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質的分散と地理的分散

みなさんこんにちは。

リーマン・ショックから私たちはいろんなことを学びました。

平穏にみえる日常の中で危機の芽が育っていること。

危機は思いもよらぬ場所で突然顕在化すること。

いったん危機が顕在化すれば皆我先に市場から逃げ出し、
さまざまなものの価格が、本来あるべき相場から大きく
逸脱して下げること。

そして時間の経過とともに、
あるべき相場帯に戻ること・・・

特に富裕層に属する方ほど、
このような金融ショックに対し、
敏感になられているのではないでしょうか。

金融ショックを含む大幅な相場変動に対し、
唯一有効な手段は資産の分散ですが、
たとえば株に対して債券を持つこと、
あるいは一定額をREITや商品相場で運用すること・・・

このようなペーパーアセットの中での分散は、
果たしてどの程度の効果があるのでしょう。

もちろん分散には効果はありますが、たとえば
常に株と債券が反対方向に値動きするわけではありません、
実際に先月起きた株価急落の局面では、アメリカ国債が売られる
(金利は上昇)なかで株価も同時に下げました。

さらに昨今の低金利環境では、よほど大量の債券を
持たなければ、利息によって株価下落の衝撃を吸収する
ことはできません。

REITに至っては、登場当初のミドルリスク・ミドルリターン
というふれ込みからかけ離れてしまい、
いまや株以上にハイリスクです。

一部のヘッジファンドは期待通りの分散効果を発揮していますが、
それでも金融ショックが起きたとき、どのような値動きをするのか
予測不能なとことろがあります。

ご本人は頑張って分散しているつもりでも、
このようなペーパーアセットの世界での分散は、
その効果に限界があるといえるでしょう。

なかでも怖いのは予測不能な突発性のショックで、
無防備なまま飲み込まれてしまえばその被害は甚大です。

そのような大規模なショックに備えるためには、
同じペーパーアセットの世界で行う分散はには限界があり、
よほど距離の離れた資産への分散が求められることに
なるでしょう。

つまり現物資産の組み込み、
言い換えれば資産の質的分散が重要では
ないでしょうか。

それでも大きなショック時には、
ペーパーアセットの世界で起きた混乱が、
現物資産の世界に越境して入り込んでくる可能性は
否定はできません。

でも過去の事例を振り返りますとどうでしょう。

リーマン・ショック時に、例えば金(Gold)は
発災直後の2008年9月から11月にかけ20%ほど下げましたが、
はやくもそこで反転し、同年末にはショック前の水準に
戻しました。

他の現物資産も同様で、アンティーク・コインや
カラーストーンなど、逆にその間も値上がりし続けた資産も
あります。

このように現物資産が突発性の金融ショックに強いのは、
ペーパーアセットと現物資産では、流入するマネーの質が
違うからだと僕は思います。

現物資産のもう一つユニークな点は、
質的に分散しながらも同時に地理的にも資産を
分散できるという点です。

コインを例にとってご説明しましょう。

例えばアメリカのコインはたしかにアメリカの資産ですし、
イギリスコインはイギリスの資産です。

一般に人は自国のコインを収集する傾向が強く、
その意味ではイギリスコインはイギリス経済固有の影響を
受けやすいですし、アジアのコインはアジア経済と連動している
といってよいでしょう。

でも私たちはコインを買う場合、イギリスコインであれ、
ベトナムのコインであれ、それぞれの鋳造された国を意識することなく、
例えばオークションで、あるいはコイン商の店頭で自由に選ぶこと
ができるわけです、つまりごく自然な形で国際分散投資を
実践しているといってよいでしょう。

カラーストーンにしても同様で、例えばマダガスカル産の
サファイアにしろ、ミャンマー産のルビーにししろ、
コロンビア産のエメラルドにしろ、私たちは国境を意識することなく
買えます。

金融ショック時には質的分散が重要ですが、
平時にはその国の成長性を取り込むという意味で国際分散投資、
言い換えれば地理的分散は重要な意味を持ちます。

質的分散と地理的分散を同時に実現するという意味でも、
現物資産は有効ではないかと僕は思います。

 

では今回はこのへんで。

(2018年3月13日)




 




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