に寄与せず、この場合せっかくの
マイナス金利の意味が薄れかねません。

円高も想定外ではなかったでしょうか。

黒田さんの狙いは円金利の低下による円安だったはずですが、
逆にマイナス金利によって世界的なリスク・オフの流れが
生じてしまい、安全資産と見られる円が逆に買われてしまった格好です。

今後の銀行や生保の収益への悪影響も心配です。
銀行は個人から預かる預金の金利はマイナスにできません、
一方で貸出金利はマイナス金利の影響で低下方向でしょう。
生保も同じ悩みを持ちます。

銀行の利ザヤ縮小は、彼らの貸し出し姿勢を厳しくし、
逆に民間企業への融資が減る可能性もあるでしょう。

この場合もマイナス金利の効果を相殺する可能性があります。

ただし日銀はもう後戻りはできません。
なぜならここで政策を転換すれば、日銀への
信認が損なわれ大きな混乱を招くからです。

では今後日銀はどこに向かうのでしょう・・・

そしてその場合、日本経済はどうなって
しまうのでしょうか。

今回はお話が長くなってしまったので、
この辺にさせていただきます、続きは次回お話し
いたします。

 

では今回はこのへんで。

(2016年3月10日)




 




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