豊かになる前に老いる国

みなさんこんにちは。

数年前「近い将来中国で高齢化が始まる」と聞いたとき、
私はこのように考えました。

「高齢化が始まる前に一人っ子政策などやめてしまえば、
高齢化など起きないはず、ちょうどいいところで
人口は調整できるんじゃないだろうか」

その後、中国は一人っ子政策を事実上放棄しましたが、
今のところ高齢化に歯止めがかかる様子はありません。

いちど一人っ子家庭を経験してしまった中国人民に、
「子供は一人で十分」との考えが定着してしまったのかも
しれません。

あるいは二人三人と子供ができれば、満足な教育を受けさせる
ことができないと考えているのかもしれません。

いずれにしても一度定着してしまった生活スタイルを、
元に戻すのは容易なことではなさそうです。

どうやら中国政府も、私と同じ勘違いをしてしまった
ようです。

なんでも2050年時点では、60歳以上の人口が4.8億人まで増える
とのことで、中国ではむしろ高齢化が加速しているようにすら
見えます。

一方で経済の規模は生産者人口×生産性で決まると
考えられます。

人口が急速に増えることによって、同国の経済の規模は急拡大
してきましたが、いったいこの先はどうなるのでしょう。

おそらくかなりの確率で中国の経済成長は鈍化し、
遅かれ早かれ我が国と同じく停滞期に入ると考えてよいでしょう。

我が国を振り返えれば、経済成長が鈍化するにしたがって、
それまで隠されてきたさまざまな問題が、
顕在化してくることがわかります。

たとえば高齢化によって社会保障費が増加し、財政の悪化を
招くはずです、今まで大盤振る舞いで行ってきた国内のインフラ整備は、
近い将来縮小せざるをえないでしょう。

海外においても同様で、たとえば経済力をよりどころにして、
アジアやアフリカに対して影響力を強めてきた姿勢を、
早晩転換せざるをえなくなるはずです。

そういえば先日アメリカの格付け会社ムーディズは、
中国の長期債格付けを一つ下げA1(シングルA相当で、
日本と並ぶ)に下げました。

年金制度からこぼれおちた社会的な弱者の動向も心配です。

彼らは過去に何度も中国史の中で起こしてきた蜂起行動を、
また起こすかもしれません。

理財商品と呼ばれるハイリスク、ハイリターンな金融商品の
ゆくえにも注意が必要です。

現状では投機性の高いマネーの受け皿になっていますが、
銀行が扱う一見まともな案件だけで、すでにその残高は27兆元
(430兆円)を超えるといわれ、この金額は我が国の投資信託の
残高の4倍に達しています。

「潮が引いたとき、だれが裸で泳いでいたか初めてわかる」

これはウォーレン・バフェットさんの言葉だそうですが、
ホントうまく言ったものです。

中国の経済成長という波が逆流しはじめた時、いままで波の下にあった
有象無象の問題が、一気に顕在化することになるでしょう。

このように中国経済の成長鈍化は、同国ばかりではなく
世界経済全体に大きな悪影響を及ぼすと思いますが、
できればゆっくりと進行してほしいものです。

 

では今回はこのへんで。

(2017年6月2日)




 




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