■無利子永久債の検討
みなさんこんにちは。
しつこいようですが、今回も前回に続き、
わが国の財政について考えてみたいと思います。
日本が抱える巨額の財政赤字をすべて返済するなど
土台むりなお話しだし、さらに言えば例えば対GDP比で
250%以下に抑えるといったように、一定の目標値の中に
財政赤字を収めるといった政策ですら、少なくとも通常の
進め方では実現不可能ではないか・・・
多くの日本人はすでにうすうす気づいているかも
しれませんが、僕も同じです。
ではいったいどうしたらいいのでしょうか。
財政ソフトランデイングのための処方箋は、
限られているように僕は思います。
まずは日銀による国債購入額を増やし、それを原資に
政府が継続的かつ節度ある財政出動を実施すること。
この場合景気は底上げされ、税収の増加を見込むことができます。
ただし大量の国債を政府が発行すれば、利払いが増え、
かえって財政に負荷がかります。
この弊害を避けるため、日銀が保有している国債を、
無利子化すると同時に償還期限のない永久債に転換するという
考えはあってよいでしょう。
つまり永久に返済する必要もないし、利子も払わなくて済む
国債に転換してしまうという荒業(あらわざ)です。
一方で継続的な公共投資によって国内経済は活性化しますので、
単年度の財政収支も改善するでしょう。
この「無利子永久債」の導入と、「日銀による国債引き受」の
組み合わせは、本日の日経新聞の『経済教室』で、アデア・ターナー(注)
さんも述べておいでですが、最近徐々に他のメディアなどでも
耳にするようになりました。
注)イギリスの元FSA(日本の金融庁に相当)の長官、
2016.6.7日本経済新聞による
ただしこの「無利子永久債」の発行には大きな危険が伴います。
日銀による国債引き受け(もしくは市場を経由した国債購入にせよ)に
歯止めが利かなくなる可能性があり、この場合市場に供給あるいは
滞留する円紙幣の量が急速に増えてゆくことになるでしょう。
その結果いつか許容の臨界点に達し、円通貨に対する信認が
一気に失われる・・・
つまり円貨幣の価値の喪失=ハイパーインフレ=超円安の
可能性があるといってよいでしょう。
ただしよく考えてみれば、これはわが国財政にとって決して
悪いシナリオではありません。
高インフレ状態になった結果、政府の累積赤字の実質的な
価値は一気に目減りし、財政の正常化に役立つからです。
一方でその反対側にある現預金や国債の保有者・・さらに
これら資産を保有する年金や保険もまた、大きな損失を
避けられません。
これを大局的にみれば富の家計から政府への移転で、
政府が移転されたお金で過去の借金を返済する構図です。
ただし万一「無利子永久債」が導入されたとしても、
必ずしも上記のようなインフレ・ショックが訪れるとは言い切れません。
政府が強い意思によって節度ある財政を維持し、あるい成長戦略を
着実に推し進め、その結果円通貨への信認が保たれれば、
「無利子永久債」は究極の解決策になるのかもしれません。
我が国財政がここまで悪化したいま、すくなくとも選択肢の一つ
として、無利子永久債は真剣に研究されてもよいのではないでしょうか。
では今回はこのへんで。
(2016年6月7日)
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