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日銀が決めた金融政策の本質

みなさんこんにちは。

一昨日日銀の「総括」と「新しい枠組み」が発表されました。

すでに新聞やテレビなどで、さまざまな批評や
解釈が行われているようですが、今回は僕なりの解釈と、
今後の日本経済の見通しなどについてお話ししたいと思います。

今回の総括や金融政策の変更をみますと、
日銀や黒田さんは、かなり追い詰められていた
ことがよくわかります。

「枠組みの変更」で、日銀はインフレ率2%達成の
時期を『できるだけ早期に実現する』とし、その達成時期
を明示しませんでした。

思い返せば3年半前、就任時の黒田さんは2%インフレを2年で
達成すると発表しましたので、大きな路線修正と
言ってよいでしょう。

僕はココが今回の枠組みの最大のポイントだった
と思います。

本日(9月23日)の日経の記事を読みますと、

『日銀緩和 量から金利へ』

などと書かれていますが、本質はそこにはなく、
上記のような『時間軸政策の放棄』ではなかったでしょうか。

仮に2%インフレ達成時期についての縛りがなくなった場合
どうでしょう。

今まで市場に対して負荷をかけてきた政策、
例えばマイナス金利にしても、
国債の80兆円購入にしても、
日銀は時間軸を気にせず、いわばマイペースで実行できるわけです。

特に限界が近いといわれてきた流動性供給策(国債の購入
+紙幣の供給策=QQE)については、そのペースを鈍化させることが
できるはずです。

その意味において、この「新しい枠組み」はよく練られていると
思いますし、今まで追い立てられてきた『時間』を、
逆に味方につける巧妙なアイデアではなかったでしょうか。

ただし問題は心理に与える影響で、時間軸を不明瞭に
したことによって、国民のインフレ期待が剥がれ落ちる
ことを懸念したのでしょう、日銀は「オーバーシュート型
コミットメント」をあわせて発表しました。

コレはちょっと解釈が難しい言葉ですが、要するに「2%インフレを
達成しても紙幣の印刷をすぐにはやめず、インフレが安定して
2%を超えるようになるまでQEをやり続けるよ」という程度の
意味でしょう。

つまり時間軸政策の放棄を、この「オーバーシュート型
コミットメント」で補い、国民のインフレ期待をつなぎとめたかった
のでしょう。

新聞やテレビなどみても、いままでのところ
どちらかといえば好意的な解釈が目立ちます。

その意味で日銀の今回の政策転換は、
たいへん巧妙だったよいってよいでしょう。

何しろ金融政策は人間の心理に依存する部分が大きく、
丸裸にされてしまうと、その効果が失われてしまいます。

さて問題は今後です。

果たして新しい政策の枠組みは、本当に2%インフレに
誘導することができるのでしょうか。

焦点はやはり心理で、国民の心の中でインフレ期待が高まるか
否かではないでしょうか。

その観点で見ればどうでしょう。

焦点である紙幣の供給策(QQE)について考えた場合、
現在のペース(年80兆円の国債購入など)で資金供給を
延々と続けることは不可能なはずで、いずれ国民はその事実を知る
ことになるでしょう。

量を減らせば効果は薄く、
量を増やせば限界が早まります。

つまりいくらオーバーシュート型コミットメントを
協調したところで、そんなものは単なる意気込みにすぎず、
遅かれ早かれインフレ期待が剥落するのは明白でしょう、
つまり玉はそれほど残っていないはずです、

玉切れが明らかになった時点で期待に働きかける政策は終わり、
日銀は政策のリセットを迫られることなるでしょう。

ではなぜこのような状態になってしまったのでしょうか。

僕は金融政策、つまり日銀に依存し過ぎたことが
過ちの原点だったと思います。

『経済は純粋に金融的な現象で、マネーの供給を
増やせばインフレ目標は達成され、経済は成長する』という
考え方は今でもありますが、僕は違うと思います。

経済の成長にとって、適切な金融政策が必要なのは
言うまでもありませんが、同時に成長戦略も必要で、
それは日銀ではなく政府のお仕事です。

政府が行うべき成長戦略を後回しにし、これからも日銀頼みが
続くなら、我が国経済は危うい場面がでてくるのでは
ないかと心配です。

そのあたりの議論が、もっと深まることを
期待したいものです。

 

では今回はこのへんで。

(2016年9月23日)




 




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