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富はどこに行くのか

みなさんこんにちは。

儲けたお金で設備を購入し賃金も上げる。

僕がまだ若かったころ、これが企業の社会貢献だと
よく言われたものです。

当時はアマゾンもフェイスブックもありません。

僕が働いていた家電メーカーや、その後働くことになった
AVメーカーなどの全盛期で、浅はかな僕は永遠に日本の製造業が、
繁栄を続けるとものだと思っていました。

それがどうでしょう。

今から振り返れば、ちょうどあの頃がわが国製造業のピークで、
その後はアメリカのIT産業やら、ネット産業に主役の座を奪われて
しまいました。

形あるものを作ることをせず、
ネットの空間だけで商売を完結させる会社。

自らはモノを作らず、消費者と製造元を仲介する仕組みだけ
を洗練させ、極限まで効率化を追求する会社。

プラットフォームの構想に集中し、メーカーでありながら
その製造工程の一切を外部に委託する会社。

彼らには従来型の製造業のように、大規模な製造設備は
いりませんし、従業員もさほど多くは要しません。

例えばフェイスブックという会社がありますが、
同社の従業員はたったの2万人だそうです。

対する日本の伝統的なメーカー、パナソニックの従業員数(連結ベース)
が約27万人ですから、その少なさがよくわかります。

おそらく設備投資の金額を比較しても、
両社の間には雲泥の差があるでしょう。

ご参考までに株式の時価総額を比べると、
フェイスブック約59兆円に対し、パナはわずかに約4兆円にすぎません。

設備投資も軽く、従業員もさほど必要ない・・・
その結果として生じる高い収益性に引き寄せられ、
世界中から巨額のマネーを集める構図ができている
といってよいでしょう。

今後を見渡しても、どうやらIT産業はますます栄える
可能性が高そうで、一部のIT企業に富が集中する傾向は、
今後さらに強まるのではないでしょうか。

これはいわゆるWinner Takes All(勝者の総どり) というやつで、
きっと高度に進んだネット化とグローバル化の産物なのでしょう。

その結果、社会全体でみても大規模な設備投資のニーズは減り、
従業員への分配率はますます減ってゆく・・・

しかも従来型の製造業ですら、ロボット化と自動化が進み、
ラインで働く従業員をさほど必要としません。

一方で一部の会社の価値はさらに高まり、
会社という器を経由し、富はその所有者へ
集中することになるでしょう。

これは僕の空想の世界ではなく、
実際にそれを示すデータがあります。

例えば労働分配率の低下です、
日本とアメリカの労働分配率の推移をみますと、

・アメリカ(約70%→約63%)
・日本(約73%→約60%)

というように、従業員の取り分は徐々に減ってきています。

注) (  )内の左側数字は1980年、右側数字は2011年の値

これに対し会社の時価総額は逆方向で、すでに
世界株の時価総額の合計は1京円を超え、過去最高レベルを
更新中(注)だそうです。

注)日本経済新聞11月1日記事より、ちなみにこのメルマガで
  「1京円」という数字を使ったのは、今回が初めてです。

このようなデータをみても、実際に富は従業員から
会社(すなわち会社の所有者)へ移りつつあることがわかります。

といっても従業員が貧乏になっているわけではありません、
社会全体の進歩によって、絶対的な豊かさが時の経過とともに
高まっているからです。

問題は従業員が本来えるべき富をえ損ねる一方で、
そのえ損ねた富が、会社に蓄積しているという点では
ないかと思います。

労働分配率が低下しつつも、実感としての豊かさが、
曲がりなりにも維持できている現状は、このような構図を
示唆しているのではないでしょうか。

だとすればいったいこの先どうなるのでしょう。

おそらくこの傾向は今後も続く可能性が高く、
従業員は現状程度の豊かさを維持できる可能性が
高いのではないでしょうか、一方で富が一部企業の所有者に
集中する傾向も、また強まるのではないかと思います。

私たち庶民からみれば残念なことではありますが、
そめてそのような会社をいちはやく発見し、会社の(ごく)一部を
保有することによって、なんとか「富の集積側」に入って
おきたいものです。

 

では今回はこのへんで。

(2017年11月15日)




 




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