■ドイツ銀行の信用不安と社債への投資
みなさんこんにちは。
今回は社債が持つリスクについて、
少し考えてみたいと思います。
僕は相談者の方に、アメリカの国債を推奨することがあります、
また場合によっては通貨分散の観点などから、
オーストラリア国債(以下「豪州国債」)を提案することもあります。
お客様はその提案を受けて証券会社の店頭に出向き、
担当営業の方に購入の意思をお伝えになるわけですが、
このようなケースでは大概の場合、他の金融商品を
勧められることになります。
その代表的な商品は、先進国の国債に分散投資する投資信託で、
お客さんは何種類ものパンフレットを持たされて帰ることになる
わけです。
営業マンが自社の利益のため、より手数料の高い商品を売りたい
気持ちは理解できますが、その手数料の原資は投資家の財布に
入っているお金です。
確かに債券型投信も、分散や銘柄選択の手間という点で
まったくナンセンスな商品とは言えませんが、買い手は
負担するコストを知ったうえで、購入の可否を判断を
すべきではないでしょうか。
あるいは金融機関が発行する、社債の購入を
勧められるケースもあります。
フランスのクレディアグリコールやオランダのラボバンク
などが発行する豪ドル建て社債など、あいかわらず
銀行が発行する社債のパンフはよく目にします。
社債は投信と違って表面的な手数料は見えません(注)が、
発行体の分散ができていないので、破たんのリスクを
意識しておかなければなりません。
注)「見えない」と「ない」は違います、間接的なコストの
負担がありますので。
例えば上記のラボバンクが発行する、豪ドル建て社債の
発行条件を見ますと、以下のようになっています。
・発行日 2016年10月25日
・通貨 オースオラリアドル
・満期 2021年4月13日
・予定年利率 1.85%〜2.85%(注)
注)確定値は2016年10月17日までに発表予定
つまり4年半後に償還されるこの社債の収益率は、
1.85%〜2.85%程度になるということです。
ではラボバンクの社債ではなく、オーストラリア政府が
発行する国債に投資した場合、皆さんはどの程度の収益を
得ることができるのでしょうか。
償還期限が一致する銘柄がみあたらないので、ある程度の推測に
なってしまいますが、現状で残存期間4.5年の豪州国債の利回りは、
概ね1.6%程度といってよいでしょう。
簡単にいえば、豪州国債の利回りは1.6%程度であるのに対し、
ラボバンクの豪ドル建て社債は、年あたり1.85%-2.85%程度もの、
高い利子がもらえるわけです。
注)厳密には利回りと利率は違いますが、話しを簡単にするために
このような表現をさせていただきました。
では証券会社が勧めるように、国債に比べ社債の方が有利なの
でしょうか・・・・
世の中にあるすべての金融商品には、リスクに見合ったリターンが
あります、特に似通った金融商品のあいだではこの傾向が顕著で、
もちろんこの原則は上記の社債と国債の間にも見られます。
国債の保有者が国の破たんリスクを背負うのと同様、
社債の保有者は、社債を発行する会社が破たんするリスクを
負わなければなりません。
その見返りに国債に比べ1%ほど高いリターンを、
この社債の購入者は得るだけで、そこにはソンもトクもありません、
そこにあるのは購入者の好みと投資判断だけです。
例えば今ヨーロッパでは、ドイツ最大の銀行であるドイツ銀行の
経営に対して不安感が台頭しています。最大の理由は同行が
過去アメリカで行った不正取引で、同行はアメリカ政府から、
巨額(約1兆4500億円)の和解金の支払いを求められています。
ヨーロッパにおけるドイツ銀行の存在感は極めて高く、
ヨーロッパ経済に微妙なさざ波が立ちつつあるといってよいでしょう。
このような現状は、欧州の銀行が発行する社債の保有者にとって、
決して無縁ではありません。
上記のリスクも踏まえ、それでもなお1%の上乗せ金利を
取りに行くべきか否か・・・このような視点を投資家サイドは
持つべきではないでしょうか。
では今回はこのへんで。
(2016年10月14日)
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