■中国経済に注意
みなさんこんにちは。
ここのところイギリスのEU離脱問題で相場は揺れていますが、
例えば今年下半期の世界を見渡した場合、僕はむしろ
中国経済のほうが心配です。
直近四半期の数字を見るとGDP成長率は6.7%とまずまずで、
確かに当局が設定した、今年の成長目標の範囲内に収まっています。
同国のGDP統計を真に受けるお人よしはいませんが、
正確な数字がいったいいくらなのかという段になると、
6%程度ではないかという人もいれば、せいぜい5%前後だと
考える人もいて、なかなか実態がつかめません。
僕自身は昨年まで5%程度とみていたのですが、
最近の数字をみるにつけ、少し悲観的になってきました。
まず気になるのは貿易統計です。
例えばGDP成長率との相関性が高い輸入総額をみても、
同国の1月から4月までの実績累計は、対前年同期比で7.5%減に
落ち込んでいます。
さらにさかのぼって2015年の年間実績を振り返れば、輸入総額は
対前年比でマイナス13.2%でした。
つまり中国の輸入は明確な縮小傾向を示しているわけです。
仮に中国GDP統計の方を信じるなら、輸入が縮小するなかで
GDPが6.7%もの高速で成長するという、なんとも不思議な現象が
起きていることになります。
ここのところ「世界経済が成長しながら貿易量が停滞する」
という世界レベルの珍現象が起きていますが、その一因は
「中国によるGDP水増し」にあるのではないでしょうか。
中国企業の業績もまたこの疑いを裏付けています。
同国の上場企業の業績を見ると、2015年12月期の純利益は対前年比で
マイナス1.1%でした、減益はリーマン・ショックがあった2008年
以来7年ぶりです。
金融を除けばさらに拡大し、マイナス約16%と大幅な減益です。
注目すべきはむしろ売上かもしれません、同期の売上をみても2%以上の減収で、
これは明らかに中国経済の急激な減速を示唆しています。
上記企業業績は各社が開示する数字の積み上げで、これは貿易実績と
並び恣意が入りにくい統計だといえるでしょう。
GDP成長率の実態5%程度を6.7%と水増しするぐらいなら、
市場はすでに織り込み済みといえるでしょうが、もし中国経済の実態が、
例えば3%〜4%程度の低成長、最悪の場合マイナス成長に陥っていたと
すればどうでしょう。
この場合、多少面倒なことになります。
例えばシャドーバンキング問題が顕在化する
可能性はないでしょうか・・・
かつて地方政府が主導して放漫な不動産開発やインフラ投資を行った結果、
地方政府はすでに16兆元(約250兆円)にものぼる、
巨額な負債を抱えています。
高成長時代には時間の経過とともに経済のパイが拡大し、
債務の比率を薄めることができましたが、低成長時代にはそうはゆきません。
このシャドーバンキング問題は、いよいよ発火点が近づいている
のではないか思います。
なぜなら借金はいくら巧妙に”つけ回し”をしても、
その総額を減らすことができないからです。
最終的には人民銀行が紙幣を大量に印刷し、
それを原資に金融機関に資本を注入することになるでしょう。
これは我が国や米国のバブル崩壊時と同様です。
これを大規模で行った場合、人民元に対する信認は低下し、
昨年夏に起きた中国ショックが再現される可能性があるでしょう。
ここまでお話ししてきたように、今のところ市場はこの
問題をさほど意識しているようには見えません。
市場が不意打ちを食らった時のショックは、
それなりに深刻なものになると覚悟しておく必要が
あるのではないでしょうか。
では今回はこのへんで。
(2016年6月22日)
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