日銀は2%のインフレ目標を維持してよいのか

みなさんこんにちは。

アメリカの景気拡大はすでに10年目に入り、
どうやらわが国も「いざなぎ景気超え」です。

ヨーロッパの景気も回復中ですし、
中国、インド、アセアンなど新興国経済も決して
悪くはありません。

にもかかわらず世界の物価はあいかわらず低迷したまま
です。

経済が拡大しますと、通常はモノの価格は上がるものですが、
どうやら今回は様子が違います。

経済学の教科書や過去の経験則は、すでに役に
たたなくなってしまったのかもしれません。

ではなぜこんな不思議なことが起きているのでしょう。

残念ながらこの分野で日本は先頭ランナーですから、
物価が上がらない理由について、過去いろんな説明が
されてきたものです。

例えばこうです。

財政悪化への懸念
  ↓
増税の可能性
  ↓
国民の将来への備え
  ↓
消費の停滞
  ↓
物価の低迷

つまり日本経済は決して悪くはないが、上記のように
国民が財政悪化の先を読んだ結果、物価が上がらない
という解釈です。

ただしこの説はちょっと怪しくなってきたようです。

もし上記の通りなら、なぜ物価の停滞が世界的な
現象になるのでしょうか。

このことから財政悪化が物価低迷の犯人であるという説に
説得力はありません。もちろん日本においても・・・

では本当の理由はいったい何なのでしょう。

僕は二つあると思います。

まずロボットの大量導入によるコストの削減です。

すでに先進国ではロボットの大量導入によって、
ずいぶんと省力化が進みましたが、ここ数年は
中国でもロボットの爆買いがみられます。

いずれアジアやほかの新興国でも同様の動きが
出てくるに違いありません。

その結果すでに製造業は人件費の削減のため、
拠点をアチコチ移すといった面倒な作業から、
解放されつつあるといえるでしょう。

もちろんこれはコストの低下を伴います。

コストが下がったぶん、企業は製品の販売価格を引き下げ、
その結果として物価が上がりにくくなっているのでは
ないでしょうか。

もう一つの物価抑制の要因はIT化だと思います。

IT化の進展により消費者は、世界中で最も有利な
ルートで商品を買うことができるようになりつつあります。

最近僕は海外から並行輸入された腕時計を、
ネットで買いました。

近所のショッピングセンターの正札の7掛けで買えたのですが、
先週そのショップに行ったところ、僕の買値とほぼ同額まで
値引き販売していました。

IT化や物流の高度化が進んだ結果、消費者はさまざまな
方法で安値ルートを探せるようになり、その結果モノの
価格全体が安値に収れんするという現象がみられるように
なりました。

これも物価の低下要因として大きいのでは
ないかと思います。

物価の上昇が緩慢にしか進まない一方で、
世界的にみて経済はまずまず拡大するという傾向・・・

おそらくこれは構造的な変化であり、ロボット化や
IT化のますますの進展により、世界的にみてモノの値段は
今後もあがりにくい状態が続くのではないかと思います。

仮にこの見方が正しければ、すでに日銀の2%インフレ目標は
存在意義を失いつつあるのではないでしょうか。

そればかりではなくこの路線の軌道修正を柔軟に行わなかった場合、
将来のわが国経済にとって新たな問題の種、つまりバブルの
火元になる可能性があると思います。

日銀の政策の目的の一つは「物価の安定」ですが、
日銀がみずからの政策により、物価が不安定になるという
皮肉な結果を招かないとも限りません。

 

では今回はこのへんで。

(2017年9月26日)




 




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