守りのための資産運用

みなさんこんにちは。

長いことファイナンシャルプランナーという仕事をしていますと、
おカネに関する人の感じ方に、いくつかの共通点が
あることが分かります。

代表的なものは必要以上に資産を増やしたいという欲求で、
多くの方にこの特徴がみられます。

数億円の金融資産をお持ちのかたでも、
資産の半分以上を株式や新興国の債券で運用されているケースは
決して珍しくはありません。

人生100年時代が近づいており、長生きのリスクや
介護や認知症の不安が高まっているのは事実だと思います。

でもだからといって60歳代でお手持ちの資産の半分も
株で運用されるのは、ちょっとリスクが高すぎ
ないでしょうか。

幸いここ数年、特に安倍さんが首相になってから
日本株は好調ですが、いつまでもこのような晴天が続くとは
思えません。

私たちにとってリーマン・ショックはすでに遠い記憶
になりつつありますが、世界の経済や政治を見渡せばどうでしょう。

果たしてあの頃より安全だといえるでしょうか・・・

あいかわらず危機の火種や混沌は世界中アチコチにあり、
100年に一度の危機がいつ再来してもおかしくはありせん。

リスクとリターンはコインの裏表です。

おカネはいくらあっても困ることはありませんが、
このような状態で必要以上の高収益を狙えばどういうことに
なるでしょう。

例えばリーマン・ショック当時、
日本株はどう動いたでしょうか・・・

2007年に一時18,000円を超えていた日経平均ですが、
リーマンショック直後には一時7000円台までさげました、
つまりは4掛けで、当時日本株を持っていた方は、
わずか一年ほどでその半分以上を失ってしまいました。

仮に当時60歳代で1億円の資産をお持ちの方がいて、
その半分を株式で運用していたとすればどうでしょう。

この方の資産は7000万円に減ったことになりますから、
60歳という年齢を考えると、かなり大きなショック
だったはずです。

もう記憶のかなたに遠のきつつありますが、
一寸先は闇・・・

常にこのようなことが起きるという前提で、私たちは
資産を配分しておく必要があるでしょう。

では私たちは具体的にどのような考えで、
これから資産を維持管理してゆけばよいのでしょうか。

まずはご自分の生活設計をしっかり立てること。

そしてそれに見合った年間の収支を計算してみるという考え方が、
重要だと思います。

例えばリタイアメント後のご夫婦に必要な生活費は、
ややゆとりのある世帯で年間400万円ほどになります。

これに対し一般的な世帯の年金受給額を250万円とすれば、
収支の差額は150万円となります、もしこの金額を資産の運用で
カバーできれば、皆さんの金融資産は一定額を維持できるわけです。

実はこの『金融資産の維持』という考え方は案外と重要で、
多くの方はこの『資産が減らない状態』によって、金銭面
だけでなく心の安定もえることができるようです。

ではこの差額の年間150万円を、いったいどのようにして
得ることができるのでしょうか。

仮に皆さんが、3000万円の資産をお持ちの場合
どうでしょう。

このケースで求められる収益率は年あたりで5%となり、
正直申し上げてこれは結構厳しいと思います。

注)150万円÷3000万円=5%

日本国債(10年債)の利回りは現在0.1%弱ですから、
必然的に株式や外国債など、高いリスクを持った資産を中心に
運用しなくてはなりません。

でももし皆さんが1億円の資産をお持ちならどうでしょう、
この場合、求められる収益率は年率1.5%にすぎません。

注)150万円÷1億円=1.5%

先ほどのケースと違い、このケースでは
さまざまな運用プランを描くことができます。

例えば長期的な先進国株の収益率は6%ですので、
資産1億円のうち1000万円を先進国株に投じれば、
それだけで年60万円ほどの収益を得ることができます。

ただし株式から得られる収益はキャピタルゲインであり、
株を売らない限り、(配当を除き)一円もお金を手にすることは
できません。

即キャッシュフローを得たいなら、例えば不動産が対象に
なるでしょう。

国内の不動産の収益率(手取りベース)は4%ほどありますので、
仮に4000万円を国内不動産に投じれば、それだけで年あたり
160万円の賃料を得ることができます。

4000万円×4%=160万円

つまり不動産と株の保有だけで、この方は
『資産が減らない状態』を作れるわけです。

従ってそれ以上のリスクをとる必要はありません、
残りのお金5000万円は例えば現預金でお持ちになってもいいでしょうし、
日本国債でお持ちになってもいいでしょう。

日本の財政破綻まで懸念されるなら、コインや貴金属など
現物資産を一定額組み入れるのも悪くはありません。

現物資産は株や債券・現預金などと全く異質なリスク特性を
もっており、一般的に金融ショックに対して強い耐性を持ちます。

一定以上の資産規模をお持ちの方は、闇雲におカネを増やす
ことばかりを考えず、このようにライフプランからアプローチする、
適正な資産配分を目指すべきではないでしょうか。

 

では今回はこのへんで。

(2017年2月23日)




 




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