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外貨建て保険について思うこと

みなさんこんにちは。

私は長い間ファイナンシャル・プランナーと投資助言業を
合わせたような仕事をしてきましたので、保険を投資商品と
してみる習慣がついてしまい、特に貯蓄型の保険に関しては、
どちらかといえば否定的な見方をしてきました。

最大の理由は保険会社のピンハネや保険の運営経費が大きく、
収益率という点で問題があると考えていたからです。

例えば「米ドル建て一時払い終身保険」です。

この商品の最終的な投資先はアメリカ国債ですが、
米国の金利は(日本と比べ)高いため、一定の収益が
期待できます。

そのようなこともあって、円建ての同種商品に
比べ今でも人気があります。

ただしコスト構造には注意しなくてはなりません。

この保険の最終的な投資先は、アメリカの20年債や30年債といった
超長期債ですが、私たちは生命保険というプラットフォームを
通さなくても、直接これら債券に投資することができます。

個別の債券を買うのが面倒なら、ニューヨーク市場に上場する
超長期債ETFという選択肢もあります。

現在のアメリカ30年国債の利回りは、おおむね3%近辺に
ありますが、一般的に外貨建て生保から得られる収益率は、
おそらく2%を切っているはずです。

大雑把にいってこの差すなわち年1%は、その大半が
生保会社にピンハネされているといってよいでしょう。

私は今でも基本的に、保険のコスト構造に対する否定的な
見方を変えていないのですが、この年になって外貨建て保険という
選択肢が、人によってあってよいのではないかという気もして
きました。

例えば人は歳を重ねると、良し悪しは別にして、
運用資産をこまめにメンテできなくなってきます。

外国の債券を直接保有していれば、その債券が満期になった場合、
その全額が外貨で償還され、自動的に保有者の外貨口座に入金
されてしまいます。

この場合でもご本人がしっかりしていれば全く問題ないのですが、
ご高齢の方が償還を受けられた場合どうでしょう。

多くの方は償還を受けたという認識すらなく、
そのまま外貨口座に米ドルが入金された状態で、
放置されるのケースが多いのではないでしょうか。

このような事例を目にしますと、私などは「いったい誰のための
運用なのか」という根本的な疑問を持たざるをえません。

さらに面倒なのは、その方が認知症になり判断力を
喪失されるケース・・・場合によってはその状態のまま
お亡くなりになるケースです。

ご遺族はその方の資産内容を把握できず、
最悪の場合口座ごと忘れ去られてしまうこともありえます。

仮にご遺族がそのお金を発掘できたとしても、遺産分割協議が
すまないとご遺族はお金を動かせません。

不幸にも争続が展開した場合、長期にわたりお金を動かせない
というケースも出てきますし、その結果、相続税の支払いに
差し障りが出てくるケースもあるでしょう。

一方でこの方がアメリカ国債ではなく、外貨建て終身保険に
加入していたとすればどうでしょう。

確かに収益率という点でみれば、保険会社のピンハネや
保険の経費分だけ下がりますが、使い勝手という視点で
みればどうでしょう。

この手の商品にはさまざまな工夫がされていて、
例えば毎年一定額が円口座に入金されるといったサービスも
ありますし、毎年死亡保険金が上がってゆくよう設計された
商品もあります。

もちろん生活費に困ることがあれば、保険を解約して
返戻金を受けることもできます。

つまり保有期間中に、保有者の判断を要求される場面が少なく、
特に高齢者にとって優しい設計になっているといって
よいでしょう。

相続時の手続きも簡単で、保険の証券さえあればご遺族は
保険金の支払いを受けることができます。

保険金は相続資産から切り離されていますので、
入金した保険金は(基本的には)受取人が自由に使えます。

また生命保険には独自に相続税の控除枠があり、例えば
相続人が3名いれば、受け取った保険金のうち1500万円(注)
までは相続資産に算入されません。

500万円×3名=1500万円

私自身も50歳台の半ばにさしかかり、加齢に伴う
判断力の低下や認知症のことなど、自身の両親のケースで
体験しました。

金融商品の世界では、単に収益面における合理性の追求だけでなく、
総合的な判断が必要になるケースがあることを学びました。

 

では今回はこのへんで。

(2017年4月20日)




 




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